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川べりに食べ物がなっていますっ


 フェリシアがファルコたちとぶらぶら歩いていると、川が見えてきた。

 水があるせいか、この辺りは草も木々も少しある。


 川、あるんだ?


 まあ、岩場なだけで、砂漠なわけじゃないもんね、

とフェリシアが思ったとき、


「フェリシア様、川べりに腸詰めがたくさん刺さってますが、誰がこんなところに刺したんでしょう?」

とファルコが訊いてきた。


 なるほど、川の側の草に、大量のソーセージのようなものが刺さって並んでいた。


 風に吹かれ、一斉にソーセージがそよぐさまは壮観だ。


「ああ、ガマじゃない。

 魔王様の森にはなかったかしら?


 これ、こういう植物なのよ」


 確かに、腸詰めに見えるな。


 焼いたら美味しそうだ、とフェリシアは思う。


「植物なんですか」

と言いながら、ファルコがガマに触れた。


「わっ」


 力の強いファルコが触れたので、腸詰が、いや、ガマの穂が爆発した。


 穂が破れ、中から白い綿毛がぶわーっと出てきたのだ。


 下にいたスライムの男の子が綿毛が鼻に来たのか、くしゃみをしている。


「ああ、そうだ。

 これ詰めたらいいんじゃない?」


「は?」


「これを布か毛布に詰めて、縫い合わせたら、ふかふかになるじゃない。

 それを岩のベッドの上に置いたら、慣れない旅の人も寝やすいんじゃない?


 この地方独特の柄の毛布とか布とか使ったら、いい宣伝にもなるし」


 特産品になるかもよ、とフェリシアは言った。


「そうですねえ。

 じゃあ、この綿毛を集めて……


 あっ、こらっ」


 スライムの男の子が面白がって、穂を潰しては撒き散らしていた。


 綿毛はどんどん風に乗って飛んでいってしまう。


 だが、ファルコの、こらっ、という声にビクッとしたのは、スライムだけではなかった。


 魔王も潰して遊んでいたのだ。


「……すまん」


「大丈夫です、拾います」

と苦笑いしてフェリシアは言う。


 みんなで水に落ちた分も拾って乾かした。


「それにしても、なんか痒いですね」


 綿毛を集める作業をしながら、ファルコがボリボリと腕を掻いた。


「ああ、蚊がいるみたい」


 フェリシアも少し刺されているが、ファルコの方が露出が多く、汗をかいているせいか、より刺されているようだった。


「蚊ごときに刺されるとはっ。

 人間の肌とは(やわ)なものですねっ」

とファルコは人に変化(へんげ)したおのれの身体の弱さを嘆く。


 獣人の肌はなにでできているのですか……。


 魔王が驚愕して、ファルコに言った。


「……お前は普段、蚊に刺されないのか。

 私はいつも刺されているぞ」


 ――魔王様なのにっ!?

とフェリシアは思ったが。


 まあ、そういえば、魔王様は変化しなくとも、外見は元から相当人間っぽかった。


「このガマ、乾燥させて火をつけると、蚊が近づかなくなるんだけど。

 今日は間に合わないわね。


 ……あら?

 あれはなにかしら?」


 フェリシアは対岸にあるものに気がついた。


 三角の帽子のようなものを被った、顔だけの古い石像が木々の陰に見える。


 その目は穴になっていて、何処か遠くを見上げているようだった。


「遺跡かしら?」

「そうかもしれないですね」


「よしっ、結構たまったぞっ。

 もういいんじゃないか?」


 二人が話している間も、マントにせっせと綿毛を溜めてくれていた魔王が立ち上がる。


 いやまあ、スライムといっしょに、すごく楽しそうにガマの穂を潰していただけなのだが……。





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