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苔の町、ふたたび


「さて、どうやって苔の町まで戻りましょうか?」


 そうフェリシアが言うと、サミュエルが、

「そういえば、魔王様って、魔王様なのに転移とかできないんですか?」

と訊く。


「あ」

と全員が声に出して言っていた。



「いかんいかん、どうもフェリシアといると、人間っぽくなってしまって。

 おのれの能力を忘れてしまう」


 転移した苔の町を歩きながら、魔王はそう言った。


 神殿はすぐそこだ。


 幾らなんでも、神殿の中に転移するはご無礼だろうということになり、ちょっと手前に転移して、歩いていくことになったのだ。


 水を含んだ苔で足を濡らさぬよう、石畳の道を一列になり、歩いていく。


「魔王様、実は、前世、人間だったんじゃないですか?」

とフェリシアが笑うと、サミュエルが、


「……魔王に前世ってあるんですか」

と呟く。


 高台にある苔玉の親分のような丸く白い神殿の前で魔王が足を止めた。


「私はここで待とう。

 返してきてくれ、フェリシア」


 まあ、魔王が神殿に参拝するの、どうかと思いますもんね、と思いながら、フェリシアは鈴を預かる。


 ついでに全員のを預かり、神殿に返してくる。


 ちなみにドラゴンはまだカルデラ湖で寝ていた。


 久しぶりに封印を解かれて、外に出て。

 はしゃぎ過ぎたのかもしれないし。


 たくさん人や魔王を乗せて飛んだので、疲れたのかもしれない。




 大聖女様が帰ってきたと聞いたあのおばあさんも神殿の下までやってきた。


「大聖女様、ご無事でっ。

 どうぞ、お茶でも飲んでいってください」

とおばあさんに言われ、裏口から魔王も入ってお茶をいただいたが。


 帰ろうとしたら、出られなかった。


「何故だっ?」


 罠かっ、と叫ぶ魔王に、フェリシアは一度、外に出てみた。


「魔除けの枝が裏にもありましたよ」

とあの枯れた枝を手に言った。


「息子さんか、通りすがりの親切な人ですかね?」


 サミュエルが、

「……魔王がここから出られないなんて、魔除けになってないじゃないですか」

と小声で呟いていたが――。






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