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サミュエルの帰還


「ただいま、戻りましたー」


 フェリシアと一緒にいたので、彼女の緩さが少し移ったままのサミュエルが城に城に帰り、王に報告する。


 玉座にいるランベルトを見ながら、サミュエルは思う。


 ここに座ってないと、王様らしい威厳を感じないよな、この人。


 フェリシア様は市井をフラフラしてても、聖女とか勝手に呼ばれ出すくらい神々しいのに。


 玉座の肘掛けで頬杖をついているランベルトは、


「裏切り者が戻ったな」

と冷ややかにサミュエルを見ながら言う。


「なにが裏切り者ですか。

 こうして黄金の印を無事、持ち帰ったじゃないですか。


 他国に売り飛ばすことなく」


 ……売り飛ばすという発想が出るところが怖いわ、という顔をしながら、ランベルトが手を差し出す。


 サミュエルは玉座に近づき、数段上がると、一応、ひざまずいて、それを渡した。


 重い印の入った古い布袋を見ながら、ランベルトは溜息をつく。


「お前は私が呑気に王の地位に胡座をかいていると思っているのだろうが。

 そうでもないぞ」


 では、その座を投げ出してしまわれればいいのに。


 王位を降りても、そこそこの暮らしはできるはずだ、

と思っているのを見透かすようにランベルトは言う。


「まあ、お前にはわからぬわ」


「ところで、私が裏切り者だというのはどういう意味ですか?」


「フェリシアといたのだろう。

 あの娘といると、みな、あれに感化されるからな」


「……フェリシア様に感化されたからと言って、王の反逆者になるとは限りませんよ。

 そもそもフェリシア様は、城にいたくない人なので」


 ランベルトはちょっと自嘲気味に笑って言う。


「そうだな。

 私はあの娘に、めんどくさい王という立場を体良く押し付けられただけなのかもしれんな。


 ……まあ、これでなんとかなればいいのだが」


 布袋を目の高さに掲げたランベルトは珍しく若いときのような真摯な瞳をしていた。





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