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あてのない旅に出よう


 魔王たちは打ち合わせていた通り、町の門の外でみんなと合流した。

 あの町を出さえすれば、当たり前だが、迷わないからだ。


「アルバトロス様、ありがとうございます」


 サミュエルが魔王から、金印を押しいただく。


 うむ、と言いながら、魔王は、


 今度は私があの老人の立場にっ。

 この男の肩に剣を押し当てたい気持ちだっ、と思っていたが。


 サミュエルたちの剣をとってやるのもおかしいし。


 自分たちの中で剣を持っているのは、フェリシアだけだ。


 一緒に迷子になったおばあさんからもらったという、果実がたわわについた枝をつかんでいるフェリシアの背にあるのは、魔王を殺す剣と肉削ぎの剣。


 ……どちらも物騒だ、と魔王は思う。


 フェリシアはみんなにその実を配っていた。


 丸く青い実で熟れてないのでは? という感じだが、甘みが強く、美味い。


 ただ、中に大きなタネが入っているので、実の部分は少ないのだが。


 礼を言って、果実をもらっていたサミュエルがふと思い出したように言う。


「そういえば、この金印。

 鍵にもなるらしいですよ」


「なんの?」

とフェリシアが訊く。


「眠りにつきし、魔王が眠る場所の――」


 いや、起きてるんだが……。


 ここには物騒な物しかないな、と魔王は思う。


 自分の寝所を荒らすための鍵と、自分を殺す剣。


 魔王はフェリシアを振り返り、訊いてみた。


「トレラントに戻らないのなら、こいつらと一緒に国に帰るか?」


「いえいえ。

 勇者を見つけて、この剣を押し付けるまでは帰りません」

とむぐむぐ青い実を食べながら、フェリシアは言う。


 ――いや、お前、自分より勇者っぽいアーローとやらにも、剣、渡さなかったんだろう?


 城を出て、まだまだ迷子になりたいのだろうフェリシアを連れ、魔王たちはサミュエル一行と別れて、旅立った。


 ところどころ緑のある砂漠を歩きながら言う。


「私を滅ぼす剣と私の寝所を荒らす鍵を持つカタリヤは、私になにか恨みでもあるのか?」


 スライムは砂の上にタネを飛ばして遊びながら、走り回っている。


 ぱっと見、人間の男の子のままだが、駆け回っても砂に足をとられることはないようだった。


「どっちもたまたまじゃないですか。

 私は剣を勝手に入れられただけだし。


 サミュエルは純粋に印鑑として必要なだけみたいですよ」

と言ってフェリシアは笑う。


 フェリシアはちょっと歩きにくそうだったが。


 だからと言って、私が抱き抱えるのもちょっとな……、と魔王は思う。


 魔法で空に浮かすか、とフェリシアに、


「……やめてください」

と言われそうなことを考えながら彼女の横を歩いていた。




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