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魔王、フェリシアを観察する


 やはり、人間との方が気が合うのだろうか。

 楽しそうだな、と魔王はサミュエルたちと話すフェリシアを少し寂しく眺めていた。


 その様子に気づいたサミュエルが、

「ああほら、早く動かないと、大魔導士様たちが退屈してらっしゃいますよ」

とフェリシアを急かす。


「報告は受けていましたが、何処でこんな立派な方々と合流していたんですか?」


 なんだ、こいつ、いい奴だな、と魔王が思ったとき、フェリシアが、

「報告?」

と彼に訊き返した。


「王様から」


「……ああ、あの水晶玉の会話のときかな。

 いや、サミュエルに私の居場所を教えたくないから言わないとか言ってたような」


「なにかコソコソしてるので問い詰めたら、あなたが立派な人たちと旅をしている、ということは教えてくれましたよ」


 カタリヤの王、良い人だ、と魔王が思ったとき、スライムの男の子がくいくいとフェリシアの袖を引いた。


「どうしたの?」

とフェリシアがしゃがむ。


「その子、あまりしゃべらないんですね」

とサミュエルが言う。


「ああ、恥ずかしがり屋なの」


 そうフェリシアは適当なことを言っていたが。


 いや、単に人間の言葉があまりわかっていないだけなのだが。


 というか、フェリシアはそのスライムを幼子のように扱っているが。


 実際、自分が生まれたときにはもういたので、自分よりは老齢なのではないかと思うのだが。


 ……単に耳が遠いとか?

と思ったが、まあ、魔物に年はあまり関係ないし。


 今のスライムは可愛らしい人間の男の子の姿をしているから、これでいいのだろう。


 スライムはポケットから出してきたあの小さな水晶玉をフェリシアに見せる。


「そうそう。

 あなたが欲しがるから、おもちゃ代わりにあげたんだったわね」


 そうフェリシアが言ったとき、パッと水晶玉が光った。


 カタリヤの王、ランベルトが映る。


 スライムはしゃべらないが、小さな子どもが抱っこをせがむように手を上に向かって広げたり閉じたりする。


 それをにこにこと嬉しそうにランベルトが見ていた。


「……意外な子ども好きね」

とフェリシアが呟いている。


「なるほど。

 こうして、ときどき、通信してたのか。


 私は妖精のチカラがないと動かせないけど。

 ス……この子なら動かせるのかも」


「フェリシアではないか」


 スライムの後ろにいる義理の娘に気づいたランベルトが声を上げる。


 サミュエルは、すすす、と水晶玉に映る位置から逃げた。

 フェリシアとともにいることがバレたら、サミュエルが帰ってこないのではっ? と焦った王が騒ぐと思ったのだろう。


「ちょうどよい。

 お前に伝えておくことがあった」

とランベルトがフェリシアに言う。


「へえ、なんですか?」


 ……どうでもいいが、城を追い出した義理の父と娘の会話にしては、呑気だな。


 いつ如何なるときも、フェリシアに緊迫感がないからかもしれないが。


 どんなときも、なにかがどうにかなると思っているというか――。


 まあ、迷子になりたいくらい城の暮らしが嫌だったようだし。


 知らない男の後宮に入るのも嫌だったのかもしれないし。


 こうして、ウロウロ自由に過ごしている今が楽しいからこその余裕なのかもしれないが、と思ったとき、ランベルトが言った。


「トレラントの王に近づく女がいるらしいぞ」

と。




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