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どっちが迷子なのか

 

「大聖女フェリシアがいないじゃないか」

 魔王はそう言いながら、焼きたてパンを手にしていた。


 獣人ファルコは、

 ……大聖女とつけるのが、魔王さまも癖になっているようだ。

 あの方、大聖女っぽいけど、大聖女ではないはずなのに、

と思いながら、後をついて歩く。


 この二人がはぐれることはなかった。


 ファルコはただ、魔王に従って歩いているだけだからだ。


「うーん。

 フェリシアのもとに飛ぼうにも、チカラがまだ定まっておらぬし――。


 そもそも、フェリシアのところに飛べるほど、あの娘とは繋がっておらんしなあ。


 お、パンを焼く窯の店とかあるぞ。

 さっきのパン屋となにが違うのだ」


 そんな魔王の呟きが聞こえたのか、窯の店のおばさんが笑って教えてくれる。


「ここは、みんながパン生地を持ってくるところさ。

 朝持ってきておいて、焼いたのをあとでとりに来るんだ」


「ほう。

 パン屋と窯の店があるのか」


 ……しかも並んでいるとは、と魔王はそちらとこちらを見ている。


「そういえば、さっきもありましたね。

 パン屋――

 いや、あれも窯の店だったのですかね?」

と思い出しながら、ファルコは呟く。


 窯の店を挟んで、パン屋と反対側の隣には蒸し風呂の施設があった。


「あれは風呂か」

と言う魔王の呟きに、パン窯の店のおばさんが、


「ここの人たちは、風呂好きだからね。

 朝も風呂に入るんだよ」

と教えてくれる。


「入っていきなよ、旅の人たち。

 いや~、みんないい男だねえ」

と笑いながら、おばさんは魔王とファルコとずっと駆け回っているスライムを見ていた。




 その頃、サミュエルたちも迷っていた。


「何故迷う……。

 お前たち、ここの町には詳しいんじゃないのか」


 サミュエルは馬の上から連れの兵士たちに言う。


 全員が馬でウロウロすると威圧感があるので、兵士の馬は預けてあった。


「いやあ、俺たちも来て迷ったことがあるだけなんで」


「そういえば、さっきから、青い六角形の看板をよく見るな」

「なんでしょうねえ」


「あれがあると、行き止まってる気がする」

とサミュエルは振り返る。


「あ、そうかもしれないですねー」

と言う呑気な部下たちの言葉に、こいつらは当てにならないな……と思ったが、その気配を感じたらしいあの顔の濃い部下が言った。


「でも、そういえば、この町ではぐれて、すぐに出会えたら、それが運命の相手だという話がありますよ」


「……そういえば、フェリシアさまとはぐれたな」


「いえ、あれは、はぐれたんじゃなくて、では、と別れたんですよ」


「はぐれたな。

 今すぐ出会わなければ」

とサミュエルは繰り返す。







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