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魔王さまにお名前をおつけします

 

 三人は僧侶たちから離れた場所で、ぼそりぼそりと語り合う。


「じゃあ、お前の名をつけたあとで、私も私に名前をつけようか。

 いや、碑に刻んでほしいわけではないのだが……」

と魔王は付け加える。


 刻んで欲しいのだろうか……。


「おい、お前、なにかつけたい名前はあるか」


 魔王に、そう問われ、獣人は、えっ? と詰まる。


「特にないですけど。

 あ、あの、魔王様のお名前を先につけられては。


 つけたい名前が被ってはいけませんので」


 そうか? と考えたあとで、魔王は、

「そうだ。

 以前、何処かの街で聞いた格好いいと思った名前があった」

と言い出した。


「どんなお名前ですか?」


 フェリシアが問うと、魔王は嬉しそうに言う。


「アルバトロスというのだ」


 ……アルバトロス、確か異国での名は阿呆鳥。


「そ、そうですか。

 そうですね、ええ……。


 確かに格好いいですよね。

 騎士さまはなにか……」


「いや~、私はほんとうに希望はないんですけど」

と照れたように言う獣人に魔王が言った。


「では、別の国で聞いた、いい感じの名前をつけてやろう」


 ありがたき幸せ、と獣人は魔王の前で(かしこ)まる。


「ファルコでどうだ」


 ファルコは鷹。


 魔王様は阿呆鳥。


 ……騎士さまの名前の方が立派になってしまったようだ。


 でもまあ、本人たちが気に入っているのなら、いいかとフェリシアは思う。


 ちなみにスライムの男の子は、名前にも石碑に刻まれることにも興味ないらしく、僧侶たちの足元を駆け回り、可愛がられていた。




「それでは、お名前を――」


 三人の許に石碑に刻むための名前を訊きに書記官らしき人物が現れた。


「私の名前はアルバトロスだ」


 魔王さまはさすが魔王さまなので、堂々とそう言った。


 獣人は笑顔で、

「私は……」

と言いかけたが、慣れない名前が思い出せなかったらしく、


 なんでしたっけ? という顔でこちらを見る。


 書記官が自分の名前がわらからない獣人に不審げな顔をした。


 フェリシアが慌てて言う。


「実は、今回、彼が手柄を立てたので、新しい名前を授けることにしたのです」


「そうなのですか!

 我が国での出来事で、偉大なる騎士様に新たなお名前が授けられるとはっ。


 光栄でございますっ」

と書記官は笑顔になり、騒ぎを聞きつけた僧侶たちもやってきた。


「もしよろしかったら、名付けの儀などされてはいかがでしょうっ」

とみなが提案してくる。


「名付けの儀?」


 魔王が横でソワソワしはじめた。

 自分も儀式がしたいらしい。


「あの、実はこの方も――」


 フェリシアの言葉を横から奪い取るように魔王が言った。


「私も大聖女さまに新しいお名前をつけていただいたのですっ」


 いや、あなた、自分で自分につけたんですよ……と思ったが、結局、魔王と獣人二人の名付けの儀をやることになる。


 ちなみに、スライムは名前には興味もないようだった。


 みんなに可愛がられて楽しそうだ。





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