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わたしは大聖女ではありません


 フェリシアのもとに僧侶たちがやってくる。


「城の中庭に屋台を出してくれるらしいので、お待ちください」


 ……いや、そういう感じを求めていたのではないのだが、と思っていたが、そこは引けぬと僧侶は言う。


 大聖女さまになにかあってはと言うので、

「私は大聖女ではありません」

とフェリシアは主張してみた。


 だが、背後にいた魔王は、うーん、と首を傾げている。


「フェリシアよ。

 お前は何処でも大聖女扱いされるが。


 自分がそう名乗ったわけでもないし。

 我々がそう紹介したわけでもない。


 それでも、みながそう思うのなら、お前はほんとうに大聖女なのではないだろうか?」


 ――いや、なにもできないのにっ!?


 慌ててフェリシアは僧侶たちに向かい、訴えた。


「ほんとうに違いますっ。

 あの……


 あっ、そうだっ」


 フェリシアは背負っていた袋から白銀に輝く剣を取り出す。


「私は大聖女ではありません。

 この剣のせいで……


 ああいや、この剣に導かれ、旅をしているだけで」


 言い直したのは、この剣のせいでなどと言うと、伝説の剣に怒られそうな気がしたからだ。


 一生懸命、剣を見て説明していたフェリシアは、ふと周囲を見回し、ええ~っ、と思う。


 屋台の人から客から僧侶から、みながフェリシアに向かって、平伏していたからだ。


「なんとっ、あのようなすごい剣に導かれ、旅をしてらしたとはっ」


「あれは伝説の勇者の剣ではないのかっ?」


「この方は、ただの大聖女さまではないっ!」


 いや、ただの大聖女とは……?


「偉大なる大聖女さまがお腹を壊されてはいけない」


「店主たちよ。

 中庭に屋台を設置し直し、料理は徹底して吟味し直して出してくれ」


「もちろんです、僧侶さまっ」

「ありがとう、店主たちよっ」


 かつてないくらい僧侶たちと屋台の店主たちの仲が深まったらしい。


 和気藹々としている彼らを見ていた魔王がポンと肩を叩いてくる。


「もうみんなのために、大聖女でいてやれ」


「そうですね。

 なにやら申し訳なくて、むずがゆいですが……」


 そう答えながら、この魔王さま、やさしいな。


 いや、『魔王』とは……?

と思う。


 フェリシアは街の人たちと話したり、拝まれたりしながら、城の中庭に屋台の準備が整うのを待った。





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