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砂漠の中の街


 なんだかんだで、僧侶たちについて彼らの国に行った。


 特に行くあてもない旅だったし、その国が近かったからだ。


 森を抜けると、さっきのピンクの湖の周りにあったような白い砂の大地が広がっていた。


 少し歩いた先に、突然日干しレンガの壁に囲まれた街が現れる。


「あそこでございます」

と僧侶たちは言う。


 満天の夜空の下にそこだけ別世界のように壁があり。


 中は明るいのだろう。

 壁の上から空に向かい、光がもれている。


 フェリシアたちが暗い砂漠の中のその光を見つめていると、僧侶が安堵したように言った。


「いや~、これから偉大なる誰かを探して果てのない旅に出ないといけないかなと思っておりましたのに。


 出てすぐ、大聖女様の奇跡を目の当たりにしまして。

 ほんとうに幸運でございました」


 何処の誰とも知れない偉大なる誰かを探して旅に出て。


 その誰かに国の混乱をおさめてもらおうと思っていたのだろうか。


 そんなアバウトで人頼みな感じでいいのか? とフェリシアは思う。


 高い頑丈そうな門が街の入り口にはあったが、僧侶たちがいたので、簡単に開けてもらえた。


「この塀と門が我らの街を悪しきものから守っているのです」


「……今、自ら、悪しきものを国に招き入れましたがいいのでしょうか」

とフェリシアは小声で呟く。


 いやまあ、魔王といえども、彼らの国の混乱をおさめてくれるものなら、悪しきものではないのかもしれないが。


 なにごともその人のとらえようだから。


「ここが国の中心なのですか?」


「はい。

 近くのオアシスや少し離れた場所にある森にも我が国の人間は住んでおりますが。

 ここが王がおられる場所なので」


 塀の中にある街は狭いせいか、ぎっしりと高層の建物があり、道には屋台がたくさん出ていて、あちこち火が灯っていた。


「なんだかワクワクする街ですね」

とフェリシアは笑う。


「あら、日干しレンガの建物ですね」


 フェリシアは立ち並ぶ高い家々を見上げ、呟いた。


「水をかけ続けたら一発なのに」


「……あなたがこの国を滅ぼしに来たのですか」


 やめてあげてください、と獣人に言われる。


「水といえば――


 あの、こんなにたくさんの人がいたら、水、大変じゃないですか?」


「この辺りは砂漠ですが、先ほどの山や森から地下にトンネルを掘り、水をここまで流しています」


「そうなんですか」


「日干しレンガは確かに水に弱いですが。

 暑さを凌ぐのにも良く、こういう地域には適してるんですよ」


 聞こえてましたか、という顔を獣人がした。


「そういえば、下の方には窓がないですね」


 フェリシアがそう言うと、僧侶は、


「はい。

 敵に攻め込まれたときのために、下の階には窓は作っておりません」

と答える。


 なるほどなるほど……と深く頷くフェリシアの横顔を見ながら獣人が、


「なんか、攻め滅ぼされない方法じゃなくて。

 攻め滅ぼす方法を考えてそうに見えるのでやめてください……」

と青ざめて言って、僧侶たちに笑われていた。


 大聖女さまがそんなことするわけない、という安心感からだろう。


 だが、魔王たちは、この伝説の剣を持つ姫がなにをするかわからない姫であることをもう知っていたので笑わなかった。



 


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