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新たなる目的地へ


 お礼にと村人たちに水や食料をもらった。


 大きな皮袋に入れられたそれを獣人が担ぐ。


 特に行き先は決まってはいなかったが、みんなに熱く見送られていたので、ともかく、ここを去らねば、とフェリシアは焦る。


 長く送ってもらっても悪いので、一旦、森の中に紛れ込んだ。


 チラと窺うと村人たちは、今日の騒動の高揚感そのままに、楽しげに話しながら、家路に着いたようだった。


 この辺りは日が落ちるのが遅いのか、まだ空はピンク色のままだ。


 木々の向こうに見える、その空と、空と同じ色に(きら)めく湖を見ながらフェリシアは言った。


「よかったですね、魔王様。

 無事に解決して」


 これでこの辺りの悪評は消えますよ、と言うフェリシアに魔王は、


「待て」

と言う。


「今回の件、結局、私のチカラは関係なかったのではないか?

 藻が勝手に繁殖してたのだろう?」


 まあまあ、とフェリシアは魔王を宥める。


「良い観光地になるよう、ハート型にしてあげたりして、魔王様の評判、上がりましたよ、きっと」


「私は私だと名乗っていないはずだが。

 何処ぞの魔導師だと思われたままだぞ」


「魔王様の高貴な気配に、いつか気づく人がいますよ~。

 まあ、それはいいんですが。


 我々、ここから歩いて戻らないといけないんですかね?」


 フェリシアは、魔王がここへ飛ぶ前、この転送は片道切符だと言っていたのを思い出していた。


「チカラが戻れば、また飛べるが。

 帰る気か?


 お前は伝説の勇者の剣を押し付けられる人間を探しに旅に出るのではないのか」


「旅に出ましょうよ。

 ここで帰るのもつまらないですしね~」

と獣人たちも謎な感じに張り切っているので、とりあえず、しばらく森の中を道なりに歩いてみることにした。


「なにか美味しいもののある街に出ないですかね?」


 草に囲まれた細い獣道を歩きながら、フェリシアはいう。


「だが、この先は山だぞ」

と魔王が言ったとき、向こうから誰かやってきた。


 ぱっと見、立派な杖を手にした僧侶の集団に見えた。


「葬儀でもあるんですかね?」


「坊さんっぽいけど、坊さんじゃないんじゃないのか?」


 キラキラした服装だぞ、と魔王は言う。


 彼らはフェリシアたちの前で足を止めた。


「大聖女さまですね」


 違います。


「いえ、なにもおっしゃらなくても我々にはわかります。

 あなたが聖なるチカラをお持ちなことは確かですから」


 ……確かなんだ?


「我々、山の上から見ておりました。

 今、あのピンクの湖を一瞬で透明に戻し、また、ピンクに戻されましたね。


 素晴らしいチカラです」


 一瞬ではなかったですよ。

 何処から見ていたのですか。


 大聖女さま、と剃髪した、白に金の縁取りのローブの僧侶たちがフェリシアの前に膝を折る。


「どうか我が国にいらして、混乱をおさめてください」





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