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小さなころの美湖の姫はよくしっぱいをして泣いていた。おてんばで怪我をすることも多かった。(目を離すと、すぐどこかに行ってしまうから、とても心配だったし、はらはらしたし、なかなか大変だった)
「きりさめー。いたいよー」と泣きながら、美湖の姫は言った。
「はいはい。大丈夫ですよ。姫さま。すぐによくなりますよ」と言って、霧雨は傷の手当てをしてから、なかなか泣き止まない小さな美湖の姫を抱っこしてあげた。すると少しして美湖の姫はようやく霧雨の腕の中で泣き止んでくれた。
「きりさめ。どこにもいかないでね。ずっとわたしのそばにいてね」と背中に背負っている美湖の姫は言った。
「はいはい。わかっていますよ。姫さま。大丈夫です。わたしはどこにもいったりしませんよ。御月をおやめにさせられなければね」とふふっと笑って霧雨は言った。
美湖の姫のお家はかなりのお金持ちの貴族だったからとても高価な和紙を美湖の姫は持っていて、その和紙によくらくがきをしていた。(本当は歌を詠むための和紙だったのだけど、美湖の姫は御歌があまり好きではなかった。どうやらお歌を詠むのがへただったようなのだ)
ある日、美湖の姫は和紙に霧雨の絵を描いて、それを霧雨に「あげる。きりさめ」と言ってくれたことがあった。霧雨はとっさに我慢できずにその場で泣いてしまった。(美湖の姫はとっても驚いていた。なんで霧雨が泣いているのかそのわけがわからなかったからだ)その絵は今も大切にとってあって、霧雨の宝物になった。
「きりさめ。なかないで」と美湖の姫は心配そうな顔で言った。
でも、霧雨は(頑張ったのだけど)泣き止むことはなかなかできなかった。