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「ねえ。霧雨。あれはなに?」
とお庭をお散歩しているときに美湖の姫は大きな木にとまっている一羽の鳥を指さして言った。
美湖の姫は本当に美しい姫で鮮やかな群青色と桃色の着物を重なるようにして、着ていた。腰まである美しい黒髪はまっすぐ下ろしていて、背も高い。年も若くて美湖の姫は今年で十六になったばかりだった。
そこに美湖の姫がたっているだけで、まるで美しい花が咲いたようだった。そんな美湖の姫が霧雨を見てにっこりと笑っている。
季節は春で暖かくて穏やかな風の吹いているとても気持ちのいい午後の時刻のことだった。
「あれは杜鵑です。姫さま。鳴き声を聞けばすぐにわかりますよ」と桜の木の枝に止まっている杜鵑を見て、霧雨は言った。
「あれが杜鵑」と杜鵑をまじまじと見ながら美湖の姫は言った。
するとそれからすぐに「ほー、ほけきょ!」と杜鵑は鳴いた。その可愛らしい鳴き声を聞いて、嬉しそうに美湖の姫は笑った。その笑い声を聞いて、杜鵑は木の枝から離れて、遠い青色の空の中へと飛び去っていってしまった。
「行ってしまいましたね。残念だけど、もし捕まえたとしても小さな籠の中に閉じ込めてしまうのではかわいそうですし、まあ、したかのないことですね」と霧雨をみて、赤い舌を出して笑って美湖の姫は言った。
美湖の姫はとても好奇心が旺盛な性格をしていて、よく物知りの霧雨に今のように、あれはなんですか? と、聞いては霧雨のいろんな(自分の知らない)言葉を聞いてとても感心していた。(霧雨は本当になんでもしっていますね。すごい。と目を大きくして驚いた顔で言っていた)
それは美湖の姫が小さな童のときから、ずっとずっとそうだった。美湖の姫は元気でわんぱくで、そしてとても明るいお日さまみたいな姫だった。