表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/10

仲良くなったのはいいんだけどさ? なんでこうなるかなー?


 そんなこんなで、王都を出発して約半年後。


 火竜の棲み付いた火山へやって来た。


 本当はもっと早く着けたんだが、姫さんの修行がてら道中の凶悪モンスターや盗賊共をぶち伸めしたり、フルプレートアーマー買う為の賞金を稼いでいたら、なんだかんだあっという間に半年が経っていた。


 つか、姫さんの成長が著し過ぎ。全くのずぶの素人だった姫さんが……今じゃ、一人で凶暴なバーサーカーベアをぶっ飛ばせるんだからなぁ。ま、ある意味ヒャッハー! 中の姫さんもバーサク状態だけどさ?


 そして、この火山は休火山だった筈だが、火竜の訪れに触発されたのか、近頃じゃ噴火の兆候が見られるそうだ。


 噴火なぁ……俺らが滞在中はやめてほしいぜ。


 な~んて思っていたら、俺らを発見したオーガやリザードマンと戦闘が発生。


 以前は、この地域にはオーガやリザードマンの群は棲んでなかったらしいんだが、火竜飛来以降、生態系が変わりでもしたんか?


 そして、姫さんとアリシアさんが『ヒャッハー!』して応戦。


 俺は対火竜戦に備えて温存されることになり、後方で守られることになった。おっさんの後ろで、アリシアさんと姫さんが暴れ回るのを見ていた。


 とあるオーガがアリシアさんにトドメを刺されそうになったとき、


「参った」


 オーガを統率している、おそらくはオーガキングが低い声で唸るようにそう発した。


 ここで、彼らに言葉が通じることが発覚。警戒しつつ、話ができるならと言葉を交わしてみた。


 彼ら曰く、自分達は火竜を崇めている民で、火竜がこの地へ引っ越したから付いて来たのだとか。なんでも、火竜が火山内部で卵を温めているのだそうだ。


 そして、『ヒャッハー!』の治まった姫さんが火竜とも対話が可能であるならば、話してみたいと言い出した。おっさんは反対したが、卵を守る竜に下手に手を出すことが危険だとみんなで説得。


 結局おっさんが折れて、俺らは火竜とご対面と相成ったワケだ。


 火竜曰く、この火山は数百年単位で噴火と休眠のサイクルを繰り返していて、噴火の時期前後には火竜が子育てをしに来ることが多いのだそうだ。


 火竜が来たから噴火するのではなく、噴火するから火竜が来るのか……もしかしたら、以前の噴火時期と火竜の来訪は、うちの国が建国される前のことなのかもしれない。それなら、資料が無いのも納得ー。


 ちなみに、この火竜を追い出しても、「すぐに別の火竜が来ると思うぞ?」とのこと。火竜は基本、子育て中はあまり群れないそうで、火山を棲み家にするのは子育て中の火竜が優先らしい。


 故に、現在の火竜が出て行くと別の個体が棲み付く可能性が高いという。そして、次にやって来る火竜が話の通じる相手とも限らない。いきなり無差別攻撃仕掛けて来るようなやべぇ竜に来られても困る。


「だったらさー、現在卵温め中のこの火竜……フラン様と仲良くしといた方がよくね?」


 と、なった。


 やー、そこでなんで微妙に残念そうな顔するかな? アリシアさん。普通はさー、ドラゴンと対峙したら死を覚悟するもんなんだぜ?


 そして、『現在この火山地帯に飛来した火竜は、言葉が通じる故に交渉が可能。火竜は活動期に入った火山で自身の卵を孵化させる目的で滞在中。火竜の来訪で火山が活発になったのではなく、火山活動が活発になったが故に火竜が来訪したとのこと。また、この火竜を退けたところで、別の個体が訪れる可能性が高い。ならば、対話が可能なこの火竜と敵対するよりは、平和的解決が望ましい』というような文書を、おっさんが王宮へと送った。


 王宮からの返事は……まあ、アレだ。要約すると、『国に不利益なことはするな。火竜との交渉権という名誉を与えてやる。火竜を暴れさせることなく、どうにか解決しろ。失敗したら、死んでも火竜を食い止めろ』という、なんともイラッと……いや、丸投げ且つ偉そうでス・テ・キなお返事だわー。


 うん。これはあれだ。自分達の好きに交渉していいんだー♪ワーイヤッターラッキー(棒読み)という風に、ちょー好意的に解釈しておこう。


 そして、後から国が文句を言って来ても、この正式な書類を盾にすれば問題無し! 最悪、『だったら自分達で直接火竜と交渉してくださーい』って言えばいい。


 そう決~めた!


 どうせ、自分達で火竜と対峙するなんてそんな勇気や度胸なんか無いだろうしさー。


 そうやって、火竜に国を侵略したり、蹂躙したり、破壊活動をするつもりがないかどうかの確認をして、『もしそのような事象が確認できたら、自衛の為に人間側も必死に攻撃しますよー?』という約束を取り交わして・・・


 なんか、火竜とアリシアさんが仲良くなった。ヤだ、混ぜるな危険! だったかもしれない……ま、今更だけどなー?


「仲良くなったのはいいんだけどさ? なんでこうなるかなー?」


 火竜こと、フラン様は……卵をマグマに放り込んだ後、うん。この時点で、火竜の強靭な生命力を再確認できるわな? で、見守っているのに飽き……というか、マグマが揺り籠兼、最大の防御装置と化していて、卵を害そうとするなら、まずは摂氏千度から数百度は下らない灼熱マグマや、噴出する有毒ガスをどうにかする必要があるワケだ。


 普通の生き物には、かなりハードルが高い。


 ま、卵を害するだけなら、やりようが無いワケじゃないけど。わざわざ火竜と敵対するメリットなんか皆無だもんなー。ドラゴンと対峙するイコール死を覚悟せよ、だもんなー。


「卵孵るまでじっとしてたら身体鈍るわー。ね、ちょっとあたしと運動しない?」


 な~んて『お茶でもしない?』という風な軽~い感じのお誘いがあり、アリシアさんがそれに乗った。そう、嬉々としてお誘いを受けたのです。


 結果、火竜と生身で殴り合いをする人間という衝撃の光景を目の当たりにすることになった。 えーっ!! 人間って、生身でドラゴンと渡り合えるの? いや、まあ、二人? 一人と一頭? 共、お遊びだっつって、本気では戦ってないそうですが・・・


 おっさんとか、白目剥いてたわ。で、姫さんは瞳をきらっきらさせて、


「アリシアさんもフラン様もすごい……!」


 とか呟いてた。や、アレに憧れちゃうの? と、危惧していたら――――


「ふぅ……いい汗掻いたわ。姫様も、フラン様と戦ってみます? 手加減してくださるそうなので、急所への攻撃と殺意を乗せた攻撃をしなければ、いい感じに遊べますよ」


 と、一戦交えた後の爽やか笑顔で、やっぱりとんでもねぇことを言ったアリシアさん。


「は、はい! フラン様、お手柔らかにお願いします!」


 そう言って、姫さんも火竜のフラン様とド突き合いを始めた。


 おっさんは、泡吹いて気絶した。そのおっさんの介抱をしていると、


「その、我らにも稽古を付けて頂けませんか?」


 リザードマン(・・)じゃなくて、リザードウーマン(・・・・)の隊長リズリーさんが打診して、アリシアさんは即行快諾。それに便乗したのが、オーガキング。


 そして始まる、再びのバトル。


 おっかしいなー? なんで、人間がオーガの最上種、オーガキングと素手で殴り合えるんだろ? というか、圧倒とかマジすげぇ! 身長もリーチもオーガキングのが長いのに、その手足を掻い潜って肉薄するアリシアさん。


 ドゴン! と、オーガキングの腹を打つ華奢な拳。なんだか、肉体からしていい音じゃない音が響いた気がするぜ?


 と、呑気に見物していられたのはここまで。いい一撃をもらってブチ切れたのか、オーガキングがアリシアさんの頭部へ拳を繰り出そうとして――――


「やめなさいっ!!」


 リズリーさんの声が響き、


「ハッ、遅い! 雑魚が!」


 鼻で笑ったアリシアさんが、煽りながらオーガキングの拳を半身で躱し、その拳を掴んでオーガキングをぶん投げてドン! っと吹っ飛ばした。


「わーお!」


 とっさに展開させた防御魔術が無駄になったぜ。ま、アリシアさんが無事だからそれでいいけど。でも、煽る必要は無いと思うなー?


「さっすがアリシアさんですね!」


 驚く俺。絶賛気絶中のおっさん。きゃっきゃと喜ぶ姫さんに、目が点になってあんぐりと口を開けているリズリーさん。


 もうもうと立ち上る土煙の中……


「ガァアアアアアアアアアーっ!!!!」


 読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ