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俺がガッチガチに魔術付与してちょー魔改造しましたー。


「ヒャッハー! オラオラ、その程度かよっ!? 雑魚がイキってんじゃねーぞっ!」


 と、全身に魔力を纏って筋力とスピードを強化し、オートで回復魔術が掛かり、怪我が瞬時に治る体質で……敵を煽りながら凶悪な笑顔で高笑うという、ヤバい系になっちゃいましたっ!!


 姫さんは……アリシアさんのあんなところも忠実に再現というか、見習ってあんな風に『ヒャッハー!』するようになってしまったのだった。姫さん純粋だから、アリシアさんのやべぇ教えをそのまま吸収しちゃったんだなぁ……


 ちなみに、俺らパーティーの料理は最初、アリシアさんと護衛騎士のおっさんが交代で作っていた。そして俺も最初は当番を組まれていたのだが、姫さんに雑草食わすなって怒られて料理当番から外された。


 平民の間では普通の食材なのになー。って、それはどうでもいいんだが……


 アリシアさんが道中の敵を無情に拳(偶にナックル無しで素手のときもある)でフルボッコしたり、拳でモンスターを撲殺や殴殺(文字通りに殴り殺す)したりした、いろんな血や肉片(偶に野盗なんかの肉片もあるよ)に塗れた拳(一応、戦闘終了後に洗浄済みだけど)で作る料理に非常に抵抗感と危機感を覚えたらしいおっさんが、


「これからは、わたしに料理の全てを任せてもらえないだろうか? 是非ともやりたいんだ!」


 と、強く主張して一手に引き受けるようになった。


 まあ、おっさんは……姫さんが小さい頃は近衛騎士として護衛していたらしいが、その後離宮の番になって、最低限鍛えてはいたというが、ほぼ戦うことはなかったみたいだし。実は料理が趣味っぽいし。偶~にこっそり姫さんに手作り料理やお菓子を差し入れていたのだとか。


 お陰で、姫さんは餓えずに済んだっぽい。おっさん、健気ー。


 治癒魔術は、大怪我などを治すと大量にカロリー消費するからなー。食事を抜かれることはなかったらしいが……怪我をさせられることの多かった姫さんには、普通の子供が食べる分の食事量では足りなかっただろうなぁ。だから、同年代の子よりも成長不良な感じに小柄で細っこかったのか。


 それは兎も角。ぶっちゃけ、アリシアさんのがおっさんよか大分戦闘力が高かった。


 うん。毒を持ち、魔術も使えるという厄介なモンスターであるキメラやバジリスクを単身で、それもぶん殴るだけで瞬殺できる近接とか、マジすげぇぜ! 本当に、シスターよか冒険者のが適職だと思います。


 一応、俺も単独でキメラやバジリスクは倒せる。魔術で、ちょい時間掛かるけど。連中の攻撃範囲外から真空の檻に閉じ籠めて窒息死させるのが、イイ感じに素材採れんだよなぁ。


 毒持ちモンスターは毒耐性持ってる奴のが多いけど、呼吸が必要な生物は大体酸欠で殺せる。海中生物とか一部のドラゴンなど、酸欠への耐久性が桁違いのモンスター相手には厳しいし、そもそも呼吸の不要なアンデッドやゴーレム系、精神生命体系には全く効かないけどなー。


 アリシアさんの撲殺や殴殺は……急所に一撃なら割と傍目には綺麗な死体に見えるけど、アレ偶に内臓がぐっちゃぐちゃになってることもあるからなぁ。拳一撃でモンスターの内臓破裂させるとか、どんな威力だか? マジおっかねぇ美人さんだぜ。


 というワケで、高火力や窒息系の魔術だと俺のが攻撃力が高い。次いで……というか、接敵後タイムラグ無く対人にも対モンスターにも強いアリシアさん。対モンスターには心許ないが、ある程度は対人で戦えるおっさん。最弱が姫さん……だったんだがなぁ。


 あの頃……盗賊やモンスター相手に怖がって、涙目でぷるぷる俺の後ろで震えていた小動物系の姫さんが懐かしいぜ。


 ま、姫さんの顔形は変わってない……いや、前は折れそうなくらい細っこかったけど、今はめっちゃ鍛えてたくさん食べるようになって、前よか身長伸びて、断然健康的になって美人度が増してはいるけどな?


 ちなみに、魔術師の俺は基本後衛。よって、以前の戦闘中は姫さんを後ろに隠す盾という美味しい役割をもらっていたのです!


 ま、今じゃ可愛くもない、騎士で料理番のおっさんを守ってんだけど。


 アリシアさんに弟子入りしてから――――


 今じゃあ……率先して『ヒャッハー!』しながら、今までの理不尽に虐げられていた鬱憤を晴らすように、敵対するモノを千切っては投げ千切っては投げ、対人も対モンスターも割と無双だもんなぁ。


 姫さん、近接戦闘の才能めっちゃあったんだなぁ。先天的な才能より、おそらくは……虐待されて目が鍛えられたり、自身の身体で、攻撃されたら痛いところ、ヤバい……命の危険を感じるところを身を(もっ)て、本能で知っているってのもあるかもしれないが。そういうの、マジで不憫過ぎるぜ。


 でも、姫さんが人の挙動に怯えることがなくなって、自分に自信が持てるようになって、笑顔が増えたってのはかなりいいことだと思うけどさ。


 けど、さすがに第二王女である姫さんが顔さらして『ヒャッハー!』してんのは問題があるとおっさんが言い出して、俺も姫さんが軽装で戦うのは心配だったので、姫さんに重騎士が装備するようなフルプレートアーマーをプレゼントすることにした。


 ふっ、用意するのに五日も掛かったぜ。


「なんだかこそこそしていると思ったら、こんな物を作っていたのね。でもそれ、姫様には少し重くないかしら?」


 と、アリシアさんが心配していたけど……


「あ、大丈夫っす。素材のフルプレートアーマーに、俺がガッチガチに魔術付与してちょー魔改造しましたー。具体的には、鎧の耐久度を限界まで上げてー、軽量と防汚コートに加えて、抗菌、防臭、腐食耐性、毒耐性、熱変動耐性、内部への衝撃吸収効果も掛けてあるんでー。軽くてめっちゃ頑丈でハイスペックな鎧になってまーす。持ってみますー?」


 このパーティーで集めたモンスター素材と、ガキの頃から冒険者として稼ぎながら集めた、手持ちの秘蔵希少素材を注ぎ込んだ自信作だぜ。


「あら、本当に軽いわ」


 くん、と軽~く片手でフルプレートアーマーを持ち上げるアリシアさん。やー、普通の女性は、大分軽量化されているとは言え、フルプレートアーマーを持ち上げらんねぇから。ま、そんなの今更過ぎる気もするけどー。


「姫様、装備してみます?」

「え? あ、そ、の……い、いいんですか? わたくしなんか、に……」


 あわあわと自信なさげに、俺とおっさんをちらちらと伺う姫さん。


「どうぞー。つか、これは俺らが姫さんの為に特別に作ったんだから装備してくれないと困るー」


 どうも姫さんとアリシアさんは、怪我は治れば問題無いと思っている節がある。こういうのって、強い治癒魔術持ちの弊害だと思うんだよなー?


 なにより俺としては……いや、普通の男からすると、女の子が怪我をする場面ってあんまり見ていたい光景とは思えないワケよ。ほら、嗜虐趣味でもある奴なら別だろうけどー? そんな特殊嗜好を持ってない側からすると、傷付いて怪我し捲りな女の子は見てらんない。


 アリシアさんは武術の達人て感じで、あんまり怪我しないし、しても軽いものが多いけど。姫さんは武術を始めたばかりだ。よく怪我をして……そして、瞬時に治っている。でもすぐに治るからって、傷を負うリスクを無視しちゃ駄目だと思う。


 だってさ? 怪我自体は治っても、血が流れ過ぎたら貧血になるし。怪我が治っても、流れた血は戻らない。下手すりゃ、体力無くなって衰弱死や失血死する可能性だってあるんだぜ? 血が足りないまま戦闘中に目眩や貧血起こしゃ、やられるリスクだって高くなる。


 パーティーメンバーの不調は、そのまま生存率の低下にも直結する。


 なのに姫さんは、「平気です」と笑う。


 これは、今までの生育環境が悪過ぎだろ。俺からすると、マジ最低。兄姉に虐げられ、八つ当たりを受け、我慢させられ、堪え続けることが当たり前だった姫さんは、自分が怪我をすることに躊躇いが無さ過ぎる。


 さすがに、自分の拳壊れて骨がまで見えて、ぐしゃぐしゃになってんのに頓着しないで攻撃続けんのは、マジ見てらんない。かと言って、姫さんが戦闘するのも止められない。いや、止めたくない、だな。


 長いこと虐待されて、誰かの挙動に逐一ビクビクして人間に怯えていた姫さんが、自分から強くなろうとしてんのに。それを止める方が人としてどうよ? って感じだしー。


 『もっと自分を大切にしてーっ!?』とは、毎度伝えてるけど。姫さん自身が、「軽い怪我で、すぐ治りますから平気です!」って笑顔で言うのとか、マジやめてほしい。


 姫さんが平気でも、近くで見てる俺とおっさんが全っ然平気じゃないからなっ!?


 というワケで、せめて姫さんの怪我を減らそうと頑丈なフルプレートアーマーをプレゼントすることになった。


「そ、それじゃあ、失礼します!」

「え~? ここは、ありがとうって言ってくれる方がうれしーんだけどなー?」

「あ、あ、ありがとうございますっ!!」


 おーおー、顔真っ赤にしちゃって可愛いー♪


「ふふっ、手伝いますね」


 がっしょんがっしょんとアリシアさんに手伝ってもらって鎧を身に付けて行く姫さん。


「動き難いとか、キツいとか、狭苦しいとか、重いとかありますかー?」

「い、いえ、だ、大丈夫です!」


 姫さんはガチャガチャと身体を動かして返事をする。


「そ、その、ありがとうございます! 壊さないよう大事にしますね!」

「やー、大事にするよかガンガン使ってー? 姫さんの身を守る為に壊れるなら、頑張って魔術付与した甲斐あるからさー」

「ぁ、ありがとうございます! ヴァーグさん!」

「おう、おっさんにもお礼したげてねー? この鎧買って来たのおっさんだからさー」

「はい! ありがとうございます、レベックさん」

「いえ、姫様に喜んで頂けて光栄です」


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 ヴァーグ君は子供の頃から冒険者やってました。魔術学院の受験料も、そこから捻出。入学初日に退学になっちゃったけど。(*`艸´)

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