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【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第4部 妖精の森編

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90 最後の一つのカケラを求めて

 私とディディは転移魔法を使って、妖精の森へ戻った。


「ご主人さま、おかえりなさい!」


 妖精リアが私の姿を見つけて、嬉しそうに飛んでくる。


「ただいま」


「心のカケラはどうでしたか?」


 リアが私の反応を気にしながら聞いてきた。

 でも、私の曇った顔を見て、言わずとも状況を感じ取ったようだ。


「ほとんど集められたよ。でも……最後の一つが足りないみたい」

「そうなんですか……じゃあ、どこに……?」


 リアの沈んだ顔を見て、私は申し訳なくなる。

 

「これまでのことを妖精王に報告するわ。リアも一緒に来て」

「はい、わかりました!」


 彼女たちと一緒に妖精の泉に移動すると、妖精王は意識の戻らないロウを見守っていた。

 私はロウが眠る台座の前に立つ。


「妖精王」


 私が呼びかけると、水面から妖精王が姿を現した。彼が長い髪をパサァッと手で揺らすと、それだけで水分が弾けた。


「ロザリー、どうだった?」

「はい、妖精王」


 私は心のカケラを集めてきたこと、ほとんど集まったけれど、最後の一つが足りないことを伝えた。


「……そうか。心のカケラの最後の一つが足りないのか」


「あのっ、お父さま……」


 ディディはおずおずと妖精王の前に歩み出ると、顔を上げた。


「もしかして、この世界にはもう心のカケラは存在しないのではありませんか?」


 妖精王も、ディディの言いたいことがすぐにわかったようだ。

 この世界にはない……?


「ロウの心のカケラは異空間にも散らばっている。そのため、異空間に行く必要があるだろう」


 私は一瞬息を呑んだ。異空間なんて考えもしなかった。


「どうやって、その異空間に行けばいいの?」


 私は妖精王に聞いた。


「ディディ、ロザリーを異空間へ案内して、彼女を助けるのだ」

「わかりました」


 ディディは頷くと、妖精の魔法を唱え始めた。

 彼女の姿が光に包まれ、次第に小さなウサギの姿に変わった。エメラルド色の瞳をした、もふもふの白ウサギだ。可愛い。


「これで準備完了よ。ついてきて」


 ウサギに姿を変えたディディは跳ねながら私たちを導いた。私たちは彼女の後を追い、妖精の泉の奥へ進んだ。そこには森が広がっていて、景色に馴染むような緑色の異空間への扉があった。


「いい? この扉の向こうが異空間よ。向こうへ行く前に気をつけてほしいことがあるの」


 ディディは扉に手をかけながら、私たちに振り返った。


「タイムリミットは一週間。それ以内に戻らないと、もうこの世界には戻って来られないかもしれないわ」


「それはどうして?」


 私が聞き返すと、ディディは説明してくれた。


「空間の歪みを利用して異空間に行くの。その歪みは一週間しか保たない。歪みが消えてしまうと、異空間に取り残されてしまうわ」

 

「そんな……」


 私は思わず言葉を失った。


「でも、私がついて行くから大丈夫よ」


 ディディは根拠のない励ましをくれた。

 そんな中、リアが私の手のひらに彼女の小さな手で触れた。


「ご主人さま、無事を祈っています!」

「リア、行ってくるわね。妖精王も、ロウのことをよろしくお願いします」


 私は妖精王とリアに見送られて、異空間への扉をくぐるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの異世界転移ですと!? なんだか不思議の国のアリスみたいですねぇウサギ出てくるし。 でもってこれは……ロザリーを異空間に閉じ込める絶好のチャンスでもある(意味深 でもって心の欠片ゲ…
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