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【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第4部 妖精の森編

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83 上級ダンジョン①

 

 ギルドで私のランク昇級を終えると、私とロウは上級ダンジョンの入り口へ向かった。


 そこには、地団駄を踏んで悔しそうにしている三人組が……。


「あの三人、Aランクの制限に引っかかって入れないようだな」


 ロウは三人組を見ながら言った。

 私はそんな彼に尋ねる。


「どうする? このまま見過ごすのも可哀想だけど……」


「気の毒だが、パーティに誘って、足手まといになられても困る。今回は見送るとしよう」


「そうね……」


 ロウの言葉に、私は同意する。

 すると、三人組の一人、女性剣士が勢いよく振り向いた。


 彼女は美しい顔立ちをしていた。

 腰まである長い金髪は、背中の位置で二つに緩く結ばれている。

 私より、少し年上の二十才くらいだろうか。


「私はBランクの剣士、アルビエール。そこの冒険者たち、私たちに力を貸しなさい!」


 ツカツカと、その美しい女性はこちらに歩み寄ってきた。


 その仲間らしい、屈強な男性二人はオロオロとアルビエールの後を追う。二人とも、少数民族が何かの儀式に使うような顎と額が長い木彫りのお面を着けているため、表情はわからないが。


 少数民族の印象が強いのは、男性たちが藁でできた服を着用しているからだ。風が通って涼しげだが、肌にチクチクしそうだ。


「ダンジョン攻略はボランティアじゃない。俺たちが力を貸す必要はどこにある?」


 ロウが冷たい視線で、アルビエールを睨む。


「う……。でも、私たち、Aランクの入場制限のダンジョンに、どうしても入りたいのよ!」


 彼女は必死に訴えかけてきた。


「どうして?」


 私は思わず口を挟んだ。

 実力以上のダンジョンに入るとは命知らずだ。そこまでする理由を聞きたくなった。


「それは……」


 アルビエールが答えに迷っている様子で、ロウは彼女を無視し、私にだけ聞こえるような小声で言った。


「厄介なことになる前に、早く離れよう」


 私が同意しかけたときだった。


「ちょっと待ちなさい! 実は私は有名動画配信者で、剣姫アルビエールとは私のことなんだから!」


 そうだったの? 私、動画はあまり見ないから知らなかったなぁ。

 ロウは半目になった。


「だからなんだ?」


 私たちの反応の薄さに、アルビエールは眉を吊り上げる。


「な……! 私の動画はたくさんの人が待っているのよ! ……実は、次回予告でダンジョン攻略するって言っちゃったのよね。そうだ……」


 アルビエールは一人、何かを思いついたようで、怪しい笑顔を浮かべた。


「今からカメラを回して、Aランクの冒険者が尻尾を巻いて逃げたと配信してもいいのよ!」


 その瞬間、二人の男たちは素早く反応して、カメラを回し始めた。


 私とロウが配信で流れる?

 しかも、ロウ……大魔法使いさまが尻尾を巻いて逃げた?

 そんな噂が流れるのは、彼の名誉のためにも断固阻止したい。


 私とロウが顔を見合わせると、彼はため息を吐いた。


「ロザリー、どうする?」


「……協力してあげようかな」


 私の返事に、アルビエールは満足そうに笑った。


「そうこなくちゃね。さあ、早く中に入りましょう!」


 ダンジョンの入口の門番に、二人分のAランクのバッチを見せると、私たちは通過を許された。

 アルビエールたちも、私たちのパーティに加わってダンジョンに入った。


 

 ◇


 

 ダンジョンの中は暗く、湿気が漂っていた。狭い通路を進むと、壁から不気味な声が聞こえてきた。

 そんな中、後ろからは意気揚々とした声が。


「今、剣姫アルビエールは上級ダンジョンに潜入しているわ!」


 連れの男性二人はカメラと照明をそれぞれ担当。

 うるさい。

 やっぱり、一緒にダンジョンに入るんじゃなかったかな……。


「これからどんなモンスターが現れるのか、とても楽しみだわ♪」


 アルビエールがカメラに向かって笑った。

 と、そのときだった。

 ロウがふと立ち止まり、辺りを見回した。


「どうしたの?」

「ロザリー、敵だ」


 ロウは警戒態勢に入るが、私には何も聞こえない。

 しかし、しばらく耳を澄ませると、確かに何かが這うような音が聞こえてきた。

 そして、それは姿を現した。


「ひっ……」


 私は異様な見た目に、思わず息を呑んだ。

 目の前に現れたのは巨大な蛇だった。その体は通路の天井すれすれまである。


「みんな見て! 私の華麗な戦いぶりを!」


 アルビエールが無謀にも前に躍り出た、その瞬間。


 蛇が口を大きく開き、その口から紫色の霧状の液体が噴き出した。それは瞬く間にアルビエールに襲い掛かった。


「危ない!」


 私は思わず叫んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >少数民族が何かの儀式に使うような顎と額が長い木彫りのお面を着けているため 国によっては多数民族がそういう仮面をしている場合もあると思うのです。 そんでもって……動画配信なんて概念がこの世…
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