表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第三部 竜の棲む村編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/98

68 たどり着いた先は

 私の顔を覗き込んでいたのは、ドジョウだった。

 ドジョウがしゃべった⁉︎

 

 そこにいるのが人間だと思いたかった。

 けれど、黒い艶々とした目と目が離れていて、ガウンの袖口から見える手のようなヒレは魚類特有の光沢感があった。

 さらに違和感が。私の背丈よりも頭一つ高くて、ドジョウにしては大き過ぎる。


 湖の水が襲いかかってきて、私はそこで意識が無くなった。

 ……ということは、ここは湖の中⁉︎

 海藻の敷き詰められたベッドで寝かせられていた。背中は柔らかく、少しひんやりとして気持ちいい。


「お嬢さま、お具合は大丈夫でしょうか?」


 再度そう尋ねられて、体を起こして返事をしようとすると、コポコポと口から水泡が出てきた。

 目の前に広がっているのは水で満たされた部屋。ということは……。

 い、息ができない……!


「落ち着いてください。ここは水の中ですが、そのまま息ができるはずです」


 私が慌てたのを見て、ドジョウが優しく声をかけてくれる。

 言われた通りに呼吸をすると、空気は薄い感じがするけれど少し気分が落ち着いてきた。


「た、助かったわ……」


「良かったです。お嬢さまが着ていた衣装は、ここでは水を含んで動きづらくなってしまうため、私が着替えをさせていただきました」


 そう言われて初めて、私の着せられた服がドジョウの服と似ていることに気づく。

 ガウンは胸の下で紐結びされ、さらに上に別のガウンを羽織っていた。

 さっきまで着ていたスイリュ村の民族衣装は、丁寧に折りたたまれて、ベッドの脇に置いてあった。

 

「あなたが私のお世話をしてくれたのね。ありがとう」


「いいえ。大事なお客さまと伺っておりまして、当然のことをしたまででございます」


 大事なお客さま――どうやら歓迎されているようね。


 そういえば……と、手で頭を押さえる。

 あった。体の一部となっていた黒いカチューシャがそこにあってホッとした。


 濁流に飲み込まれても、このカチューシャだけは取れなくて良かったわ。

 

 安心した私は、丁寧に応対してくれるドジョウに尋ねる。

 

「そのお客さまは私だけ? 他に一緒に来た人はいなかったかな?」

 

 もしかしたら、ロウもこの場所に来ているかもしれない。

 しかし、その期待は外れた。


「この場所に招かれたのは、お嬢さまだけだと聞いています。他の人間さまはお越しになっていません」


「そうですか……」

 

 残念だ。妖精リアの気配もないから、本当に私一人だけがここにやってきたんだわ。

 

 話すたびに揺れるドジョウのヒゲを見ながら思う。

 私はどなたの大事なお客さまなのかしら?

 

 ここが竜の棲む湖だとしたら、本当に……?


「竜神さまを呼んで参りますので、少々お待ちください」

「はい……」

 

 ドジョウはするりと、この部屋の海藻ののれんをくぐり出て行った。

 やっぱり、この湖の主である竜神さまだった!

 憧れの竜神さまに会えてしまうの?

 

 だけど、湖の外でロウが心配しているかもしれない。

 早く地上へ戻りたいと思う心と、竜神さまに会ってみたい好奇心がせめぎあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シーサーペントのタイプの一つにスーパーウナギというモノがある。なのでドジョウが竜と言われててもおかしくない(ぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ