表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第二部 修道院潜入編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/98

54 黒幕の弱点に気づく

 第一王子が先手必勝とばかりに駆けて行って、剣を振りかぶった。

 ところが、ネアちゃんは剣筋が見えるのか、軽い足のステップで攻撃を避けた。

 

 それに続く修道院長は、隠し持っていた神官の武器であるメイスで打撃攻撃をした。これもクルッと回るだけで避けられてしまう。嘲笑ってくる余裕さえ見えた。

 

 この二人と私で上級の魔物討伐のパーティを組めるくらい十分に強いはずだが、肝心な攻撃が当たらない。

 

「フン! 生ぬるい攻撃だな。我は軽く避けているだけだ。このままではお前たちが魔力切れしたところに、我がトドメを指すことになるだろう。……お前たちに良いことを教えてやろう。我には物理攻撃が効かぬ。なにしろ最強の魔獣だからな」


 物理攻撃が効かないと言えば、私たちが絶望感から戦意喪失すると踏んだらしい。ネアちゃんはわざわざそれを教えてくれた。実際のところも事実なのだろう。

 でも、その手には乗らないわ! 鎖に繋がれて身動きのできないロウに危害があっては困るから、足止めをするためにも攻撃はしないとね。


「シャインアロウ!」


 私の手から光の矢が放たれる。

 ところが、地面に矢が突き刺さるだけで、攻撃を避けられてしまった。やはり、闇雲に攻撃するのは効果がない。

 でも、最強の魔獣とはいえ、何かしらの弱点があるはずだ。

 きっと勝機はある。

 

 ネアちゃんの邪悪な気が辺りに漂っているから、浄化の魔法をかけながら戦っていた。そうしないと、息を吸うだけでも苦しいから。

 戦いの様子を俯瞰して見る癖も、勇者パーティで体得した。

 そのおかげで、私はネアちゃんの弱点に気づいてしまった。

 

 戦いの最中にやけに右手を庇っていたのだ。まるで、浄化魔法からその右手を守るように。

 それはソニアがジャラジャラと付けていた魔道具の一つの指輪。修道女になっても、指輪だけは外せなかったらしい。今は魔道具としては機能していないが……。


 もしかして、魔獣の核となるものが、指輪に宿っているのでは……?


「……私、ネアちゃんの弱点が分かったわ!」

「何を言うか! 我に弱点などない!」


 私のハッタリに、ネアちゃんは強気にそう言い張ってくる。それは本当かしらね?

 

「さっき、ネアちゃんが『物理攻撃は効かない』とご丁寧に教えてくれたじゃない。それじゃあ、物理攻撃でなきゃ効くものもあるんでしょ? ……例えば、浄化魔法とか」


 最後の言葉をゆっくりと言って様子を窺う。

 ネアちゃんは一瞬だけど、ギョッと目を見開いた。ヤバいって顔だね。あ、わかりやす!

 すぐに澄まし顔に戻ったけれど、決定的瞬間はしっかりと見た!


「……さすが、ロザリーだな」


 牢屋の中で、戦いの様子を見ていたロウがそう言ってくれた。

 彼も私と同じことに気づいたようだ。


『さすがご主人さまです!』


 妖精リアは喜んで周囲を旋回して飛ぶ。

 

「ソニアの自慢の指輪、どす黒くなっているわ。私が綺麗に汚れを取ってあげるわね」

 

 そう言って、私がニッコリと笑いかけると、ネアちゃんはサッと左手で指輪を隠した。

 

「待て! 我に構うな!」

 

 慌てる様子に、ははーん。さては図星ね。私はさらにニヤリと笑った。

 

「待てと言われて、素直に待つはずないでしょ? 浄化魔法――ホワイト・ピュリフィケーション!」

 

 私はソニアの指輪に向けて、容赦無く浄化魔法を放った。


 見事に命中。指輪の宝石部分にピシッと亀裂が入る。粉砕まではいかなかったが、ネアちゃんから発される邪気の量が少し減った。効果あり。やはり、指輪が弱点のようだ。

 

「動くでない! この娘の体がどうなっても知らぬぞ!」


 短剣の先を自身のソニアの首元に向けたのだ。不利を悟ったネアちゃんがソニアを囮にして、脅して来た。

 

 私たちは動きを止める。下手に動いたら、ソニアの首が斬られて死んでしまう。

 ネアちゃんはソニアの体を使っているだけで、彼女自身がどうなろうと知ったこっちゃないのだろう。

 

「この体が死ねば、また新しい宿主を見つけて蘇る。この体は色々と都合が良かったが、我は大して困りはせぬ」

「そうはさせないわ!」


 これ以上、野放しにはできない。次の犠牲者が出る前に必ず捕まえる。これでけりを付けなくては。


 どうする? 大ピンチをどうやって切り抜ける?

 一瞬で深く考えた私が導き出した答えは……。


「ソニア。あなたの聖女の力はなくなったわ。だけど心まで魔獣に渡すつもり?」

 

 その瞬間、ネアちゃんは顔を歪めた。

 短剣を持つ手には、細かい震えが走っている。

 

「耳を貸すな! あの女の言うことなど聞かなくていい」

 

 おや。ということは。物理攻撃だけではなく、説得すればソニアを引きずり出せる?


 短剣の位置は首元のまま変わらなかったが、どこからか短剣を下ろす力に反発していた。

 どうやら、ネアちゃんとソニアの意志が葛藤しているようだ。

 

「ソニアがどうなろうが知ったこっちゃないけれど、ここまで落ちぶれているのを見せつけられるのは不快だわ」

「う、うるさい!」


 内なるソニアに向けて叫んだ。

 

「帰って来なさい、ソニア!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こ、これは(;゜Д゜) 魔獣の力を持ったまま人格が戻ってくる的な(違
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ