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【完結】勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。  作者: 八木愛里
第二部 修道院潜入編

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45/98

45 王女さまが駆けつけてくる

「王女殿下がお見えですが、リビングルームにお通ししてもよろしいでしょうか」

 

 ロウが去ってから少し経つと、サラから次なる来訪者の案内があった。

 王女さまは私を心配して駆けつけてくれたのだろう。

 こんな豪華な部屋に住まわしてもらって、大魔法使いさまだけでなく、王女さまも来てくれるとは。まるで深窓のお姫さまにでもなった気分だ。

 

「いいわ。お通ししてください」

「承知いたしました」


 私がリビングルームの扉を開けると、ソファに座っていた王女さまと目が合う。と、立ち上がり、早足で駆け寄ってきた。

 

「ロザリー! 無事だった?」

「え、ええ……」


 むぎゅうと背中に手を回されて抱き付かれた。王女のふわふわした金髪からは、スズランのコロンの良い匂いがした。

 しばらくそうしたままで、体を離した王女さまの瞳は涙ぐんでいた。

 

「地下牢に入れられたって聞いたわ! ルイお兄さまの馬鹿馬鹿! 私の命の恩人になんて酷いことをするのよ! 例外は認められないとか、頭の堅いこと言ってたわ! 本当にありえない! ロザリー、大丈夫だった?」

 

 王女さまは悔しいとばかりに、猛烈に捲し立てた。私は彼女のあまりの剣幕に圧倒されてしまった。でも、私のために怒ってくれてるんだものね。感謝しなきゃ。

 

「王女さまの気持ちはよくわかったわ。私は大丈夫よ。事情を聞きつけた大魔法使いさまが、すぐにこの部屋に変えてくれたもの」

「ロザリーは優しすぎるわ! 私だったら耐えられない! 大魔法使いさまが調査を終えられて、ロザリーの無実を晴らしたら、ルイお兄さまを絶対に許さないんだから!」


 王女さまは私の身に何が起こったのか、詳しく知っているようだ。ロウが調査に出かけたことも知っているようだし。

 

「そもそも、私はロザリーが殺人をしたとは思えないわ!」

「……信じてもらえるのは嬉しいけれど、なぜそう思うの?」

 

 味方になってくれるのは心強いけれど、彼女がやけに自信満々だったのでその理由を知りたくなった。

 

「それは勘よ!」 


 あ……根拠のない強気な発言来た! 味方がいるのは心強いけど……ね?

 

 立ち話も疲れるので、王女さまにソファを勧める。私もローテーブルの向かいの席に座った。

 

 サラが出してくれた紅茶と茶菓子を「とりあえずいただきましょう」と促して、王女さまが焼菓子を口に含むと落ち着いたようだった。

 紅茶を一口飲んだ王女さまは、何やら浮かない顔で話し始める。


「公にはなっていないんだけど、誰かに聞いてもらいたかったからロザリーには話すわ。……私の縁談が纏まりつつあるんですって。今までの、大魔法使いが大好きな王女のままではいられなくなったの」


 マグナルツォ王国の唯一の王女で、十八才という結婚にふさわしい妙齢。むしろ、王族にしてはこれまで婚約者がいないのは珍しいくらいだった。王侯貴族は幼少期から婚約者が決められることの方が多い。


「そう、だったんですか……」

「だから、大魔法使いさまの一番のファンの座はロザリーに譲るわ」

 

 決意のこもった瞳で見つめられた。寂しさを感じさせる瞳。

 私は言葉を失った。そんな私の反応に、王女さまは顔をムッとさせる。


「ちょっと、黙り込んじゃって! 譲るって言っているのだから、素直に喜びなさいよ!」

「は、はい。ありがとうございます」

「ロザリーまで悲しまないでくれる? 私が可哀想な子みたいじゃない。そんな日がいつか来るとわかっていたけど、それが現実になっただけなんだから……」


 王女さまは遠い目をして、そう自分に言い聞かせるように呟いた。

 覚悟していたけれど、現実を受け止めようとしているのだろう。


「冒険者として好きなことができて、大魔法使いさまの近くにいられるロザリーがとても羨ましいわ」


 それは彼女の本心で、王女さまの務めを果たすには、どちらも難しいことだ。

 返答に困っていると、王女さまが暗い話は終わりとばかりに、パンッと手を叩いた。

 

「ところで、やっと大魔法使いさまの正体に気づいたって聞いたわ。ファンのくせに気づくのが遅いこと!」


 急にその話をぶっ込んで来る?

 図星すぎて、胃のあたりがチクチクと刺さる。

 

「……自分でもそう思っているわ」

「よく反省するといいわ!」 

「王女さまから言われなくても反省しているわ!」


 これもわかりきっていることだ。

 ムッとして言い返す。

 それには、さらなる追撃が……。


「ロザリーは反省が足りないのよ!」

「……わ、わかっているわ!」

「あなたが大魔法使いさまの一番のファンだからね? 私の目も厳しくなるわよ!」

「王女さまが勝手に譲った――」

「私だって譲りたくて譲ったんじゃないわ! ああ悔しい!」

 

 そう言い切られると、押される形で「努力します……」と返事したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ようは、アホの子だから精進しろといいたいのね(ォィ
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