2人目の攻略キャラは、天使。
【登場人物】
《アイリス》
・主人公
・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。
《リエラ》
・乙女ゲームのヒロイン
・フェドートとゴールインした。
《フェドート》
・乙女ゲームの攻略対象の豪商の次男
・リエラとゴールインした。
《ルーカス》
・乙女ゲームの攻略対象の王太子
・リエラが友情度しか上げてなかったので親友だと認識している。
《カリナ・スタードール》
・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢
・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。
警備の厳しい王宮も、世界を救った救世主の1人で、王太子の親しいご友人ともなれば、最低限のチェックを受ければ、ほとんど顔パスで歩ける。
(ほとんど、ついてっただけの私にこの待遇は心苦しい気もするけどね)
もちろん、ルーカスが忙しいので、約束なしではそうそう会えないが、それでも貧乏伯爵家の生まれで、案内役なしで歩ける程の信頼と内部の把握出来る程に行き来できてるのは破格である。
そんなことを考えながら、アイリスは、いくつか目の角を曲がる。
そうすれば、宮殿の入り口が目に入る。
「話、終わったの」
「うわ!?」
柱の影からかけられた声にアイリスは、飛び上がりそうに驚く。
何事かと入り口の護衛達がこちらを見るので、恥ずかしさに赤くなりながら、誤魔化すように左手を振って、なんでもないとアピールする。
そうすれば、遠目にも赤くなった顔を右手で覆った少女とその横に立つ少年の組み合わせに、驚いただけか、と納得した護衛達は、また外への警備へ視線を戻す。
「びっくりさせないでよ。ネイト」
「…別に、驚かせる気とかなかったし」
ネイト。
ネイト・マーヴェン。
小麦畑のような濃い金髪に、星々に照らされたキラキラと明るい夜空のような瞳は、大きいが切れ長のツリ目だから、顔中央にパーツの集約された童顔のわりに実は可愛い系ではないはずなのに、一つに結ばれた口とつり上がった眉が駄々をこねている子供のように感じさせるから不思議と愛嬌のある天使のような顔立ちの美少年。
彼もまた、『癒しのSacred Song』の攻略対象の1人。
2つ年下の強力な神力を自在に操る次期神官長の天才少年で、神殿の事情で飛び級でヒロインと同級生になる。
(いわゆる年下枠ですね!!)
「で?もう用事は終わったの」
「待っててくれたの?」
「別に!僕も用事あっただけだし!!」
「そっか〜!!!!」
「ちょっと!そのニヤけた顔やめてよ!!」
キッと睨んでくるが、ツンデレ年下好きのネイト最推しだったアイリスからすれば、可愛い〜〜〜〜〜!!!!!!という感想しかない。
最初は冷たいのに、仲良くなるとぶっきらぼうに心配性になるのが、アイリスの胸きゅんポイントである。
(あとね、社会人になってから『貴方の為を思って言ってんだから!』って怒られ過ぎて、『貴方の為』が地雷だから、ツンデレの結果、それを絶対言わない安心感も好き!!!)
今日だって、お茶会に行く途中に会った時に「この後の用事はない」って言ってたのに、「王宮で用事があった!!」って言い張ってるのが本当に可愛いとニヨニヨしてしまう。
(仲良くなると嘘が下手になるのって可愛くない??天使かな????)
「〜〜〜〜〜っっ!!!!
とりあえず、もう用事終わったなら帰るよ!」
「お、おう、そうだね」
バッと奪われたハンカチなんかが入ってる小さなバックにびっくりしつつも、前を歩くネイトの後を追う。
「送ってくれるの?」
「感謝してよね」
「お〜、ありがとう!」
「フンッ」
プイッとそっぽを向いて、顔は見えなくなったが、髪の隙間から見える耳は赤い。
(色白だから分かりやす!!きゃわわ!!!)
照れ隠しに早くなっていた足も、気が付けば、アイリスに合わせてゆっくりになっている。
(まっ、合わせた気はないかもだけどね)
ネイトは、年下枠なのもあって、身長は攻略キャラの中で一番低い。
乙女ゲームの1年目だと147㎝と158㎝のヒロイン・リエラよりも低く、3年目でも164㎝なので、162㎝あるアイリスとは、2㎝しか変わらない。
なので、合わせる気がなくても歩幅が合ってる可能性も高い。
「で?話し合いの結果、どうなったの」
「ん〜、やっぱりすれ違ってるってか、スタードール侯爵令嬢が空回りしてるっぽいから、侍女になってフォローすることにしたよ」
「ふ〜ん」
聞いてきたわりに興味なさげな返事にアイリスは、苦笑する。
巫覡は、加護を与えてくれる神によって性格に偏りが出やすい。
神の好みというやつだ。
その中でも強力な能力を得られる自然と奇跡の神・ラディルムの巫覡は、『無関心』という側面が強く出る。
別に慈愛の心がない訳ではなし、人を救うのを自分の仕事だと認識しているが、強い同情心を抱くことは少ない。
それは、大きな力を得ることによって、救えなかった人々への罪悪感で心壊すことがないように、というラディルムの慈悲だと言われている。
なので、今回聞いてきたのも大方、数少ない愛着を抱いているルーカスが関わっているからだろうし、大きな進展がなかったので、興味を抱けなかったのだろうとアイリスは、苦笑する。
「他には?」
「他?」
「ルーカスになんか言われたりしてない…」
「んー、別に…、あっ!そういえば、ドレスと宝石の話しかしないスタードール侯爵令嬢にかなり腹を据えてたらしくて、『僕の部屋で話す?』って言われた!
あれ、今思い出してもホントムカつく!!!!」
「はあぁぁぁあぁああああ!!!!?????」
「ね!ムカつくよね!」
「はっ!?まさか行ってないよね!?!?」
「おおっ…」
ガバッ!と勢い良く掴んで来たネイトの反応に驚きつつも、
(まあ、そこまでルーカスが不機嫌になるのも珍しいもんね)
と一人納得したアイリスは、安心させるためにへらりと笑う。
「まさか!ただの冗談だしね。行くわけないよ。普通に応接室仮で話してたし。
それに、私達、良縁と結婚の巫覡がそういう不義理嫌いなの知ってるでしょ?」
「…まあ、そうだね…。
じゃあ、何もなかったんだよね?」
「ないない!
応接室には、ちゃんと侍従も女官も居たし、何かある訳ないでしょ?私とルーカスだよ?」
「ならいいけど…」
「心配してくれて、ありがとう」
「ちょっと!!頭撫でようとしないで!!」
「いいではないか〜!いいではないか〜!」
「よくない!!」
撫でられそうになる頭を手で守りながら逃げるネイトを追いかけながら、アイリスは、良縁と結婚の巫覡が、『部屋に呼ぶ』という婚約者持ちのルーカスがやれば、『不倫のお誘い』になるそれを冗談でも受けた時の不快感を理解して、心配してくれるネイトにほっこりしてしまう。
(身内認定すると一気に甘々になるネイトきゅんカワよ!!!!!)
だから、そう思いながらニヤけるアイリスは、気付かない。
(ルーカスのバカ絶対に許さない!!!!!あとで絶対文句言ってやる!!!!)
そう、ネイトが心に誓っていることに…。
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