リエラの事情
【登場人物】
《アイリス》
・主人公
・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。
《リエラ》
・乙女ゲームのヒロイン
・フェドートとゴールインした。
《フェドート》
・乙女ゲームの攻略対象の豪商の次男
・リエラとゴールインした。
《ルーカス》
・乙女ゲームの攻略対象の王太子
・リエラが友情度しか上げてなかったので親友だと認識している。
《カリナ・スタードール》
・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢
・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。
「リ〜エラ!」
「ヒェッ」
トイレに行くとリエラを連れて抜け出したアイリスは、壁ドンでリエラを追い詰める。
「随分とスタードール侯爵令嬢のこと気にするじゃん」
リエラがいくらヒロイン然としたお人好しな女の子だろうが、普通ならここまで気にはしない。
「そっか、大変だね…」とルーカスに同情したり、「何か出来ることある?」とか「私も仲良くしてみるよ」と提案することはあっても、あそこまで押し強く、本職のアイリスを引き出すような真似は本来する子ではないのだ。
「ぅ…、」
言いづらそうにリエラは、目を逸らすが、アイリスはなんとなく察していた。
「2ヶ月くらい前にスタードール侯爵令嬢にアドバイスを聞かれたんだけど、もしかして、リエラが勧めたの?」
そう、カリナは同性から人気が高いが、当然全ての学生と親しいわけではなく、カリナとアイリスは、お互いに存在は認識していても、挨拶程度しかしない関係性で、いくらアイリスが良縁と結婚の女神の聖巫だとしても、アドバイスを求められる程の信頼関係などないはずだった。
「ゔ…、はい…」
隠しきれないと思ったのか、罪悪感に負けたのか、リエラは、そっと頷いた。
「リエラとスタードール侯爵令嬢ってそんな仲良かったっけ?」
それは純粋な疑問だった。
高位貴族のカリナの周りには、常に貴族令嬢が取り巻いていて、いくら特待生とはいえ、平民のリエラが簡単に近付ける存在ではないのだ。
「…学生時代に女生徒に絡まれたことあるの覚えてる?」
「もちろん」
それは、ゲームの中ではスチルの一つだった。
ルーカスが仲間に入ると開放されるスチルで、「調子乗ってんじゃないわよ!」ってモブ女子数名に絡まれた所をルーカスが颯爽と助けてくれるのだ。
(アレは、マジイケメン)
肩を抱き寄せ、冷たい顔でモブ女子を見下すのだ。
(まっ、恋愛ルート確定で貰えるスチルじゃないから甘くはないけどね)
どちらかといえば、その後の普段との優しいギャップに驚いているヒロインに「ごめん…、驚いたよね?…こういうぼは怖いかな…?」という問いかけへの答えの方が好感度上げるための重要な選択肢だった。
ついでに、「ううん、怖くないよ。だって私の為に怒ってくれたの分かってるから!」がラブ度、「…ちょっとだけね。でも新しい一面が見れて嬉しい!それが素?」が友情度、「ッ、ち、近づかないで!!」で両方下がるし、下手したら仲間から外れる可能性もあるクソ選択肢である。
(もちろん、リエラは、「ちょっとだけね」を選択してる。ラブ度は、上げないけど、友情度は確実に上げてくるヒロイン強過ぎる)
おかげで封印が楽だった。とアイリスは数ヶ月前を振り返る。
「その場は、ルーカスがとりなしてくれたけど、私よりも身分の高いクラスメイトでしょ…」
「あ〜、うん、そうね…」
乙女ゲーム内なら、ただのモブだが、現実は生きているし、クラスメイトだったし、貧乏伯爵家のアイリスには大した権力はないので、生活していく上では中々やりづらい話だ。
「女子同士の話に男性が入っても、ねぇ?」
「まあ、そうだよね。原因そいつらだし」
絡まれた原因自体がイケメン有能男子と仲良くなった事なので、イケメン有能男子がでしゃばれば、でしゃばるほど反感を買うこの厄介さ。
「それをなんとかしてくれたのがカリナ様なの!!どうしても恩を返したくて!
私が好きな人と婚約するのを羨ましいって言うから、アイリスに沢山アドバイスしてもらったことを話しちゃったの…、ごめんね。勝手に…」
「あ〜、うん、まあ、それは仕方ないね」
ギュッと罪悪感にくれる顔で俯くリエラだが、実際は大したことしてないな。流石ヒロインと言うのがアイリスの感想だった。
(要するに、どっかですれ違って立ち話する中で、カリナ様がリエラを祝って、その話の流れで私が出て来たから、カリナ様は私にアドバイスを求めてきたってだけか)
だが、乙女ゲームのヒロインじゃないカリナは、アイリスのアドバイスに斜め45度を突っ走り、ルーカスからの好感度を地に下げた。
「私がフェドートと好き合えたのは、アイリスのおかげだから。ルーカスもカリナ様も私にとったら大切な人で、幸せになって欲しかったの…。
でも、だからって、アイリスに事前に説明してお願いせずに言い出すなんて我儘だったよね。ごめんなさい」
(そして私への信頼度の高さ〜!!!!)
懺悔するように手を組むリエラだが、それがリエラの優しさとアイリスへの信頼から来るものだと思えば嫌な気はしなかった。
(反省はしてるし、良縁と結婚の女神の聖巫である以上、本人達が変わり、結婚による幸福を得たいと望むなら、最善を尽くすのが仕事だしね)
実際、自分の結婚の準備を後回しにして、人々の生活を守る為に国内を浄化して回っているリエラの親友として、怠けた真似は出来ないという気持ちもあるのだ。
「分かった。改めて引き受けるよ。
ただ、私が出来るのはアドバイスだけ。自分を変えて、幸せな結婚を掴めるかは本人達次第だからね」
「もちろん!!ありがとう!!」
そう言って嬉しそうに抱きついてくるリエラに呆れつつも、アイリスは、大切で可愛らしい優しい親友の背に手を回した。
自然とこぼれ落ちた笑みには本人さえも気付かなかった。
(う〜ん、私の婚期はいつ来るかな…?)
そんなことを考えていた本人は気付かなかった。
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