ルーカスからの呼び出し。
【登場人物】
《アイリス・ラブレー》
・主人公
・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。
《ルーカス・アバンダント》
・乙女ゲームの攻略対象の王太子
・リエラが友情度しか上げてなかったので親友だと認識している。
《カリナ・スタードール》
・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢
・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。
《ネイト・マーヴェン》
・乙女ゲームのもう1人の攻略キャラ
・所謂、ツンデレ年下枠の次期神官長
「で、どういうこと?」
4日ぶり2回目の尋問です。とアイリスは、遠い目をする。
4日前にカリナの尋問後に、迎えに来たネイトから聞いたのは、ルーカスの呼び出しだった。
なので今回は、王宮にお呼ばれしてる。
「あまりにも急に変わり過ぎじゃない?何があったの」
どうやら、急に変化したカリナを疑っているらしい。
(疑い深いことで)
地位的に仕方がないと頭では理解しているとはいえ、一般人に毛が生えたレベルの名ばかり貴族のアイリスは、もっと素直に相手を信じればいいのに。とやっぱり思ってしまう。
「変わりすぎも何も、あっちが素なんだから、私はそれを引き出しただけだよ。
政治経済の本なんて知らないし、私には入れ知恵出来ないよ」
「それは知ってるよ」
「おい」
自分で言っといてなんだが、他人に満面の笑みで肯定されるとイラッとすることは得てして多い。
「わりとマイナーな本のタイトルも、本の中身の話をしても、古めな本の話をしてもついてきてたから、本人がきちんと勉強してることを疑ってはないよ」
「わざわざそんな確認してたの????」
うげぇ…、面倒臭い奴だなと言わんばかりに顔を顰めるアイリスを気にせずにルーカスは頷く。
「当然だろう?僕が求めてるのは、有能な婚約者なんだから。
読んで満足して内容を忘れる子は、僕の好みじゃない。
スタードール嬢だって、分かってるから、あえて色んな年代、著者、思想の本のタイトルを出てたわけだし」
「いつの間にそんな高度な駆け引きの会話してたの?」
「君の目の前でしてたよ」
「あの和気藹々としてた会話の中で?ホント、面倒臭いね」
「君も仮にも貴族なんだから、あれくらい見抜けないと」
ルーカスの言葉に、うげぇっと舌を出してそっぽ向いて嫌そうな顔をしたアイリスにルーカスは、苦笑する。
「そんなんばっかしてたら、人間不信になりそう」
「まあ、信じる人は選ぶようになるかな」
「だろうね。
あっ、そうだ。一応、警告ね。スタードール侯爵令嬢、私とルーカスとの関係ちょっと疑ってたから、距離感は気を付けて」
「君と僕が???
僕は頭の良い子好きだから、単細胞はちょっと…、」
「おいコラ!!私が振られた風にするのやめてもらえる!?
次聞かれたら、私の好きなタイプは、私のこと単細胞って言わない人って言うからな!!!」
わざとらしく眉を下げて、露骨に申し訳なさげな顔をするとルーカスに、アイリスもわざとらしく、机を叩いて勢いよく椅子から立ち上がり、怒ってる風にルーカスを指差して宣言する。
(こんな色気のイもねぇ関係で、惚れた腫れたなんてありえないんだけどねぇ…)
だが、男女が仲良いと、本人達の認識関係なく、恋愛に結びつけたがるのは、前世と変わらないから致し方ない。
心は見えないのだから。
「ルーカス」
「あー、はいはい」
そんな二人のじゃれあいを止めたのは、ゆったりと紅茶を飲んでいたネイトだ。
眉を顰めて名前を呼んだネイトに、ルーカスは、微笑ましげに苦笑して、肩をすくめる。
何故か神殿で仕事しているネイト伝いで、王宮にいるルーカスの呼び出しを聞いたアイリスは、真っ先にカリナの誤解を気にした。
これから先どれ程の頻度で呼ばれるか分からないが、仕事の為とはいえ、親しい女友達が頻繁に呼ばれれば、面白くないのは確実。
そうなれば、自分の侍女としての仕事にも、聖巫としての仕事にも支障をきたしかねないので、1人で行くのは避けたいと悩むアイリスに、ネイトが「…ついて行こうか?」と声をかけてくれたので、天の助け!!と飛びついたのだ。
「じゃあ、話を戻そうか。
スタードール嬢の変化が素だとすると、何故今まで偽っていたの?
やっぱり、僕との婚約が不満で?」
別れ際に寂しがってくれていたので、嫌われているとは思えないが、どうしてもルーカスの好みと反対のことをしていた事実が気になるのだ。
そんなルーカスの疑念にアイリスは、苦笑する。
「いや、…まあ、男慣れしてないのと、ルーカスの好みが特殊なせいかな」
「ん?」
「笑顔が怖い!!事実じゃん!!頭の良い女性が好きなんて少数派でしょうが!!!」
ニッコリ笑顔と穏やかな声で首を傾げてくるくせに、目が笑ってなく、威圧感まで醸し出す無駄に器用なルーカスの所業に、アイリスは必死に反論する。
「だから、スタードール侯爵令嬢は、“一般的な”好みに合わせて演技してたってわけ」
「はあ…、僕からしたら、夫が若くして亡くなって、子が幼くて乗っ取られたり、追い出されたり、没落してる家があるのを知ってて、自己陶酔のために家を任せられない女性と結婚したいって感覚の方が理解出来ないよ。
国単位でそんなことになったら、最悪じゃないか。
どれだけの国民が死ぬことか…。想像するだけでゾッとする…」
顔を顰めてそう吐き捨てるルーカスは、どこまでも頼りになる王太子だと、国民としてアイリスは、頼もしく思う。
「彼女の態度の淡白さが、男性慣れしてないのが原因なのは理解したし、男性の一般的な趣味に合わせようとしたのも理解したけど、それにしてもあまりにも個を殺し過ぎじゃない?
今までの彼女は、まるでお人形のようだったよ」
綺麗に取り繕われた言葉に態度は、いつだって美しい彼女を引き立てていたが、美しいドール人形に心を奪われないように、ルーカスの心にさざ波一つ起こさなかった。
(そんなものよりも、)
何度も見た作りこまれた美しい笑顔よりも、前日初めて見たアイリスに嘘を暴かれて涙を浮かべた瞳と、否定されることもなく政治経済の本で盛り上がっていた時の嬉しそうな笑顔、最後の、常に余裕を感じさせるたおやかな笑みを浮かべる顔が真っ赤に染って、わたわたしてるさまの方がルーカスの心を惹き付けてやまなかった。
(ああ、僕も存外単純な男だな…)
そう、自分の単純さに小さく苦笑する。
男慣れしていない美しい女性が、自分の前だけで変えた表情にこんなにもあっさりと惹き込まれるのだから…。
(まあ、いいさ。
どうやら彼女も僕と結婚する意思のある婚約者だ。
何一つ後ろめたいことはない)
それどころか、政略結婚の婚約者に心惹かれるなんて、世間一般的に考えて、恵まれてる素晴らしいことだ。
そんな、思い出して微笑ましく感じて、ふわりと温まり上がっていたルーカスの気分は、
「まあ、極端に演技入ったのは、育った環境がクソで自己肯定感低いせいでしょうね」
「は?」
今、地に落ちた。
前回もイイネやブクマありがとうございます!!
1話に1ブクマ達成出来るかいつもヒヤヒヤしてるので、達成出来る度に、神々(ブクマしてくれた方々)の優しさに祈りを捧げてます!!
今回短めですみません!( ´ ཫ ` )
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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