【ネイトの事情】数日前の閃き。
【登場人物】
《アイリス・ラブレー》
・主人公
・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。
《リエラ》
・乙女ゲームのヒロイン
・フェドートとゴールインした。
《フェドート・サマニエゴ》
・乙女ゲームの攻略対象の豪商の次男
・リエラとゴールインした。
《ルーカス・アバンダント》
・乙女ゲームの攻略対象の王太子
・リエラが友情度しか上げてなかったので親友だと認識している。
《カリナ・スタードール》
・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢
・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。
《ネイト・マーヴェン》
・乙女ゲームのもう1人の攻略キャラ
・所謂、ツンデレ年下枠の次期神官長
「さて、どうしたものかな…」
1人自室でネイトは、思考を巡らせる。
ルーカスの発破により、アイリスと結婚する為に動くと決めたが、
「地位が足りない…」
もちろん、ネイトじゃなくてアイリスの地位である。
「救世主の地位は足りないし…」
リエラのように聖女と呼ばれてるならまだしも、アイリスは複数いる救世主の1人。
さらにその地位はネイトがすでに持っているので、神殿を納得させるには弱い。
「はあ、結婚くらい好きにさせてよ…」
アイリスを想いを寄せるようになる前は、考えもしなかった言葉がネイトの口から溢れ出る。
神官長は、血で受け継がないとはいえ、神殿のトップである以上、結婚相手にも相応の立場が求められる。
救世主はネイトもなので必要とされず、アイリスの知り合いの権力者はネイトと共通で、国を跨いで権力を有する神官長の妻に貧乏伯爵家では見劣りする。
「あーあ、貧乏でも公爵家なら別だったのにな…」
一部の例外を除き、王家の血が入っている公爵家ならそれだけで価値は高いが、 伯爵家ではそうはいかない。
「はあ、独身は文句言われないのに」
そう、血で受け継がない神官長の結婚は絶対ではない。
結婚しないのは、「神に身も心も捧げている」とされるので、批判されないのだ。
だが、結婚するとなると、どうしても組織のトップとして、相応しい人と結婚して欲しいと周りが口出すから面倒臭くなる。
「これでもマシとか、マジでルーカス、ヤバいよね」
神殿は、一応、神の加護を持つ者と神に人生を捧げる者の集まりなので、一部の例外を除き、神に愛された、又は、敬う清廉潔白な者達ばかりなので、魑魅魍魎の蔓延る国の政に比べれば平穏なものである。
派閥も方針の違いが多く、革新派のようながめつい奴は、少数派だし、同僚から好まれないので排除もしやすい。
「アイリスの安全のためにも徹底的に排除するけど」
恋愛ごとに潔癖で、ダブルスタンダードなんてもっての外!!という矛盾を嫌う気質の良縁と結婚の巫覡らしい聖巫であるアイリスは、腹の探り合いは笑って誤魔化す最低限レベルで、実力的にも性格的にも得意としていないので、足を引っ張りそうな連中は、先に潰しておく方が安全だろうとネイトは考える。
「絶対余計なことするし」
他は、アイリスの肩書きが微妙なら渋るだけだろうが、アイツらは、結婚する気があるなら!こちらの娘の方がお似合いです!!って、自分の息のかかった者を勧めて来る上に、アイリスに圧をかける可能性が高い。
「せっかく、1度結婚に承諾してくれても、それで渋り出したらどうしてくれる気」
まだ結婚の承諾どころか、付き合ってもいないが、想像した未来の不愉快さにネイトは、その天使のような顔を顰めた。
「1、理由をつけてアイリスに頻繁に会えるようにする。
2、アイリスに結婚を許可される実績を積ませる。
3、革新派は潰す。
んー、3番が1番楽なんだよね」
思考の整理のため、紙にやることを書き出した上で、楽な3番目は置いておくとして、問題は、1番と2番である。
「リエラはアイリスに、落とすなら、とりあえず、会う回数や会話を増やせって言われてたって言うけど…、
っ、もう!学園卒業したし、職場違うし会う機会ないんだけど…!」
ネイトは、くしゅりと悔しそうな顔で悩む。
次期神官長の権限で、良縁と結婚のベテラン巫覡を呼んで相談したら、相手が良縁と結婚の聖巫なら、その子のしたアドバイスを聞くのが1番!
どうしても自分の好みがアドバイスに入るから!と言われたのだ。
だから、アイリスの現在唯一の実績であるリエラに聞いた結果が、「最初はとりあえず会う回数増やしなって言われたよ?会う回数が増えると親しみを覚えるんだって!」という、もう親しい友人ではあるので、いまさら?感はあるが、とりあえず、アイリスに会える回数が増えるとネイトが嬉しいので、取り入れることにした。
「実績もねぇ…」
聖女・リエラの結婚成立は、大きな実績といえば大きな実績だが、リエラもフェドートも、ネイトとも親しいし、巫覡として神殿に所属しているので、神殿としては有難みが少ない。
国の英雄の親友と次期国王が結婚と言っても、は??と納得されないのと同じ状況。
英雄が反抗的ならまだしも、聖女のリエラは、仕事にも精力的で、神殿も尊重してるので、繋ぎとめるための手綱はいらないのだ。
次期神官長として、組織を運営する者としては有難い、謙虚な聖女夫妻だが、今だけはちょっとだけ、「もっと我儘でいてよ!」と思わずにはいられなかった。
何よりも、アイリスが良縁と結婚の聖巫なのが厄介だ。
良縁と結婚の巫覡は、結婚に利益を求める王侯貴族や豪商達からの人気がない。
なら平民からは大人気かといえば、一部の夢見がちなお嬢さん達が信仰してくれる程度。
たまにある王侯貴族や豪商からの依頼は、妻の浮気を疑った家族や自称落胤の親子鑑定のみ。
良縁と結婚の巫覡に出自の秘密は隠せないのだ。
似たようなので、王侯貴族や平民問わず大人気の安産の巫覡は、出産前なら親子鑑定含め、全て知ることが出来るが、性別だけは絶対に伝えない。
赤ちゃん過激派が、「女の子だったって理由で、目の前でガッカリされると嬲り殺したくなる!!!」と机に包丁突き刺してブチ切れてから、神殿は安産の巫覡が、依頼者に何を伝えるかはノータッチの構えでいる。
閑話休題。
ようするに、良縁と結婚の巫覡は、親子鑑定という一瞬で終わる依頼以外で、王侯貴族と関われないので、影響力が拡大出来ないのである。
「あ…!!」
本来なら…、
そう、ネイトは思い出した。
「ルーカスからの依頼が使えるじゃん!」
現在、王侯貴族から見向きもされなかった良縁と結婚の加護は、この国の王太子から直々に依頼されている。
「相手のこと、僕、知らないし!」
ルーカスは、ネイトとも親しい戦友だが、ルーカスの婚約者であるカリナは、学園ですれ違ったことがある程度の仲なので、上手くいって、カリナがアイリスに感謝したり、それこそ仲良くなってくれれば、アイリスは、この国の王太子妃と親しい間柄となる。
「そのアドバンテージはかなり大きい…!」
悩みの中で一つの道筋が見えたことで、ネイトは嬉しさに頬を染めて喜びに笑う。
「そうだっ!!
侍女として働くなら、僕が職場まで送り迎えすればいいんだ!
アイツ、ちょっと抜けてるし、自分が仮にも救世主だって忘れて『近いし』って徒歩とかしそうだし!
僕が馬車、…いや、歩きで送ればいいんだ」
一瞬脳裏をよぎった馬車という選択肢を、一緒にいれる時間が減るなと却下して、ネイトは、そう決める。
「そうすれば、実績の進捗状況も分かるし、ピッタリだ」
ふっと、乙女ゲームの攻略対象に選ばれる美しい顔に、コロコロ変わる表情で「可愛い」と評されるその顔に、愛しい人を想う男の笑みを浮かべたのだった。
ふわぁああ!!!!!
ブクマ11!!!!1話で1つ増えた!!めっちゃ嬉しい!!ブクマして下さった方々ありがとうございます!!
イイネしてくれた人も人も、評価してくれた人もいて、前作何があったの分からないけど、とっっっっっても嬉しいです!!!!
ありがとうございます!
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