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恋はまだ始まらない。

【登場人物】

《アイリス・ラブレー》

・主人公

・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。

《リエラ》

・乙女ゲームのヒロイン

・フェドートとゴールインした。

《ルーカス・アバンダント》

・乙女ゲームの攻略対象の王太子

・リエラが友情度しか上げてなかったので親友だと認識している。

《カリナ・スタードール》

・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢

・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。

《ネイト・マーヴェン》

・乙女ゲームのもう1人の攻略キャラ

・所謂、ツンデレ年下枠の次期神官長





「そういえば、よく終わりの時間分かったね」



まだ青い空の下を歩きながら、ふと思ったことをアイリスは口に出す。



「は?」



それに何言ってんだコイツってネイトの視線が襲う。



「え?」


「何言ってんの。アイリスは、神殿から出向してる身でもあるんだから、神殿側にも労働時間の申請が来てるし、分かるに決まってるでしょ。

まあ、家を出る時間は分からないけど、初日から退勤時間を大幅に遅れる可能性は低いし、退勤時間にスタードール家のそばに居れば確実に会えるなんて分かりきった話でしょ」


「なるほど、確かに」



知らん男がやればストーカーだが、仲の良い友達が気にかけて来てくれたと思えば有難いという気持ちが湧くのだから、関係性って大事だよな。と思いつつ、アイリスは頷く。



「そうしたら伯爵令嬢が徒歩でしょ。ふざけないでよ」


「私が基本徒歩移動なの知ってるじゃん」


「知ってるから、まさかと思って来たら、案の定だった時の僕の気持ち考えてくれる」


「えー、前からそうだったし、今更じゃない?」


「今更じゃない。僕達、魔神を封じた救世主なの。分かってる?」


「救世主って言っても、私、付いてっただけだから、何も出来ないよ?」


「その肩書きが大事なの」


「あ〜…」



ネイトの言葉に、婚活パーティーで声をかけてくれる男性陣を思い出してアイリスは、苦笑する。



「うん、そりゃそうだ。危機感足んなかったわ…。ありがとう、気を付けるね」


「そうしてくれる」



満足気に頷くネイトの有難い忠告に、どうせサポートキャラだし、と自分の立場を軽視してたことをアイリスは自覚する。



(どこの世界にも、物事を金と権力と暴力で片付けようとするクソは居るし、気を付けなきゃな…)



ヒロインが選り取りみどりの中、ヒロインの親友としてそばに居るのに、イケメン攻略キャラの誰とも恋に落ちないのが、乙女ゲームのサポートキャラ。

まあ、アニメ化されるレベルで人気になれば、カップリング厨が二次創作でくっつけるが、まあ、それは別として。



(だからなんか、男性の恋愛対象になるって感覚がないんだよね)



まあ、アイリスの肩書きが愛されることを“恋愛対象になった”と言っていいかは、若干微妙ではあるが。


だが、だからこそ、そのネイトの優しさがこそばゆくて、嬉しさに緩む口元をもにょもにょさせて誤魔化す。



「それで?

出向はどうだったの?上手くいきそう?」



ネイトのその言葉にアイリスは、ハッとする。



(あっ、そっちがメインか)



毎日の送り迎えなんて申し訳ないと思っていたが、



(ルーカスに懐いてるもんね)



どうやら、アイリスが思う以上に、ネイトは、ルーカスの結婚を気にかけていたらしい。



(心配して来てくれてたと思ったのにな〜!)



まあ、心配も嘘ではないだろうが、進行報告を聞くついでに心配だし、体鈍らないように送り迎えしてあげようという、一石二鳥どころか、三鳥の話だったらしい。



(なら、最初に断って手間かけさせて悪かったかな)

「ん、わりと順調そう」


「へー、意外。ルーカスの腹の据え具合からもう少し複雑だと思ってたけど、そうでもないんだ」


「まあ、根本的に2人とも政略結婚すること自体は受け入れてるからね。

変わる努力するなら、私はその努力の方向性を正しい方向に向けるだけだし。

反対に、変わる気のない人はお手上げなんだけどね〜」


「変わる気ないヤツ変えるのは、洗脳じゃん」


「ホントそれ〜!

明日は、ルーカスが遊びに来るらしいから、その間を取り持つ予定」


「早くない?」


「後回しにしても、ね?

それに、変に私の入れ知恵って勘繰りながらになるよりも、早々にちゃんとスタードール侯爵令嬢にも変わる気ありますよ!って伝えといた方がいいかなって」


「ああ…、ルーカス疑い深いから」


「立場柄仕方ないんだけどね」



お互いに何が相手の真実か分からなくなるのは、長い結婚生活上よろしくない。というのが、アイリスの考えだ。



(特にスタードール侯爵令嬢は、かなり自分を偽っていたしね)



最初の印象がそうなっている以上、アイリスがカリナの真実の姿を引き出しても、ルーカスが、アイリスがカリナを自分の好みに添わせただけと解釈する可能性もある。



(偽りだと思ってる姿に心許し人は居ないだろうしね)



それが今回の1番のアイリスの懸念事項だったのだ。



「スタードール侯爵令嬢は歓迎ムードだし、侍女達も少なくとも2人は誤解が解けたし、上等上等」


「誤解?」


「前に1度だけスタードール侯爵令嬢に、アドバイス求められたんだけどね、その結果、ルーカスにどんどん嫌われるから、私がわざと余計なアドバイスをしたって思ってたみたいで、最初敵意剥き出しだったのよ。

スタードール侯爵令嬢いなかったら、嫌味くらい言われたんじゃないかな?」


「なにそれ…」


「もう誤解は解けてるし、大丈夫だよ!」



キュッと心配げに眉を顰めるネイトの可愛さに頭を撫でたくなるのを我慢して、安心させるようにアイリスは笑うが、ネイトは、満足出来ないらしい。



(ルーカスの奥さんになる訳だし、あんまりネイトに嫌な印象植え付けたくないな〜)



どうせなら、お互い別々の所帯を持ってもずっと仲良くいたいとアイリスは、願っている。

その為にも、元攻略対象の未来のお嫁さんに別のキャラが悪感情を抱くのは避けたい。



(仲の良い兄弟だって所帯を持てば今までより疎遠になるのに、仲の良い他人なんて、友達の奥さんに不満を持ったら一瞬で縁切れそう)



仮面夫婦ならそうではないかもしれないが、アイリスは、ルーカスとカリナを仮面夫婦にする気はないし、その為に派遣されたのだ。

そして、夫婦仲が良くなれば、大切な妻に悪感情を抱く人と仲良くなるのは厳しいだろう。

だから、



(話そらそう!)



アイリスは、そう結論付けた。



「どっちかといえば、この後の婚活パーティーが面倒なくらいだよ」


「…なら行かなくていいじゃん」


「いや、それはムリだって。仮にも伯爵令嬢だし」



俯きながら、ぐっと何かを堪えるようにそう言ったネイトの表示を前を向いてて気付かなかったアイリスは、カラリと笑って流す。



「…でも、」


「それに、普段食べれないような良い物も食べれるしね!

悪いことばかりじゃないよ!」



ふと隣を見れば暗い顔をしているネイトにアイリスは、内心慌てて付け加える。



(ネイトは心配性だから愚痴には気をつけなきゃな…!)



素っ気ないように見えて、その実、心配性で気の利くネイトに、上手くいっていない婚活で心配させるのは、年上として気が引けたのだ。



「あっ、そ…」


「ホントだよ?

ただ素敵だなって思った人は、私を相手にしてくれないのが分かるし、私に声をかけてくれる人はタイプじゃないし」


「っ、思われるのは好きじゃないの…」



どうやら随分と心配させているネイトが気にしないようにと努めて明るく話すアイリスだが、ネイトの顔と声は、依然として暗くて、やっちゃった…と責任を感じてしまうが、とりあえず、聞かれたことに答えないとと思考を戻す。



「別にそんなことないよ〜!

ただ、ほら、私の周りってネイトとかルーカスとか、ハイスペック男子が揃い踏みじゃん?

だから、ついつい私にピッタリなレベルの男性が芋に見えちゃって、高望みしちゃうんだよねぇ〜〜!!!

ホ〜〜〜ント!身の丈を知れって感じなんだけどね〜〜〜」



はあ…、と自分の欲深さにアイリスは内心溜息を吐く。



「…いいじゃん」


「ん?」


「高望みしていいじゃん」



真剣な目がアイリスを射抜いて、1つどくりと鼓動が大きく波打つ。



「てか…!

妥協するとか僕が絶対許さないから!

アイリスが結婚するのは、僕やルーカス達が認めた相手だけだからね!!」


「う〜ん、生涯未婚の予感」



だが、次の瞬間にはそういつもの調子で声を荒らげて否定するネイトに、アイリスもすぐに調子を戻して軽く応える。

あのハイスペック達が全員認める相手とか、アイリスのパラメーターで落とせる気がしない。

それはそうと、



(真剣な顔のネイトきゅん、クソカッコよ!!!!!!それなのに慌てて誤魔化してる所が、わかよさのとどまるところを知らないよね!!!!!!!この世に舞い降りた天使かな???????)



アイリスの心のオタクは、いつだって大興奮だった。

最推しなのだ。生きてるだけで尊いし、認知してくれるだけで慈悲深いのに、心配して声を掛けてくれるなんて、



(やっぱり天使の生まれ変わりだよね?????)



アイリスは、リエラを含めて箱推しだったし、推しが1人消える成り代わりものは地雷だったので、『アイリス』に生まれ変わってると知った時は、『アイリス』の推しとして血の涙を流す気持ちで悲しんだが、18年も生きていれば、いい加減割り切れるし、何よりも、推し達の友人という地位はとても最高だった。

マジ最高だった。

と、言うわけで、推し達の友人という地位を与えてくれた神々に感謝を込めて、今日も祈ろうと心に誓う。



「あっ、家着いた。

ネイト、送ってくれてありがとう!」


「別に…、気分転換だから」


「うん、それでもとっても嬉しいから、


ありがとう!」


「フンッ…。さっさと入れば」



耳を真っ赤にして、そっぽを向くネイトはとっても可愛くてずっと見ていたいが、それは恥ずかしがっているネイトに悪いのでやめておく。



「また、明日ね!」


「…うん」



素直じゃないからお前の為じゃないって言うくせに、手を振れば小さく頷いてくれるから、



「は〜!!!可愛い〜〜〜〜!!!!」


「ちょっと!!可愛いって言うの禁止って言ってるでしょ!」


「やっべ、心の声が漏れた」


「もう!!」



羞恥心に顔を赤く染めて怒るネイトだが、本気ではないと分かっているので怖くはない。



(ネイトきゅん、ガチ怒りすると冷静になるタイプだしね!

てか、最推しを褒めらんとか無理くね????)



と、アイリスは、心の中で言い訳しておく。



「じゃあ、本当にまた明日ね」


「さっさと入って」



玄関の扉に手をかけたアイリスに、ツンとネイトが返事をするが、顔はまだ赤い。



(ああ、それにしても…、)



と、アイリスは思う。

学園生活が終わって、別々の場所で各々働き始めて、もう推し達に毎日会うことは叶わなくなったと思っていたからこそ、



(明日からも毎日最推しに会えるなんて最高!!!!心配性なネイトきゅん様々!!!!あざます!!!!!)



そんなオタク心全開で、意気揚々と家の玄関をくぐったアイリスは、気付かない。































「ああッ、…『婚活が面倒臭いなら、僕と結婚すればいいじゃん』くらい言えよ、僕…!」



そう1人頭を抱えてうずくまる少年に。


はああああ!!!!!!

ブクマ10!!!!2桁!!2桁になった!!!!

神が居る!!!!優しい神々が居る!!!!

ありがとうございます!!!!


ここまで読んで頂きありがとうございます!

良ければ、下の★マークから評価してもらえれば、励みになります。

よろしくお願いします!!!!(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈⋆)

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