帰宅と遭遇
【登場人物】
《アイリス・ラブレー》
・主人公
・乙女ゲームのサポートキャラに転生した。
《カリナ・スタードール》
・リエラとゴールインしなかったルーカスの婚約者に選ばれた乙女ゲームに登場してない侯爵家令嬢
・ルーカスとお互いに尊重し合える関係を築きたくて、アイリスに相談したが…。
《ネイト・マーヴェン》
・乙女ゲームのもう1人の攻略キャラ
・所謂、ツンデレ年下枠の次期神官長
《パティ・ブレナン》
・カリナの元乳母の侍女
《ファニー・ファッド》
・カリナの取り巻き兼侍女
・パワフルな子リス系子爵令嬢
「本日はお疲れ様です」
「「お疲れ様です」」
パティの言葉にアイリスとファニーが返す。
(労働時間は現代寄りで安心だよね!)
女の子の夢を詰め合わせた世界を前世の歴史区分で分けることは出来ない。
ドレスやワンピースが主流だが、その下はコルセットではなく、21世紀の補正下着だし、パニエも現代風で、足を見せるのをはしたないという文化もなく、くるぶし丈どころか、ミディアム丈、ミニ丈のスカートだってある。
平民の労働時間は、だいたい8時間だし、貴族はもう少し短い。
アイリスも11時〜16時までの4.5〜5時間労働。
一応、30分の休憩あり。とはなっているが、貴族の侍女の仕事は、お嬢様のお話し相手兼付き人なので、お嬢様が、ティーパーティーとかについて行くと休憩が取れなくなるからだ。
そして、メイクやヘアアップ、服装や装飾品の選択や管理といった仕事は、平民の侍女が主立ってやることが多いので、責任は少ない。
(まあ、ファッド子爵令嬢みたいな例外も居るけどね!)
カリナを飾り立てることに死力を尽くすファニーは、その子リスの如く愛らしい童顔美少女フェイスに似合わずパワフルなので、当然の如くその全ての仕事に食い込んでいる。
(さらに、母方の商会の一部まで任されてるんだからホント強者)
とはいえ、貴族階級の侍女が、労働時間が短いとはいえその後の時間が完全フリーになるわけではない。
貴族夫人なら、仕事後に自分の家の管理の仕事があるし、アイリスのような未婚女性なら婚活パーティーに出る準備が待っているので、意外と時間に追われているのだ。
「それでは、また明日!」
「ええ、また明日」
帰宅する為の迎えの馬車に乗り込むファニーの言葉にアイリスは、笑顔で手を振って見送る。
(とりあえず、認めて貰えたし、第1関門クリアって感じかな)
最初の敵意剥き出しの視線を考えれば、小さな白いプラティアの花のような可愛らしい満面の笑みで挨拶してくれたのは、大進歩だ。
(さて、私も帰ってパーティーの準備しなくちゃ)
そう考えながらアイリスは、帰路へと歩き出す。
え?馬車??
貧乏伯爵家にあると思うか??そういう事だ。
(はあ〜、子爵家のファッド子爵令嬢のほうがいい暮らししてるとか、世知辛ぇ〜〜!!!)
一応、パーティー用に馬車レンタルは、1ヶ月定期で借りているが、1日1往復までなので、今日の婚活パーティーに行く時に使うアイリスは、今は使えないのだ。
もちろん、侍女としての給金は出るし、ルーカスが「友人だからこそ君に対する敬意を示させて欲しい」と、神殿により良い結婚生活を送る為のアドバイザー提供の依頼として正式に申し込んでくれたので、アイリスの立場は、神殿所属、王宮斡旋、スタードール家カリナ付き侍女として、アドバイザーとして神殿から、侍女としてスタードール家から、二重の給料が発生している状態なので、普通よりも良い金額貰っているが、流石に馬と御者と馬丁を養えるレベルではないのだ。
ついでに、王宮はアイリスに払ってないではないか、といえば払っていないが、神殿にそれ以上を寄付していて、その一部がアイリスに支払われるので払っているといえば、払っている状態だ。
(神殿運営もタダじゃないからね!払える所からは払ってもらうよ!)
友人として、ではなく、聖巫として神殿を通してくれてるので神殿支払いで割高にはなるが、アイリスとしては、神殿からの評価が上がるのでとても有難い。
やはり、職場からの評価は低いよりも高い方がやりやすいのは、前世も今世も変わらない。
一応、前世の感覚で、友達割りってことで神殿通さなくてもいいよとは言ったが、その結果が、上の「友人として敬意を示させて欲しい」という言葉だったので甘えさせて貰っている。
(流石、攻略キャラ。人としての出来が違う。
それに、きちんと税金の方じゃなくて、私財の方からの支払いだし)
王家直属の領地や土地もあるので、王族は、公的なものは税金で、私的なものは私財が基本なのだが、もちろん過去にはやらかしてる王族もいるが、ルーカスは、きちんとそのあたりは分けている。
「帰るの」
「ふぁッ!?
ね、ネイト!?何で居るの?!」
家に帰るための最初の曲がり角を曲がった所で、塀にもたれかかって立っていた予想外の人物にアイリスは声を上げる。
「別に、どこに居ても僕の勝手でしょ」
だが、ツンとしたネイトの反応にアイリスは苦笑する。
(まあ、本当に興味ない相手だと、ツンとすらしてくれないから、ツンとしてくれるだけ好感度高いって思うと微笑ましくもあるよね)
「そうだけど、仕事は?」
まだ16歳のネイトは、前世ならピチピチの男子高校生だが、こちらでは、もう最終学校を卒業した社会人だ。
次期神官長として忙しく働いているので、こんな帰り道に偶然会う相手ではないはずなのだ。
「休憩時間」
「休憩時間って…」
休憩時間の散歩中にばったり?なんてわけも当然ありえない。
ネイトの仕事場である中央神殿は、大きくて、庭園もいくつかある規模なので、わざわざ何もない貴族の住宅街に来る必要はないし、次期神官長のネイトの基本移動手段は馬車だ。
「てか、一応、貴族令嬢でしょ!何、1人で歩いて帰ってるの!信じらんない」
「えぇ…、今までも当たり前に1人歩きしてたし」
「それはそれ!
とりあえず、1人で行き帰りしないでよね」
「んん、とは言っても、送り迎えしてくれる人は雇えないし」
(ウチの家はギリギリで回してるからね!!)
かろうじて、メイド・オブ・オール・ワークを3人雇ってるレベルなので、家に居るのは1人、2交替制で基本的に夜間は居ない。
そんな家で、テキパキと働いてくれてるメイドに「私の見栄のために出勤と退勤ついてきて」なんて言えるわけがない。
「何時」
「え?」
「何時に家、出てるの」
「??10時半前だけど?」
「帰りはこの時間でいいね」
突然出勤時間をアイリスは困惑する。
「ええっと、何で時間??」
まさか、と思う期待を押し込めてアイリスは問いかける。
「どうもこうも僕が送る」
「うぇえええ!?!?!?」
「何?問題あるわけ」
当たった予想に、そこまで懐かれている事実に嬉しさ半分、そこまで好かれることをした記憶がなくて困惑半分にアイリスが驚きの声を上げれば、ネイトはキツイ言葉に見合わない、拗ねたような、不安げな顔をしている。
「いや、問題というか、申し訳ないというか。
ネイトも仕事あるでしょ?そこまでしてもらうのは申し訳ないよ」
「別に。ただ、神殿に缶詰なんて体鈍るし、気分転換の散歩にちょうど良いから、ついで」
「気分転換にわざわざ送り迎えなんかせんでも…、それこそカフェとかでまったりした方が良くない?」
「迷惑?」
一応、ネイトの休息時間を奪うのが心苦しくて、他の提案もしてみるが、ピタッと立ち止まって、俯いて自分のズボンを握り締めるネイトに、アイリスは振り返って慌てて弁明する。
「いや、心遣いはとっても嬉しいよ!
ネイトと一緒に居るのは、楽しいし!
純粋に、ネイト忙しいだろうからって、遠慮しちゃっただけ!」
「そっ…、
っ言っとくけど!僕は、自分に負担になることは提案しないら!」
そんなアイリスの弁明に、安心したように天使フェイスをふにゃりと緩めて小さく笑うと、気弱になったのを誤魔化すようにネイトは、強い口調で断言する。
(か、可愛ぇぇぇええええ!!!!!!
安心したようなふにゃっと笑顔が天使!!!!!!慌てて取り繕う姿も天使!!!!!!)
基本、ダダ漏れの好意を本人が隠そうとするのでツンデレな反応がアイリスの性癖をぶち抜くのだ。
「ネイト、ありがとう」
「ちんたら歩いてたら置いてくよ」
まだ青空が広がる中、尊い!!という気持ちが滲みでないように気を付けつつ、アイリスは、ネイトにふわっと、心からの笑顔で感謝を伝える。
「えー!ひど〜い!!」
好意にすぐに顔を赤くして、顔を隠すように早足でアイリスの隣を過ぎていったネイトが、本当に置いていくことはないと知っているから、真っ赤な耳を堪能しながら、軽口を叩きつつ前を歩くネイトに駆け寄った。
(ネイトきゅん、きゃわわ!!!!)
スチルだけでは見れない色んな推しの表情が見えるのだから、
(転生最高!!!)
世知辛い現実もあるが、やっぱり、アイリスはそう思うのだった。
ふあああああああ!!!!!!!
前の更新でブクマが2増えた!!嬉し過ぎて家で叫んじゃいました!ありがとうございます!!
いつもより伸び悪くて、「あれ…、もしかして今日PV100いかない…?」としょんぼりしてたので、本当に心の励みになりました!❀(*´▽`*)❀
書き溜めなくなりましたが、2日に1回更新を目標に頑張って行く予定です!(๑و•̀ω•́)و
どうしても素直に声をかけられなくて脅かしちゃうネイトくんと毎度ビックリするアイリスちゃんになってしまう…!!
無理にネイトくん話にぶっこむと、話がごちゃつきそうな気もするけど、ある程度突っ込んでいかないと恋愛に発展しないこのジレンマ…!!
あー!!加減が難しい…!!
もしも、2人の絡みが、もう少し多い方がいいとか少ない方が良いとかあったら教えて下さい!
最後に、ここまで読んで頂きありがとうございます!
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