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解放③


______________________________


なぁ!爪垢って分かる?汚れ?臭いやつ?ははは〜!それも正解だよ?それは…印だよ。

爪には、『その人がどういう人間なのか・どういう人生を贈っているいるか』などの様々情報が爪には詰まっているんだ。


例えば、慣用句でよく耳にする『爪の垢を煎じて飲む』に使われる『垢』はその人間の爪の垢もその人間の一部なんだと!些細でつまらない爪の垢も、誰の爪の垢なのか?どのような人生を歩んできた人間の爪の垢なのか?それが理解出来た時に始めてこの慣用句が成立するんだ。

そんな爪にはその人の人生が映し出されるんだ…努力したのか・していないのか・成功しているのか・諦めてしまったのか…ひいては、その人も未来までも…そんな’印’を理解出来ればお前は何にだってなれる!そう!”爪痕を飲め”ならぬ『爪垢を刻め!』だ!


もしも、まだ印となる爪垢を持っていないのであれば…思う存分に汚れろ!!

もしもお前が一人ぼっちになった時…友達が苦しんでいる時…もとい、誰かを救いたいと願った時…その時その汚れがお前自身の助けになってくれるはずだ…


覚えとくといいよ…


_____________________________


…ここは、チムニー洞窟EXフロアの終着点…


このゲーム世界に存在するクリア済みダンジョンに、一周目のエンディング後に出現する新たなフロアがEXフロアである。


そんなEXフロアの終着点には壁画が飾られていた…その壁画には牛のような姿をした魔物が描かれていた…


そんなチムニー洞窟のEXフロアの終着点に、勇者ジエルとその部下であるアルマは、この場から生まれた新たな悪意を瞬時に察知し、その悪意の原因を探るためにこの場所へ赴いたのであった…


「こ…これは一体?」


ジエルとアルマがこの終着点で目の当たりにした物は…


「黒い卵?…黒い球体?…」


「…中に何かいる?」


ジエルとアルマが見つけた黒い球体の中には、イノリスの右腕を奪ったオークソルジャーの頭上にアルマが致命傷を与えられたナイトメアローブが包み込むように交わっていた。


そんな球体の中心で、一つ生命体として生まれ変わる為の準備をしている様にジエルの目には映った…


「…」


「コイツら一体何をしようとしているんだ?…」アルマはまだ見ぬ悪意の塊に適切な判断が出来ずに数秒の間、硬直状態に陥っていた。


そんなアルマとは対照的にジエルは、自身が習得している光魔法を黒い球体に放つために、意識を集中させ魔力の精度を上げたいた。



「アルマ!しっかりしなさい!ひとまず闘いに備えなさい!きっと傷付いたナイトメアローブが強靭な肉体を持つオークソルジャーを取り込もうとしているに違いないわ!しかし今の2体から感じる取れる魔属は一つずつ…奴らはまだ完全に魔属の融合しきっていない!不完全な今のうちなら、奴を仕留める事が出来るかもしれない!…そう!絶対に奴らの融合を阻止しなくてはならない!」



新たな脅威の誕生に狼狽える事なく最善の策と練っていたジエルに触発され、アルマは自身に生まれた恐怖を押し殺し、残りの二つになった光魔のカケラの一つを自身のパチンコにセットし、戦いの火蓋が切られるその時に備えて意識を集中させた。


「…よし!魔法の準備が完了したわ!アルマ!そっちの準備はどう?」


「はい!いつでも行けます!」


「…では!攻撃開始よ!」


光魔法の詠唱が完了したジエルは、アルマと共にこのダンジョンのボスであろう不完全な黒い球体に二人の光魔法で一斉攻撃を仕掛けた…


「喰らいなさい!Mメガルクス!」


ジエルは、光魔法の中出力魔法である『Mメガルクス』を!アルマは低光魔法のルクスの効果が宿った光のカケラを黒い球体に同時に直撃させた。


『ド!ドドッカン!!』


『ボロ…ボロボロ…』


二人が放った光魔法の一撃により、黒い球体がボロボロと崩れ落ちていった…


しかし、崩れ落ちていったのは本体を守る殻の役割を模した外壁のみで、本体自体を傷つける事は出来なかった…


「俺たちの攻撃が失敗した…」


「…」


「いや…まだよ!奴らの魔属はまだ一つにはなっていない…」


一瞬!奇襲に失敗したかに思われたが、現実はそうでは無かった!


「奴をよく見て頂戴!奴らは見た目通り、オークソルジャーがナイトメアローブを纏っているに過ぎない…奴らの肉体を傷つける事は出来なかったけれど、奴らの融合は阻止出来たわ!だから、まだ何とかなるわ!奴らが妙な真似をする前に、一気に畳み掛けましょう」


「はい!了解しました」


敵を消滅させる事は叶わなかったが、敵の融合を一時的に阻止する事が出来たジエルは、まずは自身のレイピアを使った近接で敵の情報取集をしながらに敵にダメージを与える事を選択した。


「アルマ!オークソルジャーの体は分厚い脂肪で斬撃ダメージが入りずらいわ!魔法攻撃で確実にダメージを与えて!」


「はい!」


ジエルの素早い攻撃と状況判断により、後衛を勤めていたアルマは直ぐに3種類の魔石のカケラを右手に限界まで詰め込み一つずつパチンコに装填し、的確に相手に放っていった。




ー 今現在のアルマの最大の変化ポイントは、レベルアップによる肉体強化では無く、エヴォルの森で手に入れた新しいアイテム袋にあった。実はそのアイテム袋の正式名は、”アイテム拡張袋”と呼ばれるPSの内のアイテム収納の容量をアップする為の拡張アイテムの一つであった。実際のアイテム拡張袋の使用方法はPSに拡張袋を取り込ませると、自動でPS内の容量のアップデートする事が出来るという仕組みであった。




一見ただの拡張アイテムだと思われていた”アイテム拡張袋”にはPSと同じ空間魔法が施されていたのであった。アルマはそんな空間魔法が付与されたアイテム拡張袋を補助アイテムとしての使用するのではなく、一つのアイテムとして利用する事を思いついたのであった。


今までのアルマの攻撃手段といったら、最大5つまだ収納出来る普通の袋に収納していた魔石をパチンコに装填し、パチンコのゴムの反動を利用して魔石を相手にぶつける事がメインであった。そもそも所持出来る魔石の数が5つまでと限りがあったため、連続攻撃には限度があった…


そんなアルマの弱点であった弾数の制限を補ってくれているのが、新アイテムのアイテム拡張袋なのである。アイテム拡張袋の容量は、アイテムの大きさは関係なく50個分のアイテムが収納が可能であった。


アイテム拡張袋を手に入れる前のアルマは短期戦が得意なキャラクターであったが、アイテム拡張袋を手に入れ事によって持久戦も行える様になった今のアルマは、今までの自分が遠い過去の存在に思える程、広い視野で戦いをこなせるマルチキャラクターへと変貌を遂げていた。



ー 臨機応変にオークソルジャーへ魔石を使った魔法攻撃を繰り出していたアルマの姿を目の当たりにしたジエルは、見違える様に強くなったアルマに感動を覚えていた。


(…本当に強くなったんだね!君は!たった1日でイノリスと同等の身体能力を手に入れ、しかも弱点だった魔石の弾数の確保もクリアしている!そんな今のアルマは、私が背中を預けられるほどの安心感を生んでいる…そう…まるでラッシュの様に…)


ジエルは、急成長を見せたアルマの姿に友でありライバルであった勇者ラッシュ・クロスロードの姿が重なって見えていた。


成長したアルマの存在も相まって、一方的に攻撃を仕掛ける事に成功していたジエルとアルマの二人に予期せぬ出来事が降り掛かった…



「…嘘!?自己再生している?いや!それだけじゃない!?」


何と!傷ついた敵の体から触手のような物が出現し、自身が負った傷と傷を繋ぎ合わせるように、再生と合体を同時に行っていたのであった!


「ナイトメアローブの傷付いた部分とオークソルジャーの傷付いた部分が結合している。しかもただの結合じゃない?」


「…」


「まずいわ!形態変化が止まらない!…ダメ…二つあった魔属が一つに統合しようとしている…」


敵が新たな姿へと変貌を遂げようとしていたその時…すぐさまジエルは、自身の最大の敵になり得る存在に対抗するための’武器’である『チェンジ・レイヤー』への変身のための詠唱を開始した…


『ゴゴゴ…』


進化を遂げようとしている魔物とそれを止め為の力を蓄えているジエル…追いかけっこのような肉体強化の競争で一歩リードしていたのは、他でもない魔物の方であった…


進化途中であった魔物の動きが止まり、その肉体から悪意の詰まった邪気が一気に噴出されようとしていた…


「もしかして、奴の進化が最終段階に投入したのか?…結局俺は、奴の進化を止めることが出来なかった…俺は…無力だ…」




「諦めちゃダメよ!!」



『!?!?』


魔物の進化を阻む事が出来ずに、自身の存在意義を見失い欠けていたアルマに、ジエルによる救いの一言が無色になっていた彼の決意に彩りを注いだ。


「誰か大事な人を忘れてない?君の隣に勇者がいるんだぞ!」


「ジエルさん!!」


アルマがどんなに挫けそうな時でも、彼の隣にはジエルが居てくれる…そんな頼り甲斐があり常に自分を叱咤激励してくれるジエルという存在にアルマは何度も救われたいた。今回もジエルの存在が空っぽになったアルマの心に勇気と希望を注ぎ込んでくれた。


「やっぱり”こっち”の方が慣れてるわね!戦闘体制が整ったのはこっちも同じよ!…早速変身させてもらうわ…」


『…』


「はぁ…ハッ!」


『ピッかん!』


「…我が名はジエル・インヘリット…我の名の下に、その光集まりいでよ…そして、我が魔属と一つになりてその新たな姿、現しいでよ…」




「導け!!閃光憑依フルゴスレイヤー!!」




ー ショートタイツ姿が印象的だったジエルの衣装がスカートに変化し、全身に黄と白を基調とした魔装に変貌していた。それ以外にも彼女自慢のブロンズヘアーの毛先が白く発光し、稲妻模様の癖っ毛が付け加えられていた。そんな新たなる姿を垣間見せたジエルの容姿の中でも一際目を引いたのは、左目に装備されたバイザーであった。そんなバイザーは、ただの飾りではなく敵の能力の一部確認する事が出来る能力を秘めたジエルの新たな武器の一つであった。


ジエルは、自身が作り替えた雷魔と光魔を融合させた新たな魔属『電魔』を元に、自身が習得していた二つ目のチェンジレイヤーを華麗に披露した。


「よし!これで準備は整ったわ!アルマ!もう一度私に力を貸して!そして、あの悪意の塊を打ち倒そう!」


ジエルは、早々に自身の必殺技を披露し、成長したアルマと共に強大な敵に挑もうとした矢先…パートナーのアルマにとある異変が起きた事を知る事になった…


「…え?アルマ!一体どうしたの?…」


ジエルの変身が完了したタイミングで、突如アルマが頭を抱え倒れ込んでしまっていた。


「アルマどうしたの?何があったの?」


「…ず…頭痛が…でも…大丈夫です…それよりも…敵を…」


ジエルは体調を崩したアルマに駆け寄った後、アルマの助言通り敵が放つドス黒く異質なオーラに目を向けた方が良いと判断した。


「私の魔装とほぼ同じタイミングで奴の合体が終わっていたのね…まずいわね…このタイミングで奴らの魔属が一つになってしまうなんて…」


敵の魔属が一つなった事を確認したジエルは、恐る恐る敵の容姿を確認してみると、今までに見た事もない魔物の姿に、数百年ぶりに誕生した新たな魔物の誕生に脅威を抱いていた…


「このタイミングで新種の魔物に遭遇するなんて…これもフェノフェロウの影響なのかしら?…なんて、今は悠長な事を考えているほど余裕はなさそうね…」


ー 得体の知らない新種の魔物に脅威を抱くジエルであったが、同じように新種の魔物も魔装したジエルの存在に脅威を抱いていた…両者共に異様な緊張感の元、早々に戦いは幕を開ける事となった…



『ドンドンドン…』

『ビュンビュンビュン…』


魔装を纏ったジエルは、魔装を纏う前に比べて全ステータスの向上と光魔法の詠唱時間が短縮されているため、低出力の光魔法を連続して放つことに成功していた…ジエルはその甲斐あって、距離を詰めてくる相手に魔法攻撃と得意のステップワークで自身の得意な距離を保って戦う事が出来ていた。



一方の新種の敵はと言うと、融合する前に使用していた武器は使用せず、新たに漆黒の片手剣を右手に装備していた。見た目も融合前のオークがローブを羽織っていただけの姿とは異なり全くの別の生き物に変化していた。

3m以上あった体長も2mほとんどに短縮していたが、大きさでは測れないほどの膨大な魔力をジエルは感じざるを得なかった。



お互いに特に目立ったダメージを与えられずにいたその時…ジエルが先に決定打を放つ事になった!


『フッワッ!』


戦闘時間の経過共に、ジエルから放出された電魔の魔力がダンジョン内に漂う魔素が適合した事により、ジエルは空中に浮遊する事が可能になっていた…


「ギギ…グ…」


一方の新種の魔物は空中に漂うジエルに攻撃を当てる事が出来ずに、浮遊するジエルをただただ睨みつける事しか出来ずにいた…


「これだけ距離があれば…アレを呼び出せる…」


「……」


地上で何も出来ずに剣を振り回し怒りを露わにしている敵が飛び道具を持っていない事を見極めたジエルは、一気に空中から敵を殲滅出来るであろう特別な魔法の詠唱を開始した…


「よし…完成した!喰らいなさい!」



「極大魔法!エキセントリッカー!!」



『ドドドド…』


ジエルが頭上に出現させた魔法陣の中から無数の落雷が大雨のように新種の敵に向かって殴り落ちていった…


ジエルの高出力の追撃型電魔法が新種魔物に全て直撃し、敵は一瞬で黒焦げにしてしまった…その後ピクリとも動かなくなってしまった敵の姿に流石のジエルも勝利を確信し空中から地上へ舞い戻った…


『………』


(動きは一切無い…けど妙ね…今までの凶暴化した魔物と何がか違う…普通の魔物は機能停止=死亡…けれど凶暴化した魔物は…」


『ゴゴゴ…』


「灰になってない!?…」


『ド〜ン!』


「ジエルさん!上です!避けて!」


後方から聞こえたアルマの助言により間一髪、謎の攻撃から回避する事に成功したジエルであった。


「アルマ!もう大丈夫なの?」


「はい!ひどい頭痛に襲われましたが、気付いた時には頭痛から解放されていました」


「大事に至らなくてよかったわ…けど、一体何が起きたの?」


ジエルの攻撃に巻き込まれないように、壁際まで回避していたアルマは、その一部始終を目にしていた…


「奴は攻撃を喰らう寸前にオークソルジャーから分離していたんです!」


『!?』


アルマの解説を耳にしたジエルは黒焦げになった敵を凝視してみると、そこには融合する前のオークソルジャーだけだが黒焦げになり、次第に崩れ落ちていった…


「ナイトメアローブがいない!?」


ジエルがこの場をぐるっと見渡して見たが、敵の姿が見当たらなかった…


「もしかしてこれはナイトメアローブの特性…”透過”ね…けど…確かに奴らの魔属は一体化していたはず!?なのになぜ」


状況を噛み砕き、己の思考と融合させたアルマが一つの答えを弾き出した…


「もしかして…融合じゃなくて吸収されたんじゃ無いですか?」


「…なるほど!それなら合点がいくわ!ナイトメアローブとオークソルジャーが合体したのではなく、ナイトメアローブにオークソルジャーの魔属が吸収されてた…その後、ナイトメアローブの体内で二つの魔属が一つの魔属が統合されたのね!」


「だと思います!ナイトメアローブは吸収が終わったオークの体を捨て、新種のナイトメアローブが透過の能力を活かしてこの場から姿を消した…」



二人がお互いが知り得た敵の情報について意見交換を行っている中、アルマに対して謎の助言が聞こえてきた…



「…その場所は危ない…壁に…壁に近づいて…」



「分かりましたジエルさん!壁に近づけばいいんですね?…」


アルマはその助言通りに足を一歩分後ろに後退させた…



「え?私そんな事言ってないわよ…」



『!?』



「アルマ後ろ!?!?」


アルマが壁に近づいた瞬間…壁に透過していた新種の魔物が大鎌でアルマの背中を斬りつけた。


『グッサリ!』



「アルマーーー」


新種の魔物はジエルに似せた声を操り、アルマを自分の近くに近づけさた…その後無防備となったアルマの背後から痛恨の一撃を喰らわした…不意打ちを喰らいその場で倒れ込んでしまったアルマ…ジエルはすぐさま光魔法で新種の魔物を迎撃した…


ジエルの光魔法は新種の魔物の左肩に直撃したが、元々のナイトメアローブよりも光魔法の耐性があるのか、致命傷を負わすことは出来なかった…その結果、新種の魔物を壁へ中へ逃がしてしまった…


「…アルマ…死なないで…私はあなたを失うわけには行かないの…どうか死なないで…」


ジエルはこの場から消えた新種の魔物よりもこの場で倒れ込んでいたアルマを強く抱き締める事を最優先に行動していた…


「…だ…大丈夫です…心配しないで…」


「え?生きてるの?」


「…一旦回復薬を飲むので、離れてもらっていいですか?」


『…パッ』


ジエルはアルマを抱きしめたその腕を直ぐ様緩めると、自身の頬を少し赤く染め、『一旦冷静になるの!私』と自分に言い聞かせていた。


『ゴクゴク…」


アルマは自身のアイテム袋から回復薬を取り出し、回復薬を素早く飲み干した…


「一体に何が何だか…」


ジエルは、確実に致命傷を負わせれたアルマが生きている事に驚きを隠せずにいた…


「…一体いくつ珍しいアイテムを持ってるの?君は?」


「ははは…黙っててすみません!これがそのアイテムです」


アルマはその場で洋服の下に隠していたボロボロになった”防弾チョッキ”をジエルに見せてあげた。


「この防弾チョッキは装備品じゃなくてアイテムの分類に入るので、俺でも所持する事ができるんです!そしてこのアイテムの効果なんですが、即死の一撃を喰らった時に瀕死の状態で持ち堪える事が出来るアイテムなんです」


毎度の事のようにアイテム駆使したアルマの戦い方に驚かせれているジエルは、もうアルマの事を心配するのはやめようと一瞬誓った。


「君には毎回驚かされているけど、今回のこれはやり過ぎだよ!本当に死んだかと思ったよ!」


「…本当にすみません!そんなに怒らないでくださいよ!説明する時間も無かったんで、最小限の報告だけになっちゃったんですよ〜」


頬を膨らまして怒りを表現するジエルに、申し訳なさそうに手を擦り合わせて詫びを入れるアルマであった。


「冗談はさておき、本当に無事てよかった!とりあえず敵がまたいつ何時攻めてくるか分からないから、要点を短くして伝えるわね」


「新種の敵の名前はナイトメア・ファントム!見た目はナイトメアローブに似ているけど、中身は全く別物よ!ナイトメアローブと違って光魔法を一回与えただけじゃ倒れてくれなかったの!きっと光魔法の耐性も上がっているみたいね!」


「ちょっと待ってください!なんで新種の魔物の名前を知っているんですか?」


アルマは、ジエルが新種の魔物の名前を知っている事に理解が追いつかなかった…


「意地悪して悪かったわ!私も君をビックリさせたかったの!名前を知れた理由はこれよ!」



意地悪そうな顔したジエルがニヤニヤと笑いながら自身の左目を指差していた…


「…それってバイザーの事ですか?」


「うん!正解!このバイザーは魔装で出来た特別な装備品で、これ単体にスキルが付与されているの!そのスキルというのが、このバイザーを覗いた相手のステータスを表示する事が出来る特殊能力なの!最初は名前の所が『???』って記載されていたんだけど、敵がいなくなった途端名前の欄に『ナイトメア・ファントム』の名前が浮き上がって来たの…ホント不思議よね!」



「勿論に君のステータスも丸見えよ」


「ちょ…ちょっと!恥ずかしいんで見ないでくださいよ」


「ははは!大丈夫!今はMPの諸費を抑えるために使用を止めてるのよ!さっきの死んだふりのお返しよ!」


「そんな〜」


「…」


(もしかしたら、ナイトメア・ファントムはこのゲームの2周目限定で出てくる魔物だったのかも知らないな…きっとジエルさんのバイザーはゲームのデーターと繋がっていて、敵が逃げ出した事により敵のデータが上書きされて名前が知れるようになったのかも…)



アルマはこのゲームで起こり得ている出来事を自身の中で咀嚼しながら、ゲーム世界をうまく立ち回ろうとしていた。


その後の二人は、ナイトメア・ファントムらしき魔物が動き出した事を察知し、会話を一旦中止した。




「し〜!敵は動き出したみたいよ!」




二人はもう一度褌を締めなおし、敵の奇襲に備えた…そして物語は二人の運命を左右する最終決戦へ突入する…

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