ビバ推し活
他のクラスメイトたちが基礎勉強をしている時間に、私は騎士団の要請に従って3番隊とともに【オーク】退治をするため、王都から少し離れた森に来ている。
「というわけで、うちのシリル・クロスフォード先生はそれはもう尊い存在なんです!! だから困らせたりしたらダメですよ!! わかりましたね?」
「「ウィーーーーッ!!」」
私の言葉に【ベアラビ】軍団が一斉に「了解」の声をあげる。
よく行く森ならば【ベアラビ】たちへの先生の推し活は完了しているのだけれど、この森は初めて来るからか、ここの【ベアラビ】達は私を見ても身の程知らずに襲いかかってきた。
だからすぐに返り討ちにして、その場に正座させた上、先ほどまで先生の推し活本を読み聞かせて推し活をしていたのだ。
まだ一章しか読み聞かせできていないけれど、早くしないと本来の目的が遂行できなくなっちゃっうからね!!
ここらで終わっときますか。
「わかったならよろしい!! 解散!!」
私が号令をかけると「ウィウィー!!」と声を上げてから、【ベアラビ】軍団は散り散りに去っていった。
「いつもながらすげぇな……ヒメの推し活」
「なんか……聞いてたらこっちまで洗脳されそうになるよな。……ちょっと怖いわ」
ジャンとセスターが何やら言っているけれど、気にしない。
推し活は気にしたら負けだ。
「よーし、ヒメの恐怖の推し活も終わったことだし、少し休憩してからもう少し奥まで行くか!!」
3番隊隊長のグレイル隊長が声を上げて、全員その場の適当な場所へと座って、水分を取り始めた。
「おうヒメ!! 久しぶりにお前の剣技見たが、やっぱ強ぇな!! どうだ? 騎士団に入って、俺と組まねぇか?」
ガシガシと私の頭を乱暴に撫でながら、グレイル隊長が明るく笑う。
笑うたびに動く頬の大きな傷跡は、過去に行った時、グリフォンにやられた時の傷の残りだ。
「入りませんって」
「でも騎士団に入れば愛しのクロスフォード騎士団長の部下にもなれるんだぜ? 新たな関係、築きたくないか?」
「うっ……」
なんて誘惑をしてくるんだ……!!
くっ……王位よりそっちの方が……いやいやダメだ!!
私にはやるべきことが……!!
でも先生の部下ポジが捨てがたい!!
「グレイル隊長、仮にヒメが希望したとしても、あの過保護三人衆+αが絶対許してくれないと思いますよ」
ジャンがニヤニヤと笑いながら言葉を滑り込ませる。
「あー……確かに。騎士団長も副騎士団長も魔術師長も、なんだかんだヒメ溺愛してるからなー……って、+αって誰だ?」
「ジオルドっすよ、自称義兄の」
「「あぁ……」」
私とグレイル隊長の声がかぶった。
「ヒメ、モテモテだなぁ。くぅ〜っ、羨ましい!! 俺にもそのモテ運よこせ!!」
「イダダダダ!! 何女の子にヘッドロック決めてんですか!! レイヴンですかあなたは!!」
グレイル隊長みたいな筋肉だるまにヘッドロック決められたら、流石に私の首も悲鳴をあげるわ!!
「それに、私モテませんから!! 先生たちは私を幼女期から知ってるから、ちょっと過保護なだけです!!」
私が手をぶんぶんと振って否定すると、グレイル隊長やジャン、セスターがじとっとした目で私を見つめた。
あれ、何これこの間もあったぞ。
何で!?
「お前さ、本当に彼氏とか今までいたことないの? 15歳だろ? そういうの興味津々な時期じゃね?」
「私、春生まれなので16歳です!! 彼氏いない歴=年齢です!! いいんですよ!! 私は先生を愛でることができたらそれで。彼氏なんていたら推し活しにくくなっちゃうじゃないですか!! 私にリア充は無理です」
彼氏<<<<<<<<<<先生だから。
「なんか……枯れてんな……」
「推し活と魔物退治だけの人生……」
「そこっ!! うるさいですよ!!」
あんまりぐちぐち言ってると今年のハロウィンも猫化させてやるんだからっ!!
今年は何色のニャンコにしてやろうかな?
そんなことを考えながら、私ははぐびっと水筒の水を飲み干した。




