オヤジーズ襲来
「おい……」
「ん……」
「起きなさい」
「もぉーちょっとー……」
ふかふかの枕に顔を埋めて、私は声の主にそう返す。
するとチッ……と舌打ちのような音が聞こえて、すぐに私の耳元に熱い刺激が走った。
「私も“一応”男と言ったはずだぞ」
熱い吐息が耳を侵し、囁くようなその甘い声に私の意識が急浮上する。
「っ!? せ、先生!?」
勢いよく起き上がると、そこには眉間に皺を携えて私を見下ろす先生の姿が──。
「やっと起きたか小娘」
「へ? な、なんで先生が?」
「よく見てみなさい。ここは誰のベッドだ?」
言われて私はすぐに自分の今座っている場所を確認する。
黒を基調にしたシックなベッド。
私のベッドは黒とは正反対の真っ白いもの……。
これは────先生のベッド!?
「へ!? 何で!? な、何がどうして!?」
「こっちが聞きたい。私が会議から戻ってきたときには、すでに君はここで気持ち良さげに眠っていた。おかげで私はソファで寝る羽目になったのだが?」
確か昨夜は、先生の言葉に動揺しつつもシャワーに行って……シャワールームでうとうとしながらも髪を乾かして……。
あぁ、寝る前に先生のソファに座ってお水を飲んで、そうしたら目の前に先生のベッドがあったから顔を埋めて先生を堪能して……。
そのまま寝たんだーーーー!!
「す、すみませんでしたぁぁっ!!」
私はベッドの上で先生に向かって土下座する。
まさかあのまま眠っちゃうなんて……。
しかも愛しの先生をソファで寝かせる羽目になるだなんて……!!
私が誠心誠意謝っていると上からため息が降ってきた。
「はぁ……。君は私が言ったことをもう忘れたようだな。……これからは気をつけなさい」
「ヘィ……」
忘れたくても忘れられませんとも……。
「わかったらさっさと自分の部屋で支度して──」
そこまで言って先生の言葉が途切れた。
と同時に、ドドドドド──!! と地鳴りのような音と振動がどんどん近づいてくる。
あ、なんかデジャヴュ。
バンッ──!!
「「クロスフォード騎士団長!!」」
二つの声を重ならせながら入ってきたのは、予想していたレイヴンやレオンティウス様ではなく、レイヴンの父、レムルス・シード公爵と、色気に溢れたイケオジの二人組だった。
このイケオジ、どことなくレオンティウス様に似ているけど、もしかしてこの人……。
「シード公爵、クリンテッド公爵、人の部屋に突然突撃してくるとは、どういうことですか?」
呆れたようにイケオジ二人組に言葉を投げつける先生。
あ、やっぱりこの人がクリンテッド公爵……。
私の──叔父にあたる人……。
ぼぉっとしながら二人を見ていると、二人の視線が私に注がれる。
途端に大きく見開かれていくオヤジーズの双眸。
「!! く、クロスフォード騎士団長……!! まさか君は……す、すでに……すでに彼女と……!!」
「!! 理性の塊のような君が……!! うちの息子のようなことを……!!」
あ、盛大に誤解してらっしゃる。
それも当然か。
だって先生の部屋の先生のベッドの上に、ネグリジェ姿の私が座ってるんだもんね。
そりゃ誤解もする。
「〜〜っ!! いらぬ推測はせんことだ。カンザキ、君はさっさと着替えてきなさい。公爵方は騎士団の応接室へ行って待っていてください。すぐに向かいますので」
先生が眉間の渓谷を深くしながら言うと、私は「あ、あいさーっ!!」と急いで自分の部屋へと走っていった。
着替え終わって先生と一緒に騎士団の応接室へと向かう。
「あの、先生あの人ってやっぱり……」
「……あぁ。ゼルディウス・クリンテッド公爵。レオンティウスの父上で、君の母……リーシャ王妃の実の兄。君の叔父にあたる方だ」
やっぱり……。
レオンティウス様のあの色気は父親譲りだったのか。
「会っても、大丈夫か?」
気遣うようなアイスブルーが私に向けられる。
恋愛ごとに関しては鈍いし初なくせに、こういうことにはよく気づくんだから。
正直少し怖い。
何で妹でもある王妃様が死んで、私だけが生き残ってしまったのか、そう思われたら……。
でも私は会わなければ。
私が、ずっと欲していた、血のつながりのある親戚なんだから。
しっかり向き合いたい。
「大丈夫です。だって先生が……先生がそばにいてくれるでしょう?」
私がそう言ってふにゃりと笑って見上げると、先生は少しだけ眉間の力を緩めてから、
「あぁ。……なら、いくぞ」
そう言って目の前の応接室への扉を開いた──。
シリル先生盛大に誤解されるの巻(笑)
この親にして、あの息子たち有り、な登場でした(笑)




