【SIdeシリル(15歳)】とある公爵令息の決心
そうか。
今日で終わりなのか。
彼女と二人の修行は。
そう思うと、一気に無気力感が私を襲う。
ただ適当に面倒を見ていれば良かったはずの1週間。
なのに、ものすごく濃い一週間になったように思う。
何より、自分の変化には驚くしかない。
魔法剣は大きく上達したし、あの初恋以外は絶対にないと思っていた【恋】というものも再び経験することになった。
嫉妬というどす黒い心も、自分には無縁と思っていたが……。
幼い日の初恋を思い出す。
私は彼女との約束を守るために、強くならねばならない。
彼女の大切な国を守るために、そして今はもう一つ守りたいものも増えた。
──ヒメだ。
いつか彼女にも言う時が来るのだろうか?
私の初恋のことを。
彼女との約束のことを。
そしてその時彼女はどんな顔をするんだろうか?
……嫉妬したり……するんだろうか?
そこまで考えて、私は考えることをやめた。
いつになるかわからない未来を考えることに時間を使うなど、時間の無駄だ。
そんな時間があれば、強くなるために勉強したい。
私がそう考え、シャワールームに入ろうとしたその時だった。
バンッ──!!
「おーいシリルー!! いるかー?」
ノックも無しに人の部屋を開けるのは彼らくらいだ。
「レイヴン、レオンティウス」
いい加減ノックを覚えてほしい。
「おっ、いたいた!! 明日のことだけどさ、ヒメ、いつ帰るんだ?」
ズカズカと人の部屋に入り込んでくる二人組に眉を寄せてから「夜だ」と短く答えた。
「よし!! んじゃ明日はパーティーすっぞ!!」
は?
何のパーティーだ。
「何か祝うことなどあったか?」
誰の誕生日というわけでもないし、婚約パーティーなども聞いていないし……。
そう考えていると、呆れたように腰に手を当て、闇上がりのレオンティウスがため息をついた。
「あんたねぇ……。明日でヒメとお別れでしょう? お別れパーティーに決まってるでしょうが」
「学園長に昼に第三教室を貸してもらう許可もらってるからさ、明日はパーっとお別れパーティーしようぜ!! 料理や装飾は学園の意思が全部担当してくれるってよ!!」
学園の意思まで巻き込んだのか……。
でもそうだな。
1週間という短い時間で、ヒメは彼らにとってもかけがえのない友となった。
皆、ヒメのことが好きになった──と思う。
全く不思議な女性だ。
そんな彼女だ。
ちゃんと別れの会を開きたいのだろう。
「……わかった。昼に第三教室だな。連れていこう」
私は頷き、その計画を了承した。
「それはそうとあの子、どこに帰るの?」
「どこから来たかも結局よく知らねぇしな」
それは私も聞きたい。
『いつか、辿り着くところ──』
そう言って儚げに月を見上げたヒメの姿を思い出す。
これはどういうことなのだろうか?
いつか、必ずまた会える。
そういうことなんだろうか?
「色々事情があることだ。細かいことは気にするな」
そう言ってはみたけれど多分1番気になっているのは私の方だ。
「確かにそうだな。んじゃ明日は頼んだぞー」
「よろしくね。おやすみなさい」
「あぁ。おやすみ」
賑やかな嵐二人が手を振り去って、一人になった寮の部屋でふぅ、と息をつく。
一時の別れは寂しくもあるけれど、私はヒメの師を超える力を身につけて、彼女に胸を張ってまた会いたい。
その時はきっと言おう。
「君が好きだ」と──。
次回からついに7日目!!
最後の日です!




