私と彼の1週間ー6日目ー大丈夫を貴方にー
うん。
顔色も随分良くなってきたし、汗も引いてきた。
呼吸も落ち着いてきてるし、全体的に安定したみたいね。
すやすやと穏やかに眠るレオンティウス様に私は安堵の息をつく。
「レオンティウス様も……頑張りすぎですよ」
困った人たちだ。
でも、そんな彼らが私は大好きだ。
誰に言うでもなく漏れ出たその言葉に、
「本当だよなぁ」
と、帰ってくるはずのない声が返ってきた。
「レイヴン!?」
「よっ!!」
ニカッと笑って手を振るレイヴンだけど、なんでここに!?
まだ授業中のはず……。
「あの授業は?」
私が驚いて尋ねると彼はさっぱりとした笑顔で、
「抜けてきた!!」
と堂々と胸を張った。
抜けてきたって……。
不良生徒……!!
いやいやダメでしょ抜けちゃ!!
魔物退治で一人抜けてくるとか、食べられでもしたんじゃないかって大騒ぎよ!?
「すぐ戻ってくださいレイヴン!! 皆探してますよ!!」
慌てて帰るように言うも、当の本人はなんて事ない、けろりとした表情で
「大丈夫だって。エリーゼにはレオン見てくるって言っといたからさ」
と言い放った。
なんてやつだ。
こんな人が卒業後グローリアス学園のSクラス担任教師になるんだから、人生どうなるかわからないもんね。
「落ち着いたみたいだな?」
ベッドの上で良い気色をして眠るレオンティウス様見下ろしながら安心したようにレイヴンが言う。
そっか。
心配だったんだ。
レオンティウス様のこと。
やっぱりレイヴン、情に熱いなぁ。
本当、憎めない人。
「やっと熱も引いてきました。あとはしっかり寝て、食べて、ゆっくりしてれば元に戻るでしょう」
レオンティウス様のおでこのタオルを取りもう一度氷水につけて絞っては、またおでこの上へと戻す。
「ありがとうな、ヒメ。こいつ苦しくても言わないからさ。騎士科と普通科じゃ授業も合同じゃないことの方が多いし、気付くの遅れちまったわ」
ベッド脇に腰掛け、カラッと笑うレイヴン。
魔力量の少ないレオンティウス様は騎士科、レイヴンは魔法科だ。
食事は一緒に取っているみたいだけど、普段の授業は一緒にならないことも多い。
ちなみにシリル君は普通科。
騎士団長の息子ではあるけれど、希少な聖魔法、闇魔法も使い魔力も高いことから普通科になったんだろう。
にもかかわらず個別に剣も騎士団で訓練を欠かさない。
うちの先生はやっぱりすごい……!!
おっと、話が逸れちゃった。
「レイヴンもレオンティウス様もシリル君も、本当に仲がいいですねぇ。レオンティウス様もお二人のこととても心配されてるみたいですし」
一人じゃないことに気づいて欲しい。
相談できる誰かがいつも側にいるのだと。
彼は人知れず努力を繰り返し、必死にメルヴィを守っていた。
もしも彼を思う人のことに気づいてくれていたなら、ゲームのようなことにはならなかっただろう。
未来で私がメルヴィを助けるけれど、それまで彼は一人、メルヴィのために頑張り続けるのよね。
「ま、なんだかんだ幼なじみだしな」
なんでもないように言うレイヴンに
「羨ましいです。私もシリル君にそこまで思われたい……!!」
と本音が漏れると、突然レイヴンの表情に影が差した。
「……お前も、シリルがいいんだよな」
ぽつりと漏れた言葉に、私は間髪入れずに「そりゃそうです!!」と返した。
我ながら酷い答えだと思うけれど、事実だから仕方ない。
ここで取り繕っても、レイヴンは騙されてはくれないだろうし。
「はは、ハッキリ言うなぁ」
参った、と笑うレイヴンに、私は「でも──」と続ける。
「──レイヴンやレオンティウス様のこと、私、大好きです」
それは過去でも未来でも同じ。
ゲームをした時からずっと。
だから彼らにも幸せになってほしい。
「あなたが今、どれだけ努力し、何を守ろうとしているのか、私を含めわかっている人は多いのですよ」
「っ!! お前、知って……」
「大丈夫。それは報われますから。大丈夫、ですよ」
私はそれ以外語ることなく、ただふにゃりと笑った。
「……そっか。何かお前がそう言うなら、そんな気がしてきた。──ありがとうな」
照れ臭そうに笑って、私の頭をガシガシと撫でるレイヴンは、未来のレイヴンそのもの。
どうかこの人が背負っているものが、少しでも軽くなりますように。
そう願わずにはいられなかった。
「ヒメ」
名前を呼ばれて彼の顔を見ると、不意に私の頬に温かい感触が押し当てられた。
「!?」
ほっぺチュー!?
「んぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ははっ!! 慰めてくれた礼だ!!」
礼だ!! じゃない!!
嫌がらせだ!!
この万年発情期犬!!
ヒュオォォォォォ──。
私が今しがたレイヴンの唇が触れた頬に手を当てわなわなと震えていると、突然背後から夥しいほどの冷気が吹き荒れる──。
「レイヴン……貴様、サボっておいて何をしている?」
底冷えのする低い声。
無表情でこちらを睨みつけるシリル君が、そこにいた。
鬼だ……!!
「げ……!!」
「エリーゼが先生にすぐに知らせていたからよかったものの……。魔物退治訓練で途中で抜けるとはどういう──」
ゆっくりと大魔王がレイヴンを捕らえようと近づいてきたその時。
「うっさいわねぇ、あんたたち」
機嫌の悪そうな声を発して、のっそりとレオンティウス様が起きあがった。
「レオンティウス様、もう大丈夫なんですか?」
「えぇ。おかげ様でね。ありがと、ヒメ」
おでこのタオルをサイドテーブルに戻して、よいしょ、と言いながら立ち上がり、レイヴンの腕をガシッと掴むレオンティウス様。
「さぁてレイヴン。サボった分、私と一緒に自主練でもしましょうね」
レオンティウス様はそう言うと、私の方に向けてウインクを一つ飛ばしてから、ずるずるとレイヴンを引っ張って医務室から出て行った。
「ちょっ!! ま、待てレオン!! おいっ!! あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
レイヴンの声が木霊する。
がんばれ、レイヴン。
負けるな、レイヴン。
「……邪魔をしたか?」
二人になった医務室で、シリル君がぽつりと呟く。
え?
もしかして、嫉妬してくれてる?
いや、まさかそんなはずないか。
そう思いながらも「嫉妬ですか?」と揶揄うように聞きかえすと、白く血色の悪い顔がみるみるうちに赤く染まっていった。
────マジ?
「行くぞ。図書館で勉強して、夕食だ」
淡々と言ってからシリル君は耳まで赤くしたまま私に背を向け、そのまま扉に向かって歩き出す。
「へ? あ、ちょっと、シリルくん!? 置いてかないでくださぁーい!!」
結論。
今日もシリルくんは可愛いです。
皆様いつもありがとうございまぁぁす!!!!
ブクマ300まで後少し……!!
また記念に短編を描いております♪
お楽しみに☆←ただ描きたいだけ(笑)




