私と彼の1週間ー6日目ー未来への約束ー
ドシン──ッ!!
大きな音と風圧とともに、村の中心の広場へと降り立つグリフォン。
砂埃がグリフォンの足元を舞う。
シルヴァ様は私を抱き上げグリフォンから飛び降りると、スタンッと地上へと着地した。
刹那──。
「お姉ちゃーん!!」
パン屋から飛び出してくる小さな女の子。
ラピスラズリのような深い青の瞳をキラキラ輝かせながら、迷わず私の方へと走ってくる。
私が思わず両手を広げて待ち受けると、躊躇うことなく勢いよく腕の中へと飛び込んできた。
「お帰りなさい!!」
「はい。ただいま、です」
彼女の屈託のない笑顔に、私もふにゃりと笑って応えた。
クレアに続いて「無事でよかった」とおばさんとおじさん、そして様子を見ていた村人達もぞろぞろと家から出てきた。
「すごい鳥さんね」
クレアがグリフォンを見上げる。
鳥さん。
うん、確かに鳥さんだけど。
伝説級の鳥相手に鳥さんって……。
「これ……グリフォンじゃないか!!」
「嘘……初めて見た!!」
「ありがたやありがたや!!」
グリフォン大人気ね。
まぁ普通に暮らしていてグリフォンに出会えるなんて事まず無いし、興奮するのも無理はないか。
「お姉ちゃん、これ、私守ったわよ!!」
そう言ってローズクォーツのペンを私へと差し出すクレア。
フンッと鼻息荒く興奮気味に私を見上げる彼女に、私はふとレイヴンを思い出した。
あ、これ、あれだ。
取ってこいして取ってきたから褒めてって言ってるレイヴ……ワンコみたいな感じだ。
クレア可愛すぎか!!
「ありがとうございます」
私は笑顔でそれを受け取ると、クレアの頭を優しく撫でて「さすが私が見込んだ騎士様ですね」と言った。
「えへへ」
照れ臭そうに話あるクレアが可愛すぎる……!!
あぁ、連れて帰りたい。
我慢できずに私がそれを言い出す前に帰らなくては!!
「シルヴァ様、いきましょうか」
「ん? あぁ、そうだな」
私がシルヴァ様に言うと、彼はうなづいて村人達に向けて口を開いた。
「皆、魔物は全て討伐した!! 安心して過ごしてくれ!!」
偉大なる騎士団長であり領主様でもある彼のその言葉に、村人たちの歓声が上がる。
「領主様!! ありがとうございます!!」
「さすが騎士団長様だ!!」
「クロスフォード騎士団長!! 本当にありがとうございました!!」
本当に慕われてるのねシルヴァ様。
爽やかで優しくてとっつきやすいシルヴァ様だ。
そりゃ慕われもするだろう。
どこかの眉間に皺が定着している陰キャ属性のお方よりは親しみやすいはずだ。
先生ももっと笑ってみれば良いのに。
──いや、だめだ。
そんなことをしたらファンが増える。
「私だけでは駄目だっただろう、騎士団の皆とこの少女のおかげだ」
そう言われて見上げれば、優しい眼差しが降ってくる。
うっ……。
やっぱりこの顔で微笑まれると色々つらい。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「いいえ、こちらこそ、大切なペンを守ってくれてありがとう」
そう言って微笑むと、クレアの笑顔が少しだけ陰る。
「お姉ちゃん、もう行っちゃうの? 私のおうちのパン、食べていってよ」
キュッと私の服を掴んで見上げるクレアに、私は目線を合わせるようにしゃがんで、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「また会えますよ。そうですねぇ……、あなたがピンチの時、私はきっとあなたを助けに来ます。どんな怖いものからも、私が守ってあげますから、その時まで、少しのさよならです」
五年後。
私がきっと彼女を守るから。
だから待っていて。
「うん、わかった。約束よ?」
「はい。約束です」
それは未来への約束。
必然を見据えた、私たちが始まるための約束。
私はシルヴァ様と視線を交わすと、シルヴァは頷き、再び私を抱えてグリフォンの背へと飛び乗った。
イケオジか……!! ──イケオジだ。
「では皆さん、お元気で」
ふにゃりと笑って地上の人々へと手を振る。
やがてグリフォンはゆっくりと浮上すると、大きな翼を羽ばたかせ、大空へと舞い上がった。
同時に地上から歓声が湧き起こる。
「ヘンタイのお姉ちゃーん!! 元気でねー!! 約束、忘れないでねー!! ありがとー!!」
よく通るクレアの声は、どんなに地上から離れても、人の顔が見えなくなっても、耳にしっかりと届いていた──。
こうして物語は繋がっていく──。
未来への約束でした( ´ ▽ ` )




