私と彼の1週間ー6日目ー闇堕ちグリフォンー
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広がる冷気と凍りついて割れ落ちた葉や枝。
その惨状全てが激戦を物語っている。
そんな荒れた地の奥に輝く銀色が氷を纏い揺れていた。
「シルヴァ様!!」
「ヒメ嬢!?」
私が彼の名を呼ぶと、彼はすぐに反応し、とんでもないものを見たように目を大きくした。
「なぜあなたが!? こちらへ来てはいけない!! すぐに引き返すんだ!!」
いつも爽やかな彼が必死の形相で声を荒げる。
それもそうだ。
だって彼が対峙しているのは──。
「グリフォン……!!」
SSS級の魔法生物の、闇に堕ちた成れの果てだったのだから──……。
超希少種であるグリフォン。
大きなくちばしと鋭い黄金の眼。
ライオンのような動物の下半身に鷲のような上半身と翼を持った高貴な魔法生物。
本来は頭の部分は真っ白で、くるみ色と飴色が混在する翼と身体のはずが、今は瘴気によってドドメ色のオーラを放っている。
知能が高く賢く、それでいて美しく気高き魔法生物。
人を襲うことなどない神聖な存在としても崇められている存在だ。
そんなグリフォンがこの地で暴れている。
これも瘴気のせいか……。
「ヒメ嬢!! 帰りなさい!! そしてシリルとフォース学園長を呼んで──」
「大丈夫です」
自分よりも遥かに大きな巨体と対峙しながらも私に必死に帰るように説得するシルヴァ様の言葉を遮って、私は冷静に彼の状態を観察する。
所々血が流れている。
致命傷はないけれど、積もれば後々判断が崩れ、戦いにも影響が出そうね。
それだけ見ると、私は今度はグリフォンの眼をじっと見つめながら、ゆっくりとシルヴァ様の隣へと歩みを進めた。
「グリフォンさん、ごめんなさい。私、ここでやられるわけにも、この人たちをやらせるわけにもいかないんです」
怒りと憎悪、全ての負を背負ったかのようなその鋭い眼をじっと見つめたまま、私はその大きく尊い存在へと語りかける。
この子は何も悪くない。
悪いのは争いを繰り返し、憎しみを生み、瘴気が満ちるきっかけとなった人間なのに。
途端に意識の中の何かが浮上してくる。
“そうだ。全て愚かな人間のせい。──だからこそ──”
「だからこそ、私がなんとかするの」
引き摺り込もうとする声に意を唱え、私はニッと笑ってからグリフォンへと駆けた。
シュンシュン──!!
風魔法を身に纏わせ、薄汚れた瘴気の空へと舞う。
「昏き空を割って 光差す方へ
闇に閉ざされた扉を開け
穏やかなる言の葉を聞け
らららる──……らららら──……」
魔力を増加させるため、歌に魔力を乗せる。
刹那、廃れた地から緑が生まれ、青々とした草が伸び、グリフォンの太くがっちりとした足に絡みつきその巨体を捕らえた。
「グルッ!! グルルッ!!」
振り払おうと身体を揺さぶるも、意外と頑丈な草はまるで蔦のように深く絡まるのみ。
完全に身動きを封じられたグリフォンは、それでも体を右に左に揺らしながら必死に自身を縛る枷から逃げようともがく。
ごめんね。
すぐに助けてあげるから。
コルトの森に再生を──!!
闇に堕ちたグリフォンに解放を──!!
祈りを、魔法を、歌に乗せる。
両手いっぱいに抱えた光は空へと舞い上がり、闇落ちグリフォンや傷ついたシルヴァ様、葉や枝が折れ大地がすり減った森全体へと降り注ぐ。
淡い光は瘴気に塗れ澱んだ紫色の靄を放つ空をも飲み込み、溶け合っていく。
まるで上から天色の絵の具で塗り替えられているよう。
そして一瞬にして夏の風光る空が現れる。
あっという間に森に緑が戻り、シルヴァ様の傷は癒え、グリフォンからは禍々しいオーラが消えていた。




