私と彼の1週間ー4日目ー憎愛する者達ー
「大丈夫かい?」
先ほどまでの険しい表情から一転、表情を和らげ眉を下げて私を見るフォース学園長。
私の心情を慮るような視線に、改めて自分の立場を認識する。
そうか、これが王族の始祖。
私の先祖なんだ。
ただ、心配されるほど実感はないのだけれど。
「……鬼神様は──人を今も憎んでいるでしょうか?」
私の頭の中であの低く地を這うような、憎しみを訴える声が蘇る。
赤い目の鬼神様。
赤い目の私。
そして時折聞こえる、人を恨み呪うような声。
あれはもしかして──鬼神様なのだろうか?
「人は愚かだからね。憎らしくもなるさ。でもね、僕もそうだけれど、愚かだと思いながらも情をかけてしまんだよ。長く生きているとね、愚かで、でも愛おしく感じてしまう。鬼神様もそうなんじゃないかな。……さてヒメ、君は鬼神様の容姿や力を色濃く受け継いでいるようだけれど……何か、異変はないかい?」
じっ……と私の目の奥まで見るかのようにフォース学園長が私を射抜く。
「なんで──」
「その目」
私の目を指さしてから心配そうにいう彼に、まさか……と不得意な氷魔法で氷の手鏡を作り出し、自分の顔を映し出すと……。
赤い────。
私の目は、血のような濃い赤に染まっていた。
「き、気持ちの制御ができない時はこうなりますけど、あとは何も無いですよ。鬼神様の真実に、少し驚いただけです」
私は学園長を心配させないようにふにゃりと笑みを浮かべた。
「そう?……ならいいんだけど。何かあればすぐに言うんだよ?」
尚も心配そうに私を見ているフォース学園長に私は「わかりました」と返事をすると、ポケットからペンを取り出した。
異世界転移をして初めての祈りの日に先生がくれたローズクォーツの無限インクペン。
それを見ていると不思議と心が穏やかになる。
先生の顔、先生の声、先生の温度を思い出すだけで、不思議と心の波は鎮まっていくのだ。
そうしているうちに私の目から熱が退いていくのを感じ、フォース学園長が「へぇ、すごいね、そのペン」と身体を前のめりにして言った。
「先生が──未来のシリル君が初めて私にくれた大切なペンですからね」
そう幸せいっぱいに微笑みながら返した私の言葉に、学園長はその答えを予想していなかったかのように目と口を大きく開いたまま、ポカンとした表情で固まるのだった。




