【Sideシリル(15歳)】とある公爵令息の災難
本日はここまで!
第3章も皆様よろしくお願いします(*^^*)
夕方、聖域に行ったのは間違いだった。
あの日から足を踏み入れることのなかった場所。
なのに何故か、その時は行かねばならない──そんな気が漠然として、私を突き動かした。
「いやぁぁぁぁぁどけてどけてどけてぇぇぇぇ!!」
感傷に浸っているのも束の間、騒々しい女性の叫び声に私の思考は遮られ、空を仰いだその瞬間──。
ドンッ!!
私の視界はローズクォーツ色でいっぱいになった。
そしてほんの少しの身体への衝撃と、唇への柔らかな感触──。
は────?
思考が完全停止した。
結論から言おう。
私は────何故か空から降って来た女によってファーストキスというものを奪われた──。
別に大事にとっていたとかそういうものではない。
ただ、こんな形で奪われるとも思っていなかった私は、しばらく息をすることも忘れるほどに混乱していた。
唇が離れてから私は自分の状況を観察しながら冷静さを取り戻していく。
黒曜石の如き黒く長い髪──。
記憶の中の幼い姫君が脳裏をよぎる。
ローズクォーツを散りばめたような美しい瞳。
私の至近距離からの攻撃魔法をもかわすほどの瞬発力を持つ少女。
後から現れたフォース学園長により、彼女が学園長の知人で、1週間ここにいることがわかった。
そして何故か私が彼女の面倒を見ることに……。
とんだ災難だ。
なんで私が。
だが任されてしまったものは仕方がない。
苛立ちながらも私は彼女を連れて食堂へと向かった。
初めての人間なら戸惑うであろう注文の仕方であるにもかかわらず、スムーズに注文していく少女に、前にも来たことがあるのではないだろうかとの疑問を抱く。
そしてそれは当たっていた。
一度だけ、来たことがあるらしい。
色々と手間が省けて助かる。
コロコロとよく表情が変わり、何かとよく笑う。
時折気色の悪い笑い方をするけれど悪い人間ではなさそうだ。
私が名を呼んだだけでそのローズクォーツの瞳をキラキラと輝かせ、頬を染めて喜ぶ変な女性。
とりあえず1週間。
乗り切るしかない。
「はぁ……面倒な……」
窓に映る月に向かって私は一人こぼすのだった。




