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Aqua Garden~光の勇者と水の巫女  作者: 麻岡るり
chapter.3 そうだ、お城に行こう!
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通行手形、下さい。

残念イケメン登場。

私は素直に普通のイケメンが出せないらしい……

 ローランドの城下町までの道程は、人型に戻ったシャーロットを加えて3人で。祠の敵とは違い、やっぱり雑魚ばっかりのフィールド上の魔物たちを薙ぎ倒しながら、あっさりと進んでいった。


「城下町に入る前に、一応通行手形の発行所に行ってみるね」


 シャーロットが1人で行く、というので。私と慎は街並みを眺めながら過ごすことにした。


 もちろん、ここでも盛大な大歓迎の人々に囲まれ、顔を引きつらせながら対応したのは言うまでもない。シャーロットめ、実は逃げたんじゃないか?


「なぁ、瀬里香。ガーデニアには水の女王の彫像があったけど……これって、女王とティリシアの像だよな?」

「あー。慎のご両親の、ってことだね」


 見上げてみれば、城下町の入り口に壮大な2人の立ち姿。それぞれ、杖と剣を構えているところから、戦闘態勢なのが分かる。


「俺が似てんのは親子らしいから仕方ないとして……瀬里香、お前も女王にそっくりじゃね? ガーデニアの時も思ったけど」

「髪型と、ワンピの型が似てるのもあると思うけど」

「そういや、結局髪下ろさねーの? 結んでないと邪魔だもんな」

「ポニーテールも凶器になりそうだけどね」


 慎のご両親――。今まで、あまり考えてなかったけれど。私たちの世界(ガーデン)から来たんだよね、この2人も私たちみたいに。


「簡単に、アビオ様から2人のことは聞いてたんだけどな……。やっぱ、似てるとはいえ、まだ親って気にはなんねぇな。俺の親父は、鷹沢京一郎だとしか言えねーわ」

「――ごめんね、慎。今まで、全然話聞いてあげれなくて。最初は、私が召喚されただけだと思ってて、慎を巻き込んじゃって申し訳ないと思ってたから」

「まあ、結局は俺の事情がメインだった訳だし。瀬里香が謝る必要ねーって。ただ、巫女としての素質を持つお前が俺の傍にずっと一緒にいてくれたのは――多分、偶然じゃねぇよな。むしろ、瀬里香がいてくれて良かった。サンキュ」

「慎……」


 うわっ……ヤバい。心臓が、苦しい。きゅっ、と締め付けられて、顔に熱が集まって。久々に、真剣な慎の表情を真正面から捉えた私は目も逸らせずにいた。


「やあ、巫女様と勇者様。お取り込み中かな?」

「は――っ!?」


 背後から、突然掛けられた声。更に、流れるような仕草で、私の手を取って、声の主はチュッと手の甲に軽く口づけてきた。


「なっ……何すんの!?」

「――瀬里香から離れろ!」


 その手から奪い取るように、素早く慎が私を抱き込んで自分の背後に隠すようにして立ちはだかった。


「ほんの挨拶だよ。やだなー、ガーデンでは馴染みがないのかな?」


 ニコニコ、まるで悪気のない様子で。周囲のざわめきなんか気にも止めていない、といった風だ。


「初めまして。僕はフィル。さっき、婚約者殿と一緒にいたよね? 逃げられちゃってさぁ。君たちのところにいずれ戻ってくるだろうから、一緒にいていいよね」

「シャーロットの婚約者……。あなたが?」


 確かに、聞いていた通りの金髪碧眼のリアル王子様ばりのイケメンだ。シャーロット、イケメン好きなのに嫌がってたけど……女好きって言ってたっけ。それ、どっちもどっちなんじゃないの?


「お前がいたら、シャーロットも戻ってこないかもしれないだろ」

「えー。そこまで嫌われてるの、僕?」

「初対面の俺に訊くなよ」


 フィル、は――確かにイケメンだ。乙女ゲーム展開なら、私が目をハートにして舞い上がる場面なんだろうか? 私のイケメンセンサーは、やっぱり慎限定のようだ。


 何か、安心したかも。さっき、手の甲にキスされたのだって、ドキドキじゃなくてゾワゾワしたし。相手が慎なら、多分卒倒してたはずだ。


「巫女様は――セリカ、だよね? 僕もシャーロットと同じ、従者候補なんだよ。知ってた?」

「そ、そうなんですか? ローランド城に行くにはあなたに会った方がいいとしか聞いてませんでしたけど」

「ふーん、そっか。じゃあ改めてよろしくね、セリカに、シン?」

「――候補、ってだけだろ。お前の力は?」

「せっかちだなぁ、勇者様。僕はね、既に炎の精霊王の加護持ちだよ。君たちを精霊王のところに案内してあげるよ?」


 何ですって。既に加護持ち、とか。そんなチートもありなのか!


「案内ならありがたくしてもらうが、炎の魔法の使い手ならシャーロットでも十分だと思うぜ?」

「シャーロットの得意としてるのは、風魔法だよ。シンだって、まだあの子の全力見てないでしょ? もちろん、僕の力も。魔法も得意とはしてるけど、僕のメインはコッチ」


 フィルは左腰の剣に指を差す。細身の剣――多分、レイピアだろう。イメージ的に、両手剣とかではなかったもんね。やっぱり、といったところか。


「あと、勇者様程ではないけど、光魔法も弱いのなら使えるよ。色々、お得だと思うんだよね~僕って」

「いやいや、自分で言わないでよ」

「麗しい巫女様の役に立たせて欲しいんだ。ダメかい?」

「……ダメかと言われましても。ってか、慎。殺気しまって! さっきから駄々漏れだよっ」

「アハハ、さっきから殺気? セリカは面白いねー」

「ダジャレじゃないから! お前は黙っとれ!!」


 ヤバい……突っ込みが追いつかない! こいつ、ボケというより超絶マイペース人間だ。シャーロット、こんな婚約者確かにイヤだ。取り敢えず、頑張って逃げろ。


「あ、シャーロット発見。じゃあ、考えておいてね。ひとまず婚約者殿を捕獲してくるからさ」

「シャーロット……逃げてぇ!」

「逃がさないよ。シャーロットも、セリカのこともね」


 うわぁ……イケメンがウインクすると様になるんだなぁ。変な方向に感心した私を、何故だか不機嫌そうになった慎が引き寄せる。元々くっついてた上に更に引っ張られた私は、足を取られてつんのめってしまった。


「ちょっと、慎!?」

「いいから、ちょっとこうしてろ」

「え、えぇ~?」


 これって、嫉妬とか。フィルに私が絡まれてるのが気に入らない……とか?


 ど、どうしよう――だったら、めっちゃ嬉しいんですけど!




 結果として、当然の如く捕獲されてしまった哀れな子羊ちゃんことシャーロットは、何故だかお姫様抱っこをされたまま放心状態だ。あれか、考えたら負けだから諦めたのか。


「僕から逃げようなんてバカだね、シャーロット。お気に入りの君を逃がす訳ないじゃない」

「うるさい、この女ったらし! セリカにだって色目使ってたくせにっ。あたし、ちゃんと見てたんだから」

「ふふっ。可愛い、ヤキモチだね。大丈夫、一番愛してるのは君だからね。シャーロット――」

「い、いやーっ! どさくさ紛れにキスしないでっ!!」


 うわぁ~。何だろう、コレ。砂吐きそうなんですけどー。


「イチャイチャしたいのは分かった。だが、今はこっちの用件が先だ。城に案内してもらおうか? でなければ、通行手形は俺と瀬里香で使うから、お前は後からシャーロット連れて来い」

「ちょっと、シン! あたしを売ったわね!?」


 まあ、確かに。手形は二枚あることだし。フィルが顔パスだってんなら、その婚約者たるシャーロットも大丈夫なんじゃね? とは私も思ったことだ。


 まあ、そもそも。私たち、勇者と巫女なんだから手形なんかいらなくね? この世界も、色々面倒だよね。こんなこと言ってたら、また慎に面倒くさい言うな、って怒られそうだけど。


「ってか、聞き忘れてたけど。フィルって何者なの? 結局」


 手形いらずの顔パスで、シャーロットの婚約者ってことはフィルだってそれ相応の身分だよね。


「あれ、言ってなかったっけ?」

「あー。あたしも教えてなかったわ、そういえば。そもそも会いたくもなかったから」

「シャーロット。ツンデレもいいけど、会いたくない、なんて嘘はダメだよ?」

「嘘じゃないもんっ」


 バカップルはほっとけ、と。慎が、溜め息混じりに進言する。


「あれは、バカ王子だろ。何かそれしか思いつかねーわ」

「バカ王子……。あー。なるほど」

「ちょっと、2人ともバカは余計だからね。王子は正解だけどさ」



 ティルローランドの中央(セントラル)にある大陸の、一番大きなお城――それが、ローランド城だ。私たちが今いるのが、そのローランド城の城下町で。


 ティルローランドを守護しているのは、慎のご両親である水の女王様で……塔の中で眠り続けるティリシア様の力なのだが。実際の政治というか、統治をしているのは、元々ティルローランドを治めてきたローランド王家だ。


「フィリシア・ノーラ・ローランド。一応、第一王子だよ」

「何て言うか……軽ーい王子だよね」

「ホント、それな」

「ってか、フィリシア、って……ティリシア様のパクリ?」

「それは名前を付けた父王に言ってくれないかな? 僕は普段はフィル、で通してるんだし」


 グッタリしたままのシャーロットを腕の中に抱えたままのフィルは、ニコニコ笑顔を崩すことはない。


「王である父上も、君たちに会いたがってるんだ。王妃の母上もね。不本意かもしれないけど、炎の精霊王はローランド城の地下にいるんだ。ついでと言ってはなんだけど、謁見は避けられないからね」

「お前な……軽く言ってるけど、半分強制だろ、ソレ」

「やだなー、半分じゃなくて全部のつもりだけど?」


 マイペース王子様は、ニコニコな風貌に対し、なかなかの曲者らしかった。まあ、逆らうつもりはなかったのだけど。



この話は、ラブコメです。ニコリ。

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