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Aqua Garden~光の勇者と水の巫女  作者: 麻岡るり
chapter.2 バトルしました。
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大地の精霊王様と孫娘。

大地の精霊王様は、シャーロットのお祖父様でもあります。長老は、父方なので人間ですよ?

 ……大地の祠までは、フィールド同様の雑魚敵ばかりで。バトルなんてあってもないようなレベルだった。2人で無双しまくっていたものだから、シャーロットには強さを絶賛され、気の緩みもあったと思う。


 ――正直、なめてました。


「やっぱり、チートなんて最初だけじゃん! 気合い入れ直すよ、慎!!」

「ああ。手応えなくて、腕が鈍るとこだったんだ。ちょうどいい、まとめて相手してやる」

「ちょっと! 私の分も残しなさいよ!?」

「りょーかーい」


 気の抜けた返事とは裏腹に、慎の剣筋は冴え渡っている。


 祠に入ってから、やたらと植物系の敵が増えてきた。しかも、急激に敵のレベルが上がっている。すかさず分析した私に相槌を打って、慎が繰り出したのは真空刃。しかも、いつ習得したのか、炎の属性も帯びているようで。切り裂かれた魔物たちは、瞬時に焼かれていく。


「ふーん。やるじゃん、勇者様。そうでないと、セリカを護るなんてできないでしょうけどねっ」

「そういうお前も、なかなかやるじゃねーか? 妖精は、魔法が得意ってのは異世界の常識か」

「まーね。ただ、あたしの場合はクォーターだから、人型になってもそれなりにイケるわよ!? 威力も上がるしねっ!」


 可愛い見てくれからは、まるで想像もできない火柱を立ち上らせるシャーロットは、味方として非常に頼もしい。リアル魔法少女……しかも妖精だ。火柱の風圧で、捲れ上がったスカートのパンチラに目を奪われた、なんて変態やってる場合ではないのだが、やっぱりシャーロットは可愛い。


「おっさんか、瀬里香」

「だって、可愛いは正義なの!!」


 いけない。慎のカッコよさは見慣れてるから、ついついシャーロットの方に目がいってしまう。慎のキラキラぶりを、余すことなく脳内カメラに写さなきゃならないというのに。


「セリカ! あの魔物だけは水魔法に弱いの。一発ぶっ放せる?」


 突如、シャーロットからの依頼だ。何ですって、水魔法弱点の敵もいたのね。任せなさい!


「もちろんよっ」


 瞬く間に、魔力を練り上げていく。うん、いい感じに魔力が高まった。これなら、イケる!


「――アクアスプレッド!!」


 水の刃が、杖の先から飛び出していく。あ、この感覚。これだ、私に足りなかった、魔力の解放感。


 やっぱり、私には癒しだの護りだの巫女巫女しい(?)のは性に合わないのだ。ぶった切るのが、一番!


「いっけーっ!!」


 よし、次は範囲攻撃だ。アクアスプレッドを更に強化して……渦のように、魔力を回転させていく。


「――アクアトルネード!」


 よしっ、初挑戦で大成功だ。魔力は……まだ尽きる気配はないようだ。


「はわわ~。セリカ、もう魔力抑えていいみたいだよ?」

「へっ? どういうことよ、シャーロット」

「水魔法弱点じゃない奴らも、根こそぎ倒しちゃったみたい。さっすがセリカだね!」

「はあ……俺の存在意義まで奪うなよ、瀬里香?」


 苦笑した慎が、私の頭をグリグリと撫で回してくる。えーと、それって、つまり。


 私が暴れまくって無双したってこと、だよね?


「えへへ……。ちょっと調子乗りすぎたかな?」

「いいんだけどな。一応、俺が勇者様とやらなんだから、お前はもうちょい魔力温存しとけよ」

「慎の見せ場を奪うつもりは……」

「分かってるって。お前の暴走なんざ、あっちの世界でだって何回も止めてたからな」


 ――何か、ゴメンナサイ。暴走特急か、私は。


「いいなー。何か、分かり合ってます~みたいな感じ」

「羨ましいか、だが、このポジションを渡す気は毛頭ない」

「別にシンのポジションが欲しい訳じゃないもん。そうっ! 私にはセリカの親友ポジションというものを目指すという道があるじゃないのっ」

「親友ポジションって……。親友は、目指すもんかは分かんないけど、今までシャーロットみたいに仲良くなれた女の子っていなかったよ?」


 シャーロットの満面の笑みが、私を攻撃してくる。すかさず人型に戻って抱きついてくるものだから、私は瀕死状態だ。ヤバイ、萌えが飽和状態で死ねる……!


「セリカ! 大好きっ。結婚して!」

「いや、それは無理」

「そう言わず! そこを何とか!」

「何ともなんねーよ!」


 ――祠の奥で繰り広げられる、女の子同士のイチャイチャ。慎が見ないフリを決め込んでいるが、そろそろ精霊王様もこの光景を目にしているのではないだろうか?


 あれ、いいのかな。こんな状態で。


「相変わらずだねー、シャーロットは」

「お祖父様っ!」


 やっぱり、見ておいででした。怒ったり、怒鳴ったりはなさげだが。……うん。孫を、可哀想なモノを見つめるようにしている。そうか、シャーロットはこれがデフォルトなのか。


「やあ、君たちが新しい勇者と巫女だね」

「大地の精霊王様――ですね」

「ああ。孫に振り回されているようだね? まあ、頑張れ」

「どうせなら、何とかしてくれませんか……」


 無理、と。精霊王様の眼は愉しそうに歪んでいる。最早、面白がっているのだろう。イタズラ好きとか言ってたもんな。そりゃ楽しかろう。自分の孫が、勇者パーティーを引っ掻き回してるんだから。


「まあまあ。シャーロットは役に立つよ? この子の母親は、魔法の才能がからっきしでね。その代わりというか、シャーロットは幼い頃から抜群の魔法センスでね。自慢の孫なんだよ、私にとっても」

「お祖父様が誉めて下さるなんて初めてです! そんなこと、言われたことなかったのにっ」

「言ったことないからねぇ。お前、そんなこと聞いてたら天狗になって魔法の鍛練もしなくなっちゃうでしょ?」

「うっ……ソウデスネ」


 ただの祖父バカかと思いきや、ちゃんとシャーロットのことを想っての接し方をしてきたようだ。まあ、お祖父様、といっても精霊王様だし。普通の祖父と孫のようにはいかないのだろうけど。


「あの、精霊王様。大地の加護を授かりたいのですが……何か、条件や試練などは?」

「ん? ないよー、そんなの。面倒くさい」

「め、面倒くさいんですか。瀬里香みたいなこと言わないで下さいよ、精霊王様……」


 脱力する慎を見て、精霊王はアハハッ、と愉しそうに笑っている。


「何だー。巫女も……セリカも面倒くさがりなんだ? 僕とお揃いだね」

「いやいや、何を呑気なことを」

「勇者は……シンは、振り回される苦労性か。いいね、愉しそうなパーティーだ。僕も久々に冒険に出たくなってくるなぁ」


 いやいや、精霊王自ら冒険の旅とか。聞いたことないから。


「お祖父様はダメですよ? あたしが、立派に従者のお役目を果たしてご覧にいれます!」

「うんうん。頼もしいね、さすが僕の可愛い孫」


 やっぱり、ただの祖父バカかもしれない。


「大地の加護はね、目に見えないんだ。僕に逢った時点で既に君たち全員に勝手に付いてると思うよ。加護というのは、精霊王に気に入られさえすれば貰えるものだからね」

「気に入られさえすれば……ですか?」

「うん。つまり、僕は君たちがとっても気に入ったってことさ」

「えっと、それは、その……ありがとう、ございます?」

「ふふっ。何で疑問系なの。面白いねー、セリカは本当に」


 シャーロットといい、精霊王様といい。何処をどう気に入られたのか。私には、全く分からないのだが。慎もやっぱりよく分かってないみたいだし。


「さあ。大地の加護の次は、炎の加護だよ。炎の精霊王は暑苦しいけど、バカ正直だからね。アイツには、嘘偽りなく接しさえすれば簡単に加護が貰えると思うよ。頑張ってね」


 大地の精霊王は、ふざけた口調を正し、次の道しるべとなるべきセリフをくれた。


 そこで反応を見せたのがシャーロットだ。可愛らしい顔が、嫌なモノを見たように歪んでいく。


「炎の精霊王……ってことは、ローランド城に行かなきゃなんないのかぁ……」

「うん。シャーロットは、彼に会いたくない? フィルは、シャーロットのことを気に入ってるんだろう?」

「イヤよ、あんな女ったらし! 婚約者だなんて認めてないんだからっ」


 まさかの、婚約者発言。


「シャーロット、一応精霊王の孫娘だもんねぇ。婚約者なんているんだ」

「階級的には、公爵家相当だからね。公には、アスグリンの孫娘でもあるから、そちらを名乗らせてはいるけど」

「レグルスお祖父様は、あんな婚約無効だって言ってくれたもの! フィルなんか、婚約者でもなんでもないわっ」


 あらあら。シャーロットの表情から察するに、認めないとか何とか言いながら……憎からず想ってる風なんだけど。自分でも気づいてないのかな。


 慎も、すぐ察したみたいだけど。愉しそうに、含み笑いしてる。――絶対、シャーロットをからかうつもりだ、あの眼は。


「どうせなら、フィルに城まで案内してもらいなよ、シャーロット」

「ぜっっっったい、イヤです!」

「ええ~だって、通行手形とか必要なんだよ?」

「お祖父様が何とかして下さい!」

「だって、面倒くさいし」


 うわぁ……可愛い孫相手にも面倒くさいんだ。あれ、本気の発言だよなぁ。


 結局。精霊王様が用意してくれた通行手形は二枚。それも、たまたま以前に使わずに済んだのが残ってただけのモノだとか。もう一枚くらい出せ、とシャーロットが詰め寄れば。


「えっ、無理。作るにしても1ヶ月はかかるけど?」


 だそうだ。何だ、それ。脱力した、のはシャーロットだけじなない。さすがにそんなに待てる訳ないだろう、と。慎がシャーロットを押し切り、ローランドの城下町にいるであろうシャーロットの婚約者――フィル・ノーラに会いに行くことになったのだった。



 大地の精霊王様曰く。フィルは……金髪碧眼の絵に描いたようなイケメンらしい。


 そう言う精霊王様も、さすが年齢不詳な妖精族を束ねる長だけあって、見た目も若ければ、完璧大人の男の色気溢れる正真正銘のイケメンだ。シャーロットの可愛さにはメロメロだった私だが、イケメンの精霊王様には萌えが発動しなかった。


 それを指摘した慎が、お前は百合属性に目覚めたのかと遠目になっていたのでガッツリ否定したのだが。あれ、本気で疑ってなかったか? 確かに、シャーロットに会ってからは慎に対する萌えが足りてないかもしれない。


 よし、ちょっと本気出そうか。待ってて、慎!


「何か……寒気する」

「えーっ。風邪でも引いた? セリカ、慎にヒーリング掛けてやったら?」

「シャーロットはいい子だね。優しい。ほんっと、天使!」

「きゃーっ! またセリカに褒められた~」


 慎の視線が生温い。いや、だってシャーロットが可愛いんだもん。仕方ないじゃないかーっ!



ここにも祖父バカがいた……。


次で、ようやく固定パーティーが揃います。イケメン祭り、今度こそ…!

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