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Aqua Garden~光の勇者と水の巫女  作者: 麻岡るり
chapter.1 召喚されました。
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旅立ちの神殿。

瀬里香と慎の容姿に関する説明回になります。

あれ、また説明?

 慎を含む、鷹沢家の面々の顔面偏差値が高いことは既に知ってもらえたと思う。


 そして、更に我が家――河野家の顔面偏差値も高いことを追加しておきたいと思う。


 父は、年齢を感じさせない童顔で乙女ゲームなら年下可愛い系。いわゆる、ゆるふわなのに実年齢はおじさん。はっきり言って詐欺のレベル。兄と思われても仕方ないレベル。


 姉の愛也香(あやか)は、そんな父によく似たゆるふわ系の美女だ。童顔ではないから、父と並んでいるとよく似た兄妹。下手したら姉弟に間違われる。


 母は、そんな父や姉とは真逆のクールビューティー。黒髪ストレートの美魔女だ。


 一応、私は母似ではあるはずなのだが、クールでもなければ、ビューティーとは違う。多少は、可愛い部類だとは思うのだが(自己判断)周囲の顔面偏差値の高さに気圧されて、とてもじゃないが、彼らに太刀打ちできるレベルではないという自覚ぐらいはある。


 ちなみに、姉の結婚相手である義兄……婿入りしてくれた、正義(まさよし)くん。彼は顔面偏差値ブッチギリの慎の友人で、それに見劣りしないだけのイケメン。


 慎の友人ってことで、姉とは5歳も離れていることになるが、並んでいても歳の差は感じさせない。儚い美女なイメージの姉を守る騎士(ナイト)的なマッチョ系のイケメン。


 私とは、シスコン気味な私と姉を愛でる者同士、とても仲がいい。愛也香を愛でる会の会長と副会長なのだ。(会長はもちろん私)


 同居を始めて1年も経てば最早完全に家族の一員な訳だが、顔面偏差値の高い河野家においても義兄は全く見劣りしない。


 そんな訳で。私が一番の凡人なのだけは間違いないと、胸を張って言える。



 だから、何というか――容姿のことで絶賛されたことなんて、今まで縁がなかったせいか非常に戸惑っている。


 というか、本当に私に対する評価なのか疑わしいレベルで絶賛されまくってしまい、はっきり言って信じられない。


「巫女様、セリカ様とお呼びしても?」

「は、はぁ……どうぞ」

「ありがとうございます! さすが巫女様、水の女王によく似た面差し……それとはまた違った可憐な、花のような愛らしさ!! 凛とした、気高き雰囲気も持ち合わせ……」


 どうしよう。異世界転移にありがちな魅了魔法とか発動してるんじゃないだろうな? 自覚ないままに、とか自動的に、とか。


「ちょっと、慎。ニヤニヤしてないで止めてよ、コレ」

「コレ、って。大神官様――アビオ様だろ? たまには瀬里香も俺の気持ちを味わってみろよ。素直に褒められとけ、って俺にはいつも言ってるだろ、お前」

「慎の場合は、って。お世辞抜きに本当にイケメンなんだから当たり前じゃないの! 私には無理っ。実力の伴ってない称賛ほど虚しいものはないんだからね!!」


 大神官だと名乗ったアビオ様は、まだ足りないのか私への賛辞を止める気配がない。


 涙目で慎を見上げれば、何故だか表情を失くした慎が、自覚ないって恐ろしい……とか何とか呟いている。


 自覚、って神官様の? ってか早く止めてよ、お願いだから。


「一応、お姉ちゃんの結婚式だったから、いつもよりは着飾ってるし薄くだけどメイクもしてもらったけど。元は、ただのお転婆JKだよ!? もしかして、異世界ではポニーテール(ポニテ)最強だったりする? 動きやすいから髪下ろすのやめただけなんだけど。それともやっぱり、このドレスっぽい水色ワンピのせい? お店で盛大に、似合ってるし可愛らしいってお世辞言われてその気になっちゃったけど」

「瀬里香、それお世辞じゃなくて、本音……」

「だって、私なんかと比べたら……ただでさえイケメンな慎のレアなスーツ姿見てから鏡に映る自分の凡人っぷり見たら、もう悟り開くしかないレベルだよ? はぁ、イケメン無罪。ちょっと、何溜め息ついてんの。溜め息つく姿すらイケメン過ぎ。もうヤダコレ、爆発しろ」


 最早、途中から何言ってんのか分からなくなってきた。


 心の声が丸出しになってる気がするが、気にしたら負けだ。何に負けるのか、よく分からないけど。



 慎は、今年高3になった私の2歳上である。

 出逢った頃の……多分私が3歳くらいだから5歳の慎は、幼いながらに完成された美を持ったそれは可愛らしい美少年だった。


 その頃の記憶なんて、ほとんどないはずだが、目の前に天使がいると思ったのだけはハッキリと覚えている。何故なら、ちょうどお気に入りだった絵本の天使にそっくりだったからだ。


 ――そういえば、出逢ったときの慎の髪は、絵本の天使と同じ綺麗な金髪だった。見事なプラチナブロンド。


 その後は、既に見慣れた黒髪になっていたから忘れていたが、慎が養子だと知ったあの葬儀の日に地毛が金髪で実は黒に染めていることも教えてもらったんだった。


 何で今そんなことを思い出したかというと、この世界――異世界をティルローランド、というらしい――が金髪の人間が圧倒的に多いことに気づいたからだ。


 慎の顔面偏差値は確かに高すぎだが、ちゃんと日本人だと分かる。……と思っていたが、こうして周りを見てみるとティルローランドの人たちにも似ているような気がしてきた。


 ますます、慎のイケメンオーラに拍車がかかっているような。


「巫女様、どうかなさいましたか?」


 半分魂が抜けた状態だった私を心配したのか、アビオ様に仕えていた女の子が声を掛けてくれた。


「えーと……貴女は?」

「神殿付きの神官でございます」

「お名前は?」

「メリル、と申します」

「メリルさん、ね。私のことも瀬里香って呼んでね。年の近い女の子、他にいないみたいだし……良かった。メリルさんがいてくれて!」


 私が笑いかけると、メリルさんは何故だか顔を赤くして嬉しそうに花が開いたように微笑んだ。


 おぉっ、メリルさんも姉には負けるけど、なかなかの美少女だ。(シスコン発動)


「それではセリカ様、何か心配事でもございますか? 先ほど、何やら物憂げなお顔をされていましたので……」

「あー、さっきね。あまりにもアビオ様が私を褒めまくるから、美化し過ぎじゃないかと遠い目になっちゃったのよ」


 溜め息をつきながら話すと、それを聞いたメリルさんの眼がカッと見開いた。


「美化だなんてとんでもございません! セリカ様の美しさは、私の語彙力では到底表せないほどの神々しさですわ!! 先ほどなど、ありがたくもお名前を呼ぶ権利を下さった上に、私の名前をお呼びになられて……その上、あのような蕩けるような破壊力のある微笑みまで! 私、倒れてしまうかと思いましたわ」


 ん……? あれ、何かアビオ様2号が出てきてしまった、かも。


 後ろでそれを見ていた慎は、だから本音だって言っただろうと笑っている。


 え、何で。私がおかしいとでもいうの? やっぱり、絶対魅了魔法だよ、コレ。解除方法、誰かプリーズ!!


「セリカ様の仰る魅了魔法、というものはティルローランドでは聞いたことがございませんがそちらの世界(ガーデン)にある魔法なのでしょうか?」

「ああ、瀬里香のアレは聞き流してやって下さい。こちらの世界(ティルローランド)には魅了魔法は存在しないんですね。向こうでも、現実にはありませんよ。虚構の、作り物(ゲーム)の中になら存在しましたが」

「そうでしたか。まあ、そのような魔法、使えたところで虚しいだけでしょう。それに、セリカ様ほどの魅力が溢れる方には全く必要もございません」


 慎と、大賛辞祭りをいつの間にか終えていたアビオ様の会話は私の頭には入ってこない。


 きっと、無意識にシャットアウトしているのだ。


 だって、美しいとか魅力とか。私には無縁の言葉たちだから。


「そういえば、魅了以外の魔法は普通にあるんですね?」

「はい、当然でございます! それこそ、セリカ様の水魔法などティルローランドの至宝。シン様の光魔法と双璧の最強魔法にございます!!」

「はい……? 俺の、光魔法?」

「巫女様と共に現れた勇者様――我々は貴方様の()()()を待ち望んでおりました」

「あれ、何か瀬里香と同じく現実逃避したくなってきた。何だこの超展開。――おい、瀬里香! いいかげんに戻ってきて、俺を助けろよ。巫女様なんだろ、お前!!」



 私だけでなく、慎までもが、この、とんでもない異世界転移の中心にいるのだと認識するまで……あと数分。


 慎の必死な呼び掛けに気づかない私は、しつこく現実逃避を続けていたのだった。


 えっ、魅了魔法なんてないんですか? そんなバカな!



要するに、瀬里香は無自覚残念美少女です。

慎は、ちゃんと瀬里香が可愛いと思ってるのでいつも訂正してきたのですが、残念思考が斜めに突き抜け過ぎで、全く理解してもらえません。途中から諦めたんじゃね、慎ってば。

ただでさえ慎が傍にいるせいで、瀬里香には男が近づく隙なんてありませんでしたからね。顔面偏差値的にも、戦闘力的にも。戦闘力に関しては、瀬里香自身も高いので、変な輩は返り討ちにしちゃいますが。実は、無自覚で二桁くらいは叩きのめしてます。精神的ダメージで。主に、姉と慎の愛を無自覚に語りまくってしまうので。

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