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09話 新米ハンター探索1

魔物との初戦闘を終えた翌日、アビイを連れてハンターギルドを訪れた。

そろそろ仕事を始めないと行方不明者が増えていたら大変だ。

ギルドに入るとジロジロと品定めするように見られる。

アビイと一緒だと小娘二人だから、いつも以上に視線を感じるな…。

さっさと用件を済ませて出ていこう。


「どう、アビイ。

行方不明などの依頼は出てる?」

「そう…ですね…。

あっ、これなんてどうですか?

新米ハンターの捜索依頼みたいですよ」

「どれ?…ふぅん、母親からの依頼か。

それにしても新米が一人で出掛けるなんて」

「採集クエですから油断したんでしょうね」

「そんなところかしらね…。

取り敢えず受注して母親に会いに行きましょう」


ギルドを後にし、商店街を歩く。

目的の家は町の外れにあるそうだ。

やはり王都は広く、道が入り組んでいるので家一軒を探すのも大変だな…。


「この通りかしら…?」

「先輩、あの家じゃないですか?

ギルドで聞いた目印の花が入り口にありますよ」

「そうみたいね。

じゃあ、行ってみましょうか」


ドアをノックすると中年の女性が出てきた。

その目は夜通し泣いていたのか、赤く腫れている。

よほど息子の事が心配なのだろう。


「すいません、ギルドで息子さんの捜索依頼を受けて来ました。

少しお話宜しいでしょうか?」

「おお、それは有難うございます…。

でも…お二人で大丈夫でしょうか…?」


まあ、心配するのも分かる。

小娘が二人だけなんて逆に被害が増えると思われても仕方ないか。


「ご心配されるのも分かります。

ですが、私達はハンターの腕も確かですし、捜索専門で過去に実績を積んでおります」

「そうでございますか…。

こんな可愛らしいお嬢さんに何かあったら心配になりまして…。

どうぞ、お上がりください」

「失礼します」


客間に通されるとお茶を出してくれた。

丁度、喉が渇いてたので有難い。

落ち着いて見てみると顔が憔悴しきっていて、みていて辛いな…。


「お辛いとは思いますが、息子さんの事を教えて頂けますでしょうか?

どこに何をしに行ったか等、分かる範囲で構いません」

「息子のクラークは小さい頃から元気いっぱいで、ずっとハンターになるのを憧れていました。

今年、15歳になって早速、ギルドでハンター登録をしてきまして…。

まだ、パーティには加入しておらず、近くで簡単な採集をして勉強してると聞いております。

近くでの採集ですから朝早くに出て、夕方には帰ってくるのが習慣です。

それが一昨日に出たきり帰ってこないので今朝、ギルドに依頼をした次第です…。

多分、怪我をして動けなくなっただけだと思うのですが…。

夫も早くに亡くしあの子にもしもの事があれば…うぅ…」

「それは心配ですね…。

どこに何を採集しに行ったか聞いておりますか?」

「えぇ…何でも薬になる花を探しに行くとか…南門を出て南西に行くと湖があって、その畔に咲いていると言ってました」

「準備はしっかりしていきましたか?」

「クラークはいつも非常時に備えて、食糧なども余分に持っていっております。

ですが、長くは持ちませんので…何とか助けてあげてください…」

「必ず助けるとはお約束は出来ませんが、全力で探させて頂きます」

「ぜひ…お願い…致します…」


母親はすがるように天を仰ぐ。

もし、悪い結果を知らせる事になったらショックで寝込んでしまいそうだな…。

悪い方向に考えるのは止めよう。

もう少し情報を集めよう。

そして、探しに行かないと。


クラークの家を出て通りを歩く。

アビイはどこか不安そうな顔をしてる。


「大丈夫?死んだような顔してるわよ」

「あの母親は大丈夫でしょうか?

もし、息子さんが死んでいたのが分かったら…」

「そこまでよ、私達の仕事は何?

残された家族までは面倒見切れないわ」

「それは…そうなんですが…。

先輩は平気なんですか?

可哀想だと思わないんですか?」

「可哀想だけど、出来ることは早く見つけてあげることね。

その結果がどちらになってもね」

「…私には簡単に割り切れません…」


私だって本音を言えば助けたいわよ…。

いつも事件解決後にモヤモヤした気持ちになるんだから。

さすがに数をこなせば綺麗事ばかりじゃないと分かるのよ…。


「さあ、急ぐわよ。

早く見つければ助けられる可能性もあるかもね」

「…はい!!

先輩、頑張りましょう!

…それで…どこに向かえば良いんですか…?」

「はぁ…」


さて、まだ周辺の事が詳しくないし、南西の湖や薬になる花の情報を集めるとするか。

薬屋でも行ってみるか。

原料について詳しく知っているかもしれない。


「まずは薬屋に行ってみましょう。

花についての情報が聞けるはずよ」

「わあ、さすがステラ先輩です!

そうと分かれば早く向かいましょう!」


急ぎ足で薬屋へと急ぐ。

アビイが張り切って先頭を歩いている。


「アビイ、薬屋はこっちよ…」

「えっ!?

あ…すいません…気持ちが…」

「落ち着いて。

冷静でいないと重要なヒントを見逃すかも知れないわ」

「はぃ…」


焦る気持ちも分かるけどね。

さて、ここか。

もっと魔女でも出てきそうなイメージをしていたけど、普通の店舗っぽいわね。


カランッ


「いらっしゃい、何かお探しかな?」


店員は魔女の格好をしてるのかっ!

全く、凝るなら飾り付けで雰囲気も作って欲しいものだ。


「いえ、買いに来た訳じゃなくてお聞きしたい事がありまして」

「ほほう、何でも聞いてくだされ。

ちょうど、暇だったんでな」

「南西の湖の畔で薬になる花の事なんですが…」

「ん…?もしかしてクラークに関係してるのかい?」

「クラークさんを知ってるんですか?

私達は捜索依頼を受けたんです。

それで情報を集めようと思いまして」

「そうかい…クラークには時々、採集を依頼していましてな。

今回も何時になっても報告に来ないから心配しておったところでな」

「その花の生息域などの情報を教えて貰えますか?」

「勿論だよ、何とかクラークを見つけてあげてくだされ。

その花はこの辺では南西の湖にしか咲かないものでして。

湖の周りにいくつかの大きな洞穴がありまして、その中に咲くんじゃ」

「では、クラークさんも洞穴に向かったんですね?」

「その筈じゃよ、同じ説明をしたでな」

「そこに危険な魔物は出ますか?」

「いや…聞いたことはないですな」

「色々と教えてくれて有難うございます。

急いで向かってみます」

「気を付けてな」


さて、情報はこれだけで十分かな。


「さて、アビイ。

これからどうする?」

「えっ?えぇっと…直ぐに湖に向かいたいです」

「これから日が暮れるわよ?」

「構いません、今なら助けられるかもしれません!」


真っ直ぐね…。

でも嫌いじゃないわ。


「そうね、行きましょうか」

「はい!!!」


アビイの初仕事だし、無事に終われば良いのだけど。



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