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08話 初戦闘

翌朝、目を覚ますと隣ではアビーが気持ち良さそうに寝ている。

確かに、この宿の布団はフカフカだから熟睡しちゃうのは、しょうがないと思う。

んっ?

おさげと眼鏡がないと、意外と美形な顔立ちをしているな。

これは眼鏡を外すと美人になるという、典型的な例かもしれない。

しかも、寝てても分かるくらいの巨乳だな…チッ。

言っておくが私は貧乳ではないぞ。

本当だぞ。

負け惜しみじゃないからな。


まあいい、とにかく起こすとするか。


「アビー、朝だぞ、そろそろ起きろ」

「ぅうん…お母さん…あと少し…」


子供か!

いや、実際に、まだ年齢的には子供なんだが…。


「おいおい、ここまで子守りをするつもりはないんだが…。

起きろーーーーーーーー!!」

「はわっ!?」


ドダンッ、バダンッ


「ぃてて…お、おはよう…ございます、先輩」

「おはよう、アビー。

どうしてベッドから落ちただけで、パジャマがはだけるのよ…大きな胸が丸見えよ」

「えっ!?はわわ…恥ずかしいです…」

「まあ、女の子同士で良かったわね。

ほら、着替えて行くわよ」

「はい!…て、どこに行くんですか?」

「今日は町の外を見に行くわ、ついでに腕試しもね 」


準備が整ったので、町を外に向かう。

これから戦う上で、どのような地形でどのような魔物がいるかを知っておく必要がある。

事前知識は昨日、町で色々と聞いたのでまずは、その内容の実地検証というわけだ。

行くついでにギルドで行方不明者がいないか確認したが、今のところ大丈夫そうだ。

今日は周辺に広がっている森を散策しよう。

基本的に驚異となる魔物はいないらしい。


町を出て少しばかり街道を歩いたら、すぐに森に入っていく。

道もないところを進んでいくから、人に出会うことはない。

しばらく進むと少し開けた場所に出た。


「よし、この辺でいいかな」

「??…ここで何するんです?」

「決まってるじゃない、貴女と戦うのよ」

「えっ!?

私、先輩に嫌われるような事をしましたか?

謝りますから許してください!」


凄い勢いで頭を上げ下げしている。

ロックミュージシャンか…。


「勘違いしないで、ただアビーの力量を見るだけよ。

散策中に魔物に会うこともあるだろうしね」

「良かったですーー、殺されるかと思いました…」


私のことをどんなサイコ野郎と思ってるんだ?

いきなり殺すなんて、物騒な事はするわけないじゃない。

いや、昨日のチャラ男があまりしつこかった時は、少し殺意を覚えたな…。


私は愛用の武器を出す。


「さあ、準備をして」

「あっ、はい、先輩って変わった武器の形してますね。

それって、草を刈る鎌ですよね?」

「そうね、私が刈るのは相手の魂だけどね」

「せ、先輩の笑顔は怖いです…。

なんだかその武器がとても似合ってる気がします…」


私の死神のイメージは大きな鎌を持ってるが、この世界の常識は違うのだろう。

それにしても、アビーの持ってる武器は何だ。

でかすぎないか?

いわゆる大剣(クレイモア)に見えるが、アビー本人より大きいぞ。

少女が持つ武器ではないな…。


「ずいぶんと大きい武器だな…」

「そうなんです!

強い武器が良いなって、念じたらこんな大きくなっちゃったんですよ!」


まあ、死神は力持ちだから問題はないのだが。

さて、始めるとするか。


「よし、どこからでも掛かってきて。

思いっきりやらないと力量が分からないから、全力でね」

「分かりました、行きます!!」


アビーは大剣を構え、真っ直ぐに突っ込んでくる。

そのまま、剣の重さも利用して振り下ろす。

なかなかのスピードだけど、避けるのは簡単ね。

次々と攻撃を仕掛けてくるが、難なく避けれる。


「はあ…はあ…はぁ、当たらない…」

「速さもなかなかね、でも、剣筋が正直過ぎるくらい真っ直ぐね。

あれじゃ、避けてくださいって、言ってるようなものよ」

「うぅ…戦うのは苦手です…」


おいおい死神が戦いたくないなんて、失業だぞ。

…いや、私も好きなわけではないか。

人々を守るために戦ってるのだった。


「今度は少しこちらから行くわよ」

「えっ、お手柔らかに!」


ある程度、手加減をしながら攻撃を仕掛ける。

アビーは必死でガードしてる。

どれ、ちょっと変則的に…。

鎌で横払いしつつ、避けた所を柄の部分で突きを狙う。


「ぐふぅ!」


キレイに鳩尾に入ったな…。

これは少しの間、動けないかも…。


「ひ、酷い…です…もっと…手加減を…」

「ごめんね…そこまでキレイに入るとは思わなくて。

でも、良い動きしてたわよ。

すぐに実践でも問題なさそう」

「ありがとうございます…でも、もう少し休憩させてください…」

「そうね…」


アビーが復活するまで休憩することにした。

倒木に腰掛けて世間話でもしよう。


「アビーは死神になったときの事を覚えてる?」

「それが全然、覚えてなくて…」


どうも死神は元々、生きていた人間だったらしい。

普通は人間の頃の記憶が全くないが、時々、少しだけ覚えている者もいるようだ。

転生した私は別の誰かだったのだろうか?

それにしても、顔は転生前と同じだし、髪や目の色が違うだけだから、例外だろう。

こんなに似ている人がいてたまるか。


「死神は嫌じゃない?」

「戦うのは苦手ですが…人助けになるなら、一生懸命頑張りたいです!」

「それは立派な心掛けね。

相手も元人間だけど、躊躇しちゃダメよ。

隙を見せたらこっちが殺されるからね」

「うぅ…話だけは聞いてます。

凄い強いんですよね…先輩は怖くないんですか?」

「そうね…最初は少し怖かったけど、慣れるわよ。

この体は傷も治るけど、痛みはあるから油断しちゃダメよ」

「さっき、痛いほど思い知らされました…」

「そうだったわね…まあ、良い経験ということで…」

「…はぃ」

「そろそろ散策の続きと行きましょうか」


町で買った地図を頼りに歩を進めていく。

途中に大きな川や崖などもあるが、ほとんど深い森である。

奥まで行くと木の大きさも半端ない。

幹の太さはどんだけあるのよ。

大人が十人繋がっても、足りない長さではないだろうか。

高さは上が見えない。

異世界だし、これくらい立派じゃないと植物も生き残れないんだろう。

ん?

何かに付けられてるな。

これは魔物の気配だ。


「アビー、気付いてる?」

「何がですか?」

「はぁ…少しは緊張感を持ってね。

ピクニックじゃないんだから…」

「ぴくにっく?

あれっ…何かの気配を感じますね」

「魔物に付けられてるわ。

数は分かる?」

「えっと…全部で…5ですか?」

「合ってるわ、感知は中々、良さそうね」

「どうするんです?」

「そうね、逃げるのも面倒だし練習で戦ってみましょうか」

「が、頑張りますっ!」


開けた場所まで移動し待ち伏せをしていると、待っていた相手が現れた。

ハイオークか。

初戦でも特に問題ない雑魚だな。

人間ならこんな数を相手には出来ないが、死神なら楽勝だ。

これならアビーに全部、任せるか。


「アビー、行ける?

……アビー?」


駄目だ…足が震えて、汗ダクダクだ。

初めてで緊張してるレベルではないな…。

どれ、緊張を解いてやるか。


バンッ


「痛い!」

「緊張し過ぎよ、落ち着いて。

楽勝な相手だから安心して」

「すいません…魔物相手だと怖くて…」

「一緒に戦うから大丈夫よ。

ちゃんと守るから大丈夫よ」

「…はい!頑張ります!」


震えが止まってるわ。

これなら大丈夫そうね。


「私が右の3匹を相手するから左をお願い」

「分かりました!」


勢いよく飛び出して行ったわ。

動きも悪くないし、本当に大丈夫そうね。

じゃあ、こっちを片付けますか。

オークは突進を避けて、カウンター気味に一撃っと。

まずは一匹。

後は警戒して動きが止まった所を連撃っと。

よし、終わり。

アビーはどうかな?


振り返ると大剣の一撃でオークを仕留めたところだ。

残りも余裕で終わると思って、のんびり見ていたら派手に転んだ。

そう、オークに突っ込もうとしたアビーは顔面から転んだのだ。

これはガチのどじっ子属性だな。

これは不味そうだから助けるか。


地獄の鎖(ヘルズバインド)!」


蒼い炎が鎖状となってオークを縛り上げ、動きを止めた。


「アビー、終わらせて!」

「あっ、はい!」


アビーの渾身の一撃は見事にオークに止めを刺した。


「ありがとうございました!

いつも大事な所でヘマをしちゃうんです…」

「気にしないで、最初は良くある事よ」


少なくても私はなかったが、フォローしておこう…。


「それにしても…さっきの何ですか?

青くて凄い綺麗でした!」

「あれは魔法よ、何故か炎系が使えるみたいなの」

「へえぇ、魔法を使える死神なんて初めて聞きました!

先輩は何でも出来て凄いです!」

「特別はこれくらいよ。

アビーもすぐに一人前になれるわよ」

「あはは…努力します…」


戦いになれるために暫く散策を続けることにした。

数をこなすことで、ぎこちなさもだいぶ無くなったように思う。

そろそろ暗くなるし、王都に戻るか。


「そろそろ暗くなるから、帰るわよ」

「私なら大丈夫ですよ!

なんか先輩となら何でも勝てる気がします!」

「そうやって油断はダメよ。

また転ぶわよ」

「うぅ…気を付けます」

「帰るのは騒ぎを起こさないためよ。

女の子二人のパーティが戻らないと、心配されて騒ぎになるのよ」

「そうなんですね、名残惜しいですが帰りますか」

「帰ってささやかな祝勝会をしましょうか。

初の勝利を祝って」

「はい!そうと決まったら急ぎましょう!」


いつの間にか笑みが出ていた。

一人の方が楽だと思っていたが、こういうのも楽しいかもと思ってしまう。

しばらくはちゃんと面倒を見てあげるか。


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