第三話 編入実技試験後編~予選当日朝
編入試験が終わった後もかなり続きます。
作者の不手際です
「我が剣に宿る精霊よ我が呼びかけに答えよ!剣精霊アスラ!」
「楓、あの精霊どのくらいだと思う?」
「下の中です」
「期待外れか~」
「余裕ぶっていられるのも今のうちだ!くらえ!」
振り下ろされる剣をナズチで受ける。すると
「は?」
パキン といい音を立てて剣精霊アスラを宿す剣は折れた。
「戦闘続行不可で私の勝ちでいいですよね?」
「…ああ、俺の負けだ」
「しょ勝負あり!天藤楓 編入実技試験合格!よって当学園への編入を認めるものとする!なお、筆記試験の結果を加味して総合戦術棟序列100位に昇格!個人部屋を与える!異議のあるものは彼女に決闘で勝利するように!以上解散!」
「勝手に話が進んだけど不利なことはないしいいかな」
「この後部屋に案内をしますので先に荷物を置いてきてください。その後あなたの所属するクラスに案内します。あ、授業は今日から受けることができますがどうしますか?」
「うーん。楓はどうしたい?王都を見て回る?それとも授業うけてみる?」
「授業が気になるので受けたいです」
「ん。じゃあ今日から授業うけます」
「分かりました。そのように進めますので、まずは彼に従って部屋の方に」
「分かりました。どんな部屋か楽しみだね、楓」
「広くて、きれいなところがいいです」
「確かにね~」
そんな会話をしながら俺たちは部屋に案内されるのだった。
「あれが噂の精霊ですか。それにしても所持者と同じ名とは…興味深いですなぁ~」
そのつぶやきは周囲にいた教師には聞き取れなかったそう。
「ここが天藤さんの部屋になります」
「へぇ~。ところで部屋の中に人の気配がするんですがこれは?」
「はぁ~。この部屋の前の住人ですね。いきなりの序列入れ替えが気に入らなかったのでしょう」
「決闘する流れですかね?」
「おそらくは」
「楓、奇襲に備えてケルビムと封爪」
「向こうは剣の精霊使いのようですから、奇襲はないと思いますよ?」
「精霊の分類がわかるのですか?」
「当然です」
「楓はそれなりに上位の精霊らしいので」
「天藤さんの刀はすごいのですね」
「いい加減に入ってきなさいな!」
元住人が痺れを切らして飛び出してきた。
「何か御用ですか?」
「この部屋をかけて決闘を申し込みます!受けてくださいますね?」
「今しがた試験が終わったばかりなんですけど?」
「たいして疲れてもいないのによく言いますね?」
「見破られてますか。わかりました。ルールは先ほどの試験と同じでいいですか?」
「構いません。そこの貴方、立会人になりなさい」
「かしこまりました。場所はすぐそこの寮庭でいいですか?」
「いいですわ」「わかりました」
「さあ始めますわよ!」
「これより、総合戦術棟序列100位をかけた決闘を行う!始め!」
「楓、早く授業受けたいからナズチと封爪」
「その意見には賛成なのでどうぞ」
「行きますわ!剣精霊ウィードル」
「中位精霊か。でもごめんね。断ち切れナズチ!」
パキン 本日二度目の音が響く。
「戦闘続行不可で私の勝ち。いいでしょ?」
「勝者天藤楓!これにより序列100位は天藤さんになります!」
「無駄な時間だったね。さぁ荷物置いて教室行こうか」
「なかなか、厳しいですね天藤さんは」
「楓、ウィードルとは話した?」
「彼はなかなかに向上心のある精霊なので、『次は簡単にはやられないと』」
「アスラのほうはどうだったの?」
「あれは慢心しすぎですね。下位のくせに」
「手厳しいね。なりたての精霊さん」
「時間は関係ありません!」
「はいはい。教室へ案内お願いしますね先輩」
「気になる会話が聞こえた気がしますが、わかりました。天藤さんの所属するクラスはこちらです」
「こちらが天藤さんのクラスです。どうかしましたか?」
「後輩の私にそこまで丁寧な口調で接しなくていいですよ?序列5位シルヴェルト先輩?」
「強いものに敬意を払うのは当然です。それに、その精霊様もいますしね」
「そうですか。でも、私のことは楓と呼んでください。心置きなく勝負を挑めないじゃないですか」
「あなたは面白いですね。では、楓さん、いつでもかかってきなさい。返り討ちにしてあげますよ」
そういって笑いあう二人は、闘争心にあふれていた。
「と、私も授業がありますのでこれで」
「はい。ありがとうございました」
その背が見えなくなるまで俺は先輩を見ていた。
「じゃあクラスに入ろうか」
「姉様、話が長いです」
「ごめんって。どんな出会いがあるかな」
ワクワクしながら俺はその扉を開いた。扉を潜るといきなり殺気と共に鎖鎌が飛来した。
「楓」
ガチン!
「姉様にいきなり攻撃する不届き者はどいつですか?」
「楓、怒らなくていいよ。それに、しっかり反撃はしたから」
「確かにそうですが、いきなりそれは」
パキン 本日三度目以下略 鎖鎌が崩れていく。
「貴様!いったい何をした!?」
「簡単な話です。楓が受け止めたのを私が砕いただけです」
「そんなことより、自己紹介しましょう」
「そうね。私の名前は天藤楓。こっちが刀の精霊。刀を二本用いた戦い方をします。よろしくお願いします」
「姉様姉様、私の紹介雑すぎませんか?」
「だって説明面倒だし」
「その通りですけど~」
「俺を無視するな!」
「序列80程度の小物がうるさいです」
「鎌は破壊しましたが、修復するんですからいいじゃないですか。もし実力が知りたいなら明日から始まる武闘祭で勝負しましょうよ」
「ふざけたこと言いやがって!」
「落ち着きなさいよ。みっともない」
「エレノアお前は黙ってろ!」
「あの子の言うとり明日の予選で勝負すればいいじゃない。それとも何?じしんがないのですか?貴族ともあろうものが情けない」
「ッチわかったよクソが」
「ありがとう、エレノアさん?」
「構わないわ、楓」
この二人の間に不穏な空気が立ち込める。
「あ、あの~編入生が来たので明日からの武闘祭の復習を始めたいのですが~」
「あれ?先生いたんですか?」
「姉様それは酷い」
「私もそう思うよ楓」
「え?そう?」
うんうんクラスメイト全員が頷いた。
「うっ…先生授業お願いします」
「ぐすっ、はい~。
編入生もいるので明日からのイベントのおさらいをしましょう。武闘祭とは年に一度行われる学園最強を決めるお祭りのことです。お祭りなので出店もありますよ。
予選から本戦まで全ての戦いが王都中に中継されます」
涙を拭い、先生が武闘祭の説明を行う。
というか、中継できるのか。
「次に予選について説明します。予選は各棟毎全生徒参加のバトルロワイアル。制限時間経過後残っていた6人が各棟の代表になります。
時間経過時に6人以上だった場合は残った生徒でサドンデスです。早くにやられた生徒から代表枠から外れます。結果、各棟6人、合計24人による本戦トーナメントになります」
「最後に本戦の説明です。
本戦は全棟ごちゃまぜのトーナメント方式になります。
1回戦で24人が12人に。2回戦で6人に。3回戦で3人に。そして残った3人による決勝になります」
なるほど。脱落順に1.2.3位を一度に決めるのか。
「楓さん何かわからないことはありますか?」
「私は大丈夫です。楓はどう?」
「精霊の武器は使用可能なんですか?」
「それは問題ありません。前回の武闘祭優勝者は精霊武具使いでしたから」
「分かりました。ありがとうございます」
「時間もちょうどいいですね。これで今日の授業は終わりです。各自明日の予選に備えてください」
先生が退出すると、各々の友人で集まり帰宅するもの、鍛錬に向かうもの、此方を窺うものに分かれた。
「ここでも視線が鬱陶しいね」
「姉様部屋に戻りましょう。そろそろナズチをメンテナンスしないと」
「あ、ちょっと使いすぎた?」
「使いすぎとは微妙に違います。姉様がまだ扱いに慣れていないので、無駄な魔力が流れ出ています。他の刀も姉様の体に馴染ませないと」
「おい、天藤楓。」
「なにか?序列80位のロイスさん」
「明日の予選覚悟しろよ」
それだけ吐き捨て彼は行ってしまった。
「姉様。明日の予選、多対一の状況になりますね」
「楓が挑発した結果でしょうに…楽だからいいけどさ」
「では、帰って馴染ませましょう」
部屋に戻ってから私は、寝ることも惜しんで刀たちを体に馴染ませた。
「姉様。朝になりましたよ」
楓に言われて俺は意識を外に向けた。
「ほんとね。言われるまで気づかなかった」
それほどに集中していたともいえるが、実のところ他のことに意識を向けてる余裕がなかったのだ。かなり無茶をしたおかげで体には馴染んだが、ここ最近で一番疲れた。
「なんて言ってられないね。会場に向かうよ!」
「はい姉様!」
疲れてはいるが、十分に動ける体で俺は『窓』から飛び出した。
えーと抜けていた話があったのでこの会の補填という形で投稿します。
8/27 教室での会話・翌日の朝追加