第6話 一人の進軍と開戦
連続投稿です。
「陛下、ただいま帰還いたしました」
「ご苦労だったな。それであちらの反応は?」
「はい。それに関しましては、手紙を預かっております」
「そうか。それを此方へ」
「はい」
手渡された手紙を読んでいく。
「そうかそうか。ハハハハハ!」
「陛下?」
「全軍に伝えろ。戦争の時間だ。進軍開始!」
「っ!」
「全軍に回せ!進軍開始!」
「進軍開始!」
皇帝が指示を出せば、すぐさま復唱し全軍に伝えた。
「さてエルロード元国王、貴様も行くだろう?」
「もちろんだ。俺を貶めようとしたあの国を、あの者たちをこの手で殺す」
「ハハハ!力を与えたら復習の鬼となったか。面白いな」
グレアムとエルロード元国王の二人も戦場に赴くため、出陣する。
そして、神帝国軍全戦力がエルロード王国向けて進軍を開始した。
「マリア様!帝国軍が進軍を開始しました!」
王の間に兵士が駆け込んでくる。
「早かった」
「いや、遅い方じゃない?」
「そもそも、あんな使節団を送ってきたりしてますからね」
「それだけ準備に時間をかけたってことでしょう」
「では、私達も行きますわよ」
「敵の戦力は?」
「確認できた範囲ですと、皇帝本人とエルロード元国王、皇帝近衛兵が12人。兵士が約10万。それと、数えきれない程の魔物と計測できないほどの力を持った者が四人ほど」
「柊さん」
「近衛兵の方は、天咲流の門下生や師範代の中でとびぬけた奴だろうな。残りは兵士枠の方か。んで最後の四人だが」
「三人は判明してるんですよね?兄様」
「一人、幽世の門の番人であり太陽を司る神 アポロン
二人、同じく門番で破壊と滅びを司る神 スルト
三人、こいつも門番でこいつも太陽に関連する神 白夜
この三人は分かるがもう一人が分からねえ」
「それに加えパンドラを持ち出しているので、向こうの戦力は判明してる数字の数倍の脅威になるでしょう」
これから戦闘ということで、俺は既に柊の姿になっている。こっちの方が門下生や師範代をおびき寄せるのに楽だからな。
「マリア、こちらの軍は周囲の砦を防衛ラインに展開。俺は前線に出て敵将を討つ。だから皆は、こちらに流れてくる魔物と兵士の対処を頼む」
「どういうことですの?」
「柊、それは事前の作戦と違うぞ」
俺が作戦の指示を出せば、マリアとエレノアが質問してくる。エレノアの言う通り、作戦は以前話したものと違う。
「理由は?」
全員が困惑する中、ティアさんが理由を尋ねる。
「この戦い、下手すれば一日で全滅する」
「兄様、説明下手ですか」
「ちゃんと補足する」
そして、その理由を述べていく。
「まず相手の戦力だが、これは分かる通りこちらの十数倍。しかも魔物や兵士全てがパンドラと神の力で強化済み。一人に対してこっちは数十人で対処しなきゃいけなくなる。そんなことになったら、あっという間に包囲殲滅される。エレノア達なら逆に数十人、力を十全に使いこなせれば数百人は一度にやれる。それを、籠城しながら行えば数日は持つはずだ。その間に俺は皇帝の首を討つ。ついでに近衛と神の三人ともう一人謎の奴、元国王、兵士と魔物も数万は減らしておく。こっちにバハムートとイリス、フェンリル、ナズチも応援に来るはずだから何とかなるだろ?てなわけで、俺一人で進軍する」
一人で進軍っていえるのか?まぁいいか。
「イリス様達が来るのに、私達がここに残るのは足手纏いだからですの?」
「違う。皆の実力を信じてるから、この国を頼みたいんだ」
イリス達は今回、この戦争に参加するにあたって力を二割ほど神域に預けている。そうしないと下界に降りる許可が出なかったそうだ。以前の外の神の時もそうだったが、この世界の神は危機感が足りない。その状態の四人がいてもどうにもならないだろう。最悪この世界が滅ぼされる。
「念のために、皆には神と契約してもらう」
「契約?前にもしてなかったっけ?」
「前回のは能力の付与であって契約ではない。契約することによって神の力をより引き出せるようになる」
「つまり契約するのは」
「あぁ。外なる神だ」
エレノア達の纏う空気が変った。
「安心してくれ。契約といっても、専属じゃなくて配下契約だから」
「違いがあるんですか?」
「あいつらは既に俺と専属契約しています。配下契約は、専属契約した者と結ぶことで神の力の一端を間借りするものです。実際やった方がいいですね」
そう言って地面に法陣を描く。
「皆さん、この中に」
指示に従い全員が陣の中に入る。
「少し脳が焼けるような感覚があるかもしれませんが、問題はないので我慢してください」
深呼吸。
「唱える。此処に集うは我の配下。汝らの力を彼等の加護に」
これだけで契約終了。
「終わり?」
「早いな」
「ですがこれは」
「力が溢れますね」
「この力は神一人分なのか?」
レオニカさんが意外なところに気付く。
「その通り。エレノアにはアザトース、ティアにはクトゥグア、マリアはハスター、レオニカはショゴス、オーデン先輩はティンダロスです。それぞれの能力は各々で確認してください。俺はそろそろ行きますので」
一つ陣を描く。
「柊、その術式を使うのか?」
この場にいながら、今まで存在を忘れられていた皇が声をかけてくる。
「俺一人と言っても限界はあるし、こいつらの方が殲滅力あるからな」
「兄様、私も協力しますか?」
「そうだな頼む」
楓と二人で術式を組み上げる。
「皇、あの術式は?」
「あれが天咲家守護術式だよ」
「あれが、楓の言ってた」
「複雑すぎますわ!」
「マリアと二人でも展開できない」
「ティアとマリアの二人でも…」
「あの二人の凄さを改めて実感するな」
後ろで会話がされているが、術式に集中しないと。
「楓」
「こちらはいつでも」
返事を聞き頷く
「展開術式選択。天咲家守護術式壱から肆」
「術者を天咲柊に一任。術式展開します」
「守護術式其ノ壱風天」
名前を呼べば、風天が現れる
「守護術式其ノ弐雷天」
続いて雷天
「守護術式其ノ参炎天」
「守護術式其ノ肆水天」
「其ノ肆まで完成させていたのか」
つい最近のことではあるが、構想通りの守護術式になった。
「「「「お呼びですか、我らが主よ」」」」
「戦争が起きた。力を貸せ」
「「「「主の望みとあれば」」」」
「よし!堅苦しいの終わり!楽にしていいぞ」
「は~い」
「ん」
「了解」
「お前等なぁ~」
雷天、水天、炎天の順で喋りが崩れる。そしてそれをたしなめようとする風天。
「後、先に開放も済ませておくか」
能力の上がり幅を作るために陣を描き、その中心で開放する。
「神名開放。抜刀、解魂」
以前開放したのは神域の修行の時。今回開放するのはアニマを含めた七本
「精霊神刀楓、血呪・眷刀、鬼呪・ナズチ、龍刃・帝王、封爪・グレイプニル、ケルビム、魔剣アニマ」
それと
「封印限定解除ヨグソトース」
外なる神の一柱を開放する。と言っても限定解除だけど。他の神は配下契約で開放してるから、俺自身には使えない。能力は限定的に使えるけどね。アニマとヨグがいるから。
「我が契約者は大変だな」
ヨグからそんな思念が飛んでくる。
「大変な者に出会ってしまったな」
アニマのルフも思念を飛ばしてくる。
この思念は他の皆にも聞こえてるため、キョロキョロと周りを探している。
思念を飛ばせるのはヨグ、グア、アザ、ルフのみ。他の神はまだできない。単純に魔力の波長変換が難しいらしい。
「さて、準備は出来たから行くか」
「はい兄様」
「封爪抜刀一ノ型疾風迅雷、ケルビム納刀一ノ型金剛衝」
最後に強化の型を使い準備完了。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
「帰ってきたら術式教えて」
「私も教えてほしいですわ!」
「帰って来いよ!」
「戦争が終わったら、また街でも散策しましょう」
「柊、頼むよ」
「ご武運を!」
エレノア、ティア、マリア、レオニカ、オーデン先輩、皇、王国騎士団、魔術師団に見送られ、俺は帝国軍の侵攻ルートに向かった。
「動いたな」
「一人か?」
「いや、四人ついてるが人間じゃない」
「なら問題ない」
「戻るぞ」
「奇襲はいいの?」
「ここでする必要はない。奇襲ならもっといいタイミングでやるさ」
「アポロン、白夜、結界の準備は?」
「いつでも」
「準備できてる」
「戻って展開。迎え撃つ」
「「おう」」
「零式、兵士の転移を頼む」
「畏まり。時間は少しかかる」
「多少はやられてもいい。騎士団どもを混乱させられればそれで勝ちだ」
いつかのスタンピードの時のように四つの影。その時動揺音もなく消え去る。
「見えた!」
「兄様!」
「主!」
「契約者!」
「先手必勝!六連爪砲!」
「「「「バレット装填!穿てディザスター!」」」」
頭上からの奇襲。反応できずに三、四万は削れた。その勢いのまま皇帝の目前に急接近
「紫電雷光!鬼呪抜刀四ノ型地摺り!」
着地後、紫電雷光で肉薄。四ノ型地摺りを伴うことで地面擦れ擦れを這うように進む。
まだ間合いではないが問題ない。すぐさま刀を切り替える。
「龍刃抜刀二ノ型風雷 一刃・千閃!」
一振りにして無数の斬撃を飛ばす。がしかし
「やれたのは一人ですか」
一刃・千閃が届く前に近衛が守ったようだ。一人はやれた。もう少しやりたかったけど、四万近くやれてるはずだしいいかな。ここからが本番だ
とりあえず、開戦です。
今回の戦争は死者が多数出ます。多分この世界で最多でしょう。
戦争が終わった後くらいに、ここまでの登場キャラをまとめようと思います。
ではまた次回!