第2話 天咲と天藤
お待たせしました。
この話は出来ていたのに投稿するのを忘れていました。
それではどうぞ
ローズ学園学生寮の一室に7人の人物が集まっていた。
1人は、天咲家に養子として迎えられ、知る人からは才児と言われていた。本当の父は元次期帝国の帝王候補者、母は神に至り現在は冥王として冥界に住む。不思議な血筋の柊が少女に姿を変えた天藤楓
2人目は、天咲家に生まれたものの、体が弱く女であることと合わせて疎まれ、その者たちの企みによって命を一度落とすが、精霊となり更に精霊神へと至った少女、天咲楓。通称フウちゃん
3人目は、ルーフェルト家の長女で家出娘。学園にある総合戦術棟元序列1位、現2位。4体の精霊と契約している稀有な存在、エレノア=ヴァン=ルーフェルト
4人目は、学園の魔術師棟序列外だったが、武闘祭にてその実力を示し序列入り。楓も認める実力者で神の魔術の担い手、ティア
5人目は、エルロード王国の王女。先代とは違い、優しく強く、民を大切にできる王。魔術師棟の序列2位の秀才。彼女もまた神の魔術の担い手、マリア=カデンツァ=エルロード
6人目は、エルロード王国騎士団の次期騎士長。そして、マリア=カデンツァ=エルロードの専属騎士で婚約者、レオニカ=レストロワ
7人目は、ローズ学園学園長の孫で神霊と契約している数少ない存在。楓が敬意を払う上級生、シルヴェルト=ヴァン=オーデン
何故この7人が一緒にいるのかというと、ここ最近マリアの政務の手伝いであちこち回っており、今日の仕事終わりに、楓とフウちゃんの空気が変ったことから何かを感じたエレノア達が何かあったのかとついてきたのだ。
風天と雷天の説明をして、寮に跳んでくるのを待ちながら先ほどの会話について話していた。
「今の話が本当なら大変なことになりますわ」
「本当でしょうね。あの帝王が嘘をつくように見えない」
「備えておいて良かったとはいえどうしたものか」
「あの姉様、疑問があるんですがいいですか?」
「なに?」
「雷天の術式、どうやって改編したんですか?あれ、私にしか弄れないはずです」
風天と雷天は二人の合作、柊が風天を、楓が雷天を担当した。そして、他人が使えないように主従の契約を施し、主人以外では改編することもできないようにした。
つまり、柊は風天しか呼べず、楓は雷天しか呼べない。自分が呼んだ覚えがない雷天がいることにフウちゃんは疑問に思っているんだろう。
「術式の改編は風天にしか施してないよ。風天に雷天の召喚権限を与えてただけ。もともと術式には2体は必ず揃うように編んであるから、どっちかに召喚権限があれば揃えられるようにしたんだよ」
「雷天…いきなり召喚されてビックリしてるだろうなぁ」
「ホントですよ楓様、じゃなくてフウちゃん様」
フウちゃんの呟きに答えたのは、空間を跳んでやってきた雷天だった。
「おかえり風天。それとありがとね」
「有難きお言葉。しかしこれも従者として当然のことです」
「風天は相変わらずだね。雷天も、いきなり呼んだ上に力まで使わせてごめんね」
「フウちゃん様以外に呼び出されてビックリしましたが、状況が状況でしたから」
そこでフウちゃんが口をはさむ
「自然な流れでフウちゃん様って言ってますけど、どうなんですかそれ」
「え?だって今はフウちゃんって呼ばれていて、柊様が楓って呼ばれてるんですよね?だったら呼び方も変えるのが当然では?」
「そうだけど、そうじゃないというか…」
その時、不意に声がかけられた。風天と雷天と一緒に来たのに空気になっていた皇から
「ええっと、とりあえず助けてくれてありがとう。それとひさしぶり、二人とも」
「久しぶりです父様」
「少し口調を戻すか。久しぶり親父」
楓の姿で男の口調だと…
「楓、違和感がすごい」
「ティア、それは言わないでほしかった」
口調が戻った。
「ちょっと待って。・・・術式展開、対象選択、術式行使」
先日の戦いの後完成させた術式。楓の姿が定着したけど、こっちの姿の方がいい時もあるからな
「これで元通りだな」
「完成させたんですね」
前にもこの姿を見せたエレノアとティア、オーデン先輩は平然としているが、初めて見るマリアとレオニカは驚いているがエレノア達が説明を行ってくれた。
「怪我は大丈夫か?」
「風天と雷天のおかげで。それにしても、色々と驚いたよ」
「まぁその辺の話はおいおい話していくとして」
「マリア様はどう対応する?」
「国としての対応は決まっていますわ。騎士団と魔術師団、従者師団それに学術棟序列メンバーの招集、防衛線の構えを取ります」
この国では戦争に巻き込まれた場合学園の序列メンバーを招集することができる。学園生は招集に応じることも拒否することもできる。こちらから仕掛けた場合は学園生を招集することができない。
「新しい脅威は帝国か…」
帝国だけなら問題はないだろう。門下生や師範代がいるとはいえ、こちらも序列メンバーや精鋭の兵士もいる。それだけならいいけど
「今回の戦争、そんな単純に行かないと思う。神域の方でもいろいろ厄介ごとが起こってるみたいだから、帝国の動きに神が絡んでいてもおかしくない。というか、絶対に絡んでる」
俺の言葉にわずかながら緊張するエレノア達。
「そこでマリア様に相談なんだが」
「なんですか?」
「今回の戦争、騎士団や学園生を招集するのはいいんだが、基本的に俺一人にやらせてほしい」
「理由はありますの?」
すぐに反対するわけでもなく、理由を尋ねられる。
「神が絡んでいるのなら確実に向こうの兵が強化されているはず。そんな奴ら相手にこの国の戦力を減らしたくない。それと、この戦争で俺は帝国を滅ぼすつもりだから、あとのことを考えるとその方がいい」
帝国を滅ぼす、その言葉を聞いた全員が驚愕に満ちた表情をする。
「兄様、何故滅ぼすのですか?」
そんな中、フウちゃんが質問をしてくる。
「一つ目に、俺の家族を狙ったこと。二つ目に、過去に俺の家族を殺していること。三つ目に、帝国に絡んでいる神のやったことを許せないから。それが理由」
「兄様...」
「柊、本気なのか?」
「本気だよ」
フウちゃんと親父が心配そうに声を掛けてくるが、この覚悟が覆ることは無い。
「...楓さん、いえ柊さん。戦いを貴方に一任することは出来ません。どんな理由があろうとも、貴方一人には任せられません」
「俺一人には?」
つまり?
「私達も協力しますわ。兵の招集はしますが基本的には戦わせません。周囲の魔物から国を守るために布陣させます。それなら皆さんも納得ですわね?」
「今更なにを」
「神殺しよりマシ」
「楓さんには返しきれない恩がありますからね」
「もうひと仕事だな!」
マリア様が妥協案を提示し、エレノアさん達がそれに賛成する。
「いいんですか?この先起きるのは戦争です。俺に任せてもらえれは、皆さんが人を殺さずに生きていくことができるんですよ?」
「もともとこの戦争はこの国に向けられたものですわ。それをすべてあなたに任せてしまっては、国の威厳に関わります。だから、少なくともここにいる全員は参加しますわ」
まぁ覚悟が出来てるならいいかな。正直人殺しはさせたくないけど。
「分かった」
「どうするか決まったみたいだね。私の話を聞いてくれるかな?」
話が一区切りついたタイミングで親父が入ってくる。
「門下生と師範代についてなんだけど」
「殺すなとは言わないよな?」
そんなこと言われても守るつもりはないけど。
「さすがにそんなことは言わないよ。言いたいのは、彼等が束になってきた場合、柊以外では荷が重いと思う。だから、皆にも天咲龍を教えようと思って」
「いいのか?」
「巻き込んでしまったからね。その代わりにといったところかな」
まぁ教えるのは構わないけど
「どこまで教えるつもり?秘奥まで教えるのは流石にエレノア達でも俺は賛成できない」
あれは人に教えていいものじゃない。俺ですら封印しているんだから。
「分かっているよ。あれは柊が最後の担い手だ。ほかの誰にも教えはしない」
「ならいい」
「途中で済まないんだが、どうゆうことだ?」
話が少ししか進んでないが、置いていかれそうになったエレノアさんが聞いてくる。
「つまり、皆に天咲龍を会得してもらう。天咲家に伝わる本当の龍派を」
「本当の龍派?流派ではなく?」
「その辺の話は少し難しいんだが、親父にも聞いといて欲しい。天咲家に伝わる流派とそのルーツ。そして、俺の本当の家系天藤家について」
これは伊織とヨグソトース、アザトース、イリスの四人から聞いた話だ。
かつてのこの世界に刀という独自の武器を扱う村が存在した。一人で一個小隊を簡単に屠る実力者ぞろいのその村を取り込もうとする国は多かった。しかし、どの国も取り込むこと敵わず、脅威にしかならないのなら滅ぼしてしまえと、敵国であったはずの国と協力して村の者の抹殺に掛かった。
しかし、村人をすべて皆殺しにすることはかなわなかった。理由は、彼らが精霊と契約しその力を行使していたこと、さらに神の力を授かった者がいたから。その村人達の名は天藤。柊と柊の母のご先祖様だ。
天藤家の一部の人間には、神と契約できるものがまれに生まれる。神の力を授かり、それが馴染んだものの子にもその力が流れ、またその子供に、といったふうにしていたそうだ。そうして外の国と関係を持たなかった天藤家は山奥にて暮らしていたが、あるときをきっかけに外の国と関係を築くようになった。
そのきっかけが外なる神の来訪。天藤家の者や各国の精霊使いが挑んだが、『刀爛』にて封印するのがやっとで多くの者が戦死、国は崩壊の危機。立て直すにも人材が足りず、滅びの道筋を辿る世界を救ったのが天藤家だ。
やったことは怪我人の治療、修復資材の提供、修繕技術の提供、その他多くのことを行った。その一環に、ローズ学園創立や道場の開講だ。しかし、過去に争っていた相手と一時的に協力するとはいえすべてを信用できなかった天藤家が取った方法が、天咲家と名を偽り、教える流派も本来の物の劣化版。そうして力のバランスを取っていった。
時が流れるにつれ、真実を知るものは天咲家当主と神々にも一部の者しか知らないものとなっていた。
つまり、天咲家の本来の名は天藤家。皇が言っている天咲龍は天藤流のこと。
一つ、注意してほしいことだが、天藤家の直系は既に俺しか残っていない。正確に言うと、俺の母の時には既に直系は母一人となっていた。
天藤伊織は天藤家にとっての姫のような存在だったそうだ。天藤家には位があったそうで、伊織は王の血筋で天藤家再建に必要だったため、多くの厄介ごとから守られていた。その結果家臣は全員なくなり、伊織一人になった。そんなときに行きついた村で世話になり暮らしていた。そこで追われる身の父と出会い、俺を身篭った。天藤家唯一の生き残りで王の血筋。それが神の力を複数その身に宿せる理由。ふつうは一個が限界らしい。これも最近知ったばかりの話だ。
で、俺がエレノア達に教えたくないのが天藤流の秘奥ノ型。過去の各国が取り込もうとしたり、抹殺しようとする理由がよくわかる代物だ。いくら信用できる相手だからと言っても、教えることはできない。
「さて、まぁこれが天咲家と天咲流の全てです」
話が終わっても喋れない。驚き、納得、呆れ、その他にもいろんな感情が渦巻いているだろう。
あ、通行人に聞かれてないかとかの心配はいらない。風天と雷天が跳んできた時点で、遮断結界を展開しているから、声は漏れないし、この部屋の存在も認識されてないから。
「偽名のつもりの天藤が実は自分の本当の名前だったんですね、兄様」
あぁ~
「それには俺も驚いたよ。まさかの偶然」
でも何となく、天藤って苗字がいい気がしたんだ。
その理由が分かっていい気分だ。
「ありがとう柊。本当のことを教えてくれて」
「凄い人だとは思っていたけど」
「まさかの血筋」
「驚きですわ」
「運命とはなんと残酷な」
「でも、時には美しくもあります」
少し、空気が和らいだ。
「皆さんにお聞きします。天藤流の稽古を受けますか?」
「「「「「はい!」」」」」
大きく明るい返事。
これなら大丈夫かな。それじゃ
「親父、特別コースで」
「柊と楓にやったのと同じやつだな?わかった任せろ」
親父に全てを一任する俺。
驚きに声も出ないエレノア達。
過去を思い出して、苦笑いをこぼす楓。
「さぁ、稽古を始めるから外に集まって!」
楽しそうに親父が外へ向かう。
あれは、特別コース(機嫌良)ver確定だな。
皇による稽古は夜遅くまで続き、翌日の授業にエレノア達は参加しなかった。
...成績大丈夫か?
3話を投稿する前に閑話を挟みます。
このあとすぐに掲載予定なので、そちらもご覧いただければと思います。閑話の出来栄えはここまでの話の中で、1番悪いと思いますw
3話の方は今月中には出すかもです。
それではまた次回!




