三章 神帝国戦争編 第1話 帝王の訪問
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「入るぞ」
こちらの承諾を得ずに入ってきた人物は
「貴方がこの道場に足を踏み入れることを許した覚えはありませんよ?グレアム二世」
帝王グレアム。世界一の軍事国家にして世界最大国家の帝王。その二代目。先代グレアムにより、軍事産業が盛んに、その影響で近隣諸国に侵攻。しかし、すべてを武力で支配するのではなく、従えば略奪や殺戮、その他侵略行為はせず、安定した暮らしのサポートを。従わずにあらがえば、武力による支配、あらゆる侵略行為を行ない、男は奴隷、女は奴隷や兵士の道具にする、といった行為を繰り返し、現在の国家に至る。
その帝王がなぜ天咲家にいるのかというと
「天咲皇、俺の国家の傘下に加われ。その流派、戦争に使わないのは勿体ない」
「私が受け継ぐこの流派は、戦争に使うためにあるものではありません。自分の身を守るため、大切なものを守るためにあるのです」
「戦争も自分の国を守るため、大切な家族を守るためのものだろう」
「そういった意味もあるでしょう。しかし、貴方が行っているのは戦争ではなく、侵略でしょう。そのようなことに天咲流を使わせるわけにはいきません」
「そうかい。なら仕方ないな。当主を入れ替えて、従わせるとしよう」
グレアムがつぶやくと、皇を取り囲むように帝国兵と門下生が現れる。
「理由は察せますが、なぜあなた達がそちら側に?」
「察せらるなら聞くなよ、元当主」
「簡単な話、この力でもっと暴れたいんだよ」
「周りよりも強い力があるのに、それを使えないなんて勿体ない。だから、この力をうまく使ってくれる奴と組むことにしたんだよ」
門下生の言葉に続くように、師範代までが現れる。
「あなた達もですか…」
謀反が起こるかもしれない。それは考えていた。だから柊には戻ってくるなと伝えた。
「グレアム、一つ聞きたい。彼らを使い何をする気だ」
皇の問いに、グレアムが笑いながら答える
「邪魔なエルロード国をつぶす。それに、なんでもあの国に実力者がそろってるそうじゃないか。ソイツらを従わせるのも良さそうだしな」
その答えに驚きはしない。予想の付くことだから。だが、あの二人に危害が及ぶのは防ぎたい。
天咲龍後継者の柊とはいえ、門下生と帝国の精鋭を相手に勝つのは難しいだろう。なら、今できることは
「俺をここで殺そうとか考えるなよ?その前にお前が死ぬ」
ここで自分が死ぬのはまずい。この家の封印が解け、龍派が帝国にわたることになる。それは避けたい。なら、逃げ切る…のは難しいか…
思考する皇の前に二体の式神が舞い出る
「なんだぁ?」
「あの式神は!!」
「知ってるのかお前ら」
式神の正体、式神の主を知らないグレアムが、それを知るであろう者に問いかける。
「何故その式神が!?」
門下生も師範代の者も、問いかけに答えることができないほどに狼狽していた。
「簡単なことでしょう?」
「不測の事態に備えて、我らの主人が我らを召喚していただけのこと」
グレアムの問いかけに答えたのは二体の式神
「天咲家守護術式其ノ壱、風天」
「同じく天咲家守護術式其ノ弐、雷天」
青年の姿をした長髪の男、風天。
少女の姿をした長髪の女、雷天。
その名の通り、天咲家を守護するため編まれた守護術式。それを、ある人物たちが式神へと昇華させたもの。
「皇様は必ずお護りせよ、と受け賜っております」
「今引くのであれば、殺しはしませんよ?」
自らの周囲に嵐を纏う二体を前に、誰も動けず声を出すこともできない。
「この沈黙は戦意なし、と受け取りますがよろしいですか?」
この言葉でプライドを傷つけられたグレアムが吠える
「俺を馬鹿にするか!!たかが式神風情が!?」
背中の大剣を抜き飛び掛かる。
「天咲流剣術一ノ型轟雷」
雷の神の怒りに触れた剣士が、その雷を一刀両断したことからつけられたその名は、雷に対する特攻を持つ。
「阻みなさい。嵐層」
嵐が風天と雷天と皇を護るように、幾重にも重なり層となる。
バチバチッ!バチバチッ!
雷を断つ一刀と嵐がぶつかり、道場の屋根や壁を吹き飛ばす。
押されているのはグレアム。劣勢を悟りグレアムが下がると、嵐は消え去り、そこには誰の姿もなかった。
「クソっ!なんだあれは!?」
苛立ちを隠さないその問いに答えたのは師範代の一人
「あれは、天咲皇が養子として引き取った少年柊と皇の娘楓、二人の合作で作られたものだ。元はただの術式だったのだがな。あれは二人が生きていなければ発動できなかったはずなんだが?」
門下生や師範代達が驚いた理由がそれだ。
風天、雷天は柊と楓の二人が生きていて発動する式神。楓は数年前に死んでいるはず、ならなぜ発動するのか。死ぬ直前に発動し、ずっと待機状態にしたのか、そんな考えが巡る門下生と師範代達。
「そんなことはいい!戻って戦争の準備をするぞ!」
プライドを傷つけられ苛立ちをぶつけるように、その苛立ちをエルロード王国にぶつけるために、無理矢理気持ちを切り替えたグレアムが叫ぶ。
「二週間後には仕掛ける!宣戦布告はなくていい!行くぞ!」
その言葉に、不敵に笑うだけで何も答えずグレアムに続く者達。
そしてこの会話は、柊、楓、エレノア、ティア、レオニカ、マリア、オーデン、この世界最強のパーティーの耳にも入っていた。
グレアム達が帰った天咲家の屋敷にて
「風天、雷天、助かったありがとう」
皇は二人に感謝を告げていた。
「礼は不要。その言葉は我らが主に」
「そうですね、これから主の下に向かわねばなりませんから、その時に伝えるといいですよ」
「そうか、2人に合うのか…」
少し落ち込んだようにつぶやく皇を不思議がり疑問を投げかける
「会えるのが楽しみではないのですか?」
「会えるのは楽しみさ。だけど、理由があったとはいえ、帰って来るなと言った相手に自分から会いに行くのもどうかと思って」
その言葉を聞いた二人は口を揃えて
「「そんなことを気にしてる場合ではないでしょう?」」
容赦なく告げた。
「ウグッ」
容赦ない言葉にダメージを受けながらもすぐに立ち直り
「会いに行くのはいいが、どうやって行くんだい?馬車を用意してる時間はないよ?
予想通りの質問に風天が答える
「飛びます」
「ん?飛ぶ?空を?」
「飛びます。正確には空間を跳ぶ、というのが正しいですが」
「空間を跳ぶ?そんなことできるの?」
「つい先月、紙の討伐を成しまして、その時に得た力の一つですね」
「柊様が現人神、楓様が刀の精霊神になられました」
「お二人の力だけでなく、友人のご助力があったおかげですね」
この話を聞いた皇は
「そうか…2人にも友達が出来たか…よかった」
と、泣きながら呟いた。
「ほら、泣いてないで行きますよ!」
泣き続ける皇を引っ張りながら、風天と雷天は主の下へと跳んだ。
後にこのことを聞いた柊と楓は揃って
「「泣くほどのこと?」」
と首を傾げてたそう。
三章はサブタイにもあるように帝国との戦争編です!帝国との戦争、テンプレですよね!
何故神帝国なのか、天咲家を狙ったのはなぜか、天咲龍と天咲流の違いとは、なんてことを考えながら自戒をお待ちください!多少のヒントは出しますので!
それと、活動報告の方にも二章終幕と三章開幕についての挨拶がございます。そこで、今回の戦闘についての補足的なものもありますので良ければご覧ください。
ではまた次回!