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最果ては遠く 休載  作者: 鯉狐
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第9話 神殺し開戦

少し時間が空きましたが、どうぞ

朝日が差し込み心地よい風が吹き抜ける。花畑の奥、墓前にたたずむ少女


「さて、行きますか」


合わせていた手を放し、閉じていた瞳を開ける。そして、強く頼もしい足取りで来た道を戻る。これから決戦が控えているのに彼女の顔は笑顔だった。


決戦の場は王都上空。中心に位置する学園の真上。封印を解くのは広い校庭。その戻る最中に仲間たちが集まる。


「楓さんどこに行っていたんですか?」


一番最初に来たのはオーデン先輩。


「墓参り」


私の答えを奪いながら来たのがティアさん。


「何のために?」


質問と共に来たのがエレノアさん。


「先祖様にごあいさつでは?今日のことの」


またしても答えを奪われた。マリア様に。


「そういえばフウちゃんはどうした?」


また質問。次はレオニカさん。


「お待たせしました姉様。結界準備できました」


「意外と時間がかかったのう」


フウちゃんと朝から設置の手伝いをしていた学園長もやってきた。


「ありがとう。映像投影の方も音声拡張の方も大丈夫ですね?」


「問題ない。各所に手配して設置もできている」


学園長の伝手は凄まじいな。朝一で頼んだにもかかわらず短時間で終わらせたのか。

じゃあ準備ができてるなら


「始めましょうか!かつての人類が勝てなかった神に、今の人類が私たちが!勝利して無念を払いましょうか!フウちゃん!映像投影、音声拡張!」


「はい!」


朝を迎えた王都上空に私たちが投影される。


「王都の皆さんおはようございます。私の名前は天藤楓といいます。いきなりな話ですが、この国の地下には強大な力を持った神が封印されています。この国の学園はその神に対抗するための人材を育成する期間でした。しかしその事実も歴史もすべて、こんなものは眉唾物だ。本当の話なわけがない。と王族が情報の封印を行ったことにより、つい最近まで忘れ去られていました。そして、その神の封印がもうじき解かれます。正確な時期は不明です。この国を捨て逃げたとしても、その神はこの世界を破壊するまで止まらないでしょう。死ぬのが早いか遅いかの違いです。だから私たちは立ち上がりました。マリア様の下、神を討つために。今日を以て封印を解除。出てきた神を倒して、この王都を護って見せます!」


ここで区切り、続きをマリア様に任せる


「そしてお父様。現国王の貴方にはこの戦いの後、罪を償っていただきますわ!先王暗殺の首謀者として!証拠も存在します!覚悟しなさい!」


そしてまた私が続ける


「今マリア様が話したことは事実です。ですが、今は神の討伐が先です。国王、逃げても構いませんが、頑張ってくださいね?」


そして映像が消える。

王都では混乱が起きていることだろう。しかし、学園長の打った手により真実が広がる。

これを信じるか信じないかはその人の勝手。まぁ国王の行動で分かるだろう。さて、


「フウちゃん」


「分かっています。封印解除まで三十秒。戦闘する皆さんは上空に。学園長は生徒への説明お願いします」


「頼んだぞ」


全員がその言葉に頷き、空へと飛ぶ。学園長も学園の闘技場に向かっていく。


「封印解除まで残り十秒!」


「神域結界・絶、展開!」


イリス達作の結界を王都中に展開。結界に仕組まれた投影魔術が再び私たちを映し出す。正確にはその空域を。


「五、四、三、二、一、封印解除!」


校庭に光が満ちる。その光が天まで伸びる。そして黒く染まっていく。光が収まり、上空には


「久々の外の空気だ!やはり人間の住み世界の空気は別格だな」


形の定まっていない黒い靄のようなものが。


「さて、我等の前に立ちはだかる人間よ。貴様らはなぜそこにいる。以前の人間のように我を封印するか?」


黒い靄が形を定め、人の姿になりながら問いかける。その問いに私は


「封印、そうですね。そうしたいですが、そうすると未来の子供たちに迷惑がかかりそうなので、ここで討ち取らせていただきます」


「ハハハハハ!以前の小娘か。なかなか面白いことを言う。たったの六人で何ができる。戯言も大概にせよ。我等は神ぞ」


笑う神に一瞬で肉薄


「奇遇ですね。私も神なんですよ。現人神ですが」


そう答え、抜刀


「屍嵐式」


二刀による回転連撃


「なに!」


驚愕する神を斬り裂く。距離を取り


「反応速度が若干遅いかな」


「抜かせ!小娘!」


思ったことをつぶやけばそれに反応。反撃のため突っ込んでくる。

戦闘開始だ。


「エレノアさん!レオニカさん!オーデン先輩!行きますよ!」


前衛四人が神に突っ込む。


「紫電雷光!」


相手との距離を詰める突進技。


「プロクス!リヴィア!自由に動け。エレク、トゥルム、疾風迅雷!」


「神槍展開!副武装聖鎧!」


「ニディア!属性開放、模倣!疾風迅雷」


三人も身体強化を施し攻撃に加わる。

紫電雷光によって足を止められた神が悪態をつく。


「小賢しいぞ人間!」


神の両手に靄が集まり剣となる。

その剣を以て、レオニカさんとオーデン先輩を迎撃


「黒雲!」


省略詠唱で生み出した雷でエレノアさんと私を迎え撃つ。

しかし


「天咲流剣術轟雷!」


「エレク!吸収しろ!」


雷を断つ一刀と指令に吸い尽くされる。その間も絶え間なくオーデン先輩が連続攻撃を繰り出し、背後からレオニカさんが重い一撃を叩き込む。


「人間が!!」


神が力を開放。私たちは距離を取らざるを得なくなった。


「貴様らに神の魔術を見せて」


言葉は続かない。何故ならこちらは攻撃をやめていない。


「装填。圧し潰せ。グラブディザイア」


「装填。歪み潰せ。スプレス・ディザスター」


ティアさんとマリア様の重力魔術が神に襲い掛かる。


「ぬぅああああああああ!貴様ら!神の力を!」


「貴方に勝つため当然のことですわ!」


「舐めるな人間!禍刻!」


空間に歪みが生じる。その歪みの効果か、二人の重力魔術が打ち消される。

重力から解放された神が、後衛の二人を睨む。


「」


何かをつぶやくと神の姿が消えた。


「ッ!後ろ!」


警告されすぐさま防壁を後ろに展開


「雲海!」


「雷雲!」


先の黒雲を装填していたバレットを開放。防壁となす。


「無駄だ!震天!」


マリア様とティアさんが大きく弾かれる。


「空間転移魔術に空間振動魔術!」


相手の魔術を分析しながら二人は態勢を整える。


「神の力を受けし者どもよ。貴様らに力を貸すのは何処のどいつだ。闘神か?東神か?

そこの小僧は戦神だろう」


オーデン先輩の纏う鎧と気配からその元を察知。以前に戦神との面識があるのだろう。


「奇妙だな貴様ら。よく見れば神の力を受けているのは二人。二人は神の魔術が使えるだけ。

一人は薄っすらと神の気配がする。最後の一人は神の気配すらないではないか」


感覚が鋭い。反応速度はたいして早くないが、それを補うように五感や状況対応能力が高い。長引けば不利になりかねない。


「そこの現人神、答えよ。貴様に力を貸す神は誰だ」


時間稼ぎか知らないが


「答えは戦いのうちにわかりますよ!」


そう答え、納刀。刀本来の力を解き放つ。


「抜刀、解魂」


「ハハハ!この気配懐かしいな!この領域に辿り着くものが、今の世界にも存在するか!」


「精霊刀楓、鬼呪・ナズチ、舞ノ型鬼神ノ舞壱、炎舞・朱雀」


炎を纏った高速斬撃。致命傷を避けながら神が笑う


「鬼神に東神か!」


東神、または四神。朱雀たちは今、ナズチの部下として活動しているため、舞ノ型として力を使える。


「鬼神ノ舞弐、瑞舞・青龍!」


朱雀は縦回転を軸とした連撃。青龍は横回転を軸とした連撃。


「空間再生魔術起動!輪天!」


空間に刻まれた朱雀の斬撃が蘇り、青龍と共に神に襲い掛かる。


「ぬぅぅ!」


合わせても効かないのか。


「面白いな。そろそろ本気で行こう。他の五人はこいつらの相手でもしているがいい」


神の体がぶれ五つに分かれる。


「アザトース、お前はあの神の気配が薄い女を。クトゥグアはあっちの小さな魔術師。ショゴス、神の気配がない男を。ティンダロス、戦神を。ハスター、もう一人の魔術師を」


全員の前に神が一柱ずつ。


「私の名はヨグソトース。外なる神を束ねるものだ。といっても主神とかそういうのはなく、この世界を攻めるための部隊長みたいなものだ」


やばい。これはやばい。知りうる限り最悪の名前だ。私は何とかなるかもしれないが他の皆が


「他人の心配をしている場合か?」


意識が他を向いた一瞬の隙を突かれ接近される。


「しまっ」


「グラヴィス」


その攻撃を受け、私は吹き飛ぶ。直撃の瞬間、一瞬だけ前後から重力で押しつぶされたためダメージが大きい。しかもかなりの距離飛ばされている。


「重すぎる!」



「術式複数展開!バレット装填!龍術展開!バレット装填!穿ち貫け!ドラゴディザスター・烈!」


先手必勝!その意気の下ティアさんが放つ。

しかし、クトゥグアが腕を薙げば炎の壁が出現。ディザスタ―を簡単に打ち消す。


「嘘っ」


動揺の隙をついて肉薄。炎の拳で殴りつける。

殴り飛ばされた先には結界。結界に倒れ伏すティア。クトゥグアの炎には滅びの力が内包されていて、それによりティアは気を失った。


「ティアさん!!」


「女、余所見は良くない」


落ちたティアに声をかけたマリアにハスターが強襲。

マリアは焦りながらも防壁を展開する。


「複数展開、神格付与!神域結界!」


マリア様のオリジナル、神格付与。イリスの指導の下編み出した神でなくとも神の力を振るうための物。

劣化しているとはいえ流石の神域結界。ハスターの一撃を防ぐ。


「へぇ~。神の気配はないのに神の力を振るえるんだ」


面白そうに告げるハスター。

これなら防御できると思った次の瞬間には、マリアもティア同様結界の上に倒れ伏していた。


「僕にも滅びの力は宿ってるんだよ?結界内の風を使って内で暴れさせれば簡単に壊せる」




「主はなぜ、神の力もなしにこの戦いに挑む」


ショゴスの問いにレオニカは答えられない。すでに体のあちこちにできた傷口からの出血で、意識がもうろうとしているからだ。


「力のないものがこの場に来る出ないわ」


ショゴスの周りに無数の剣が生成され、レオニカ向けて撃ち出される。

避けることができず直撃。レオニカもまた倒れ伏す。

だが、ただで終わることはなかった。


「ムッ!」


ショゴスの直上から隕石が落下してきた。小型ではあるものの、破壊力は抜群だろう。

しかし、


「滅びの力は儂ら全員が持っている。この程度意味はないわ」


生成された剣により隕石が両断、消滅した。



「神槍展開!副武装聖剣!エクスカリバー!」


聖剣の一撃。ティンダロスはそれを空間を跳ぶことで回避する。


「それ 戦神の力 違う けど 危険」


「空間跳躍ですか。厄介ですね」


本当にどうしましょうか。このままだとどうにもなりません。


「神槍開放。神槍抜槍!我が敵を穿て!グングニル!」


「戦神 脅威 でも 弱い」


ティンダロスにあたる瞬間、槍が消えた。次の瞬間


「ゴフッ」


オーデンの口から血があふれる。


「何故」


「空間跳躍 自分以外 可能」


つまり、槍を跳躍させオーデンの背後、自分の射線に重なるよう調整し、オーデンにあたるように仕組んだ。


「失敗、しましたね」


槍が消え、オーデンも落ちていく。



「いくら神の力があろうと、抗えはしない」


アザトースの前には苦痛にゆがんだ顔のエレノアがいた。

アザトースを前にして彼女の体が悲鳴を上げていた。力量差もそうだが、アレが内包する力に体が恐怖し崩壊しようとしている。


「だ、まれ!わた、し、は、負けは…しない!」


気合で立ち上がり開放する。


「神名開放!すべてを滅ぼせ!カタストロフ・ノヴァレンゼ!」


「無駄なこと」


エレノアの一撃はいとも容易く飲み込まれる。アザトースの世界に。


「落ちろ小娘」


炎塊がエレノアに降り注ぎ結界に叩きつける。


「これで邪魔者はあと一人。その前に確実にこいつらを殺す」


倒れる五人に向けてアザトースが止めを振りかざす。直前


「それはダメだよ。酒池!乱舞炎天!」


何者かがアザトースを強襲。一撃を食らわせ攻撃を中止させた。

強襲した襲撃者は倒れる五人を守るように佇む。襲撃者の正体は


「鬼神ナズチ。懐かしいな、我らの宿敵よ」


「そうね~。どれだけ昔の宿敵かしら」


「貴様らへの恨み、忘れてはいない」


「今日ここで貴様も殺してやろう」


外なる神々がその手に滅びの力を収束。それを一斉にナズチめがけて解き放つ。


「楓抜刀一ノ型魔断一閃」


声が響き、鍔鳴り音が続く。そうして起きる現象は力の消滅。

ナズチが笑いながら告げる


「あんた達、私を殺せると思はない方がいいよ。その前にあんたたちが死ぬからね」


それの言葉に神は反応する


「あの小娘一人に何ができる」


「我等六人に一人で敵う道理もない」


「滅びの力を消せたとしても、我らを殺すのは不可能」


「無駄 な 足掻き」


「力があっても数にはかなわん」


「待っていろナズチ。貴様を必ず殺す」


そう残し神々は楓と対峙する。


「はいはい。できるならやってみなさいよ。今のあの子、神域の神が全員で勝負しても勝てない程に強いよ」


ナズチのつぶやきが聞こえたのは近くにいたエレノア達のみ。ナズチのおかげで回復した者が問う。


「どういうことですか?」


「今の楓は、幽世の門から本来の力を引き出している途中なの。あの門の中にはいろんな力が収められている。楓の力も半分以上あそこにある」


「いつからそこに封印を?」


「う~ん、確か成長し始めて天咲家に行った頃かな。力の調整のために封印させてもらってた」


「それを今回開放してるのは、確実に勝つためだ」


ナズチの続きを別の誰かが変った。


「バハムートにイリスも来たんだ?」


「弟子達がケガしてたので、その治療に」


「まぁ後は見ておけ。あれが神の中で最強の力だ」



「外なる神々よ、覚悟しろ」


「小娘が生意気な」


外なる神々が滅びの力を全身に纏う。


「覚悟するのは貴様だ。楽に死ねると思うなよ」


動こうとする神に対し楓は


「動くな」


そう命じた。その瞬間、わずかながら神の動きが止まった。


「な、に!?」


驚きを隠せない神々。それはこの戦闘を見ている全ての者がそうだ。エレノア達もイリスやバハムート、神域にいる神々、ナズチに王都の国民。全ての者が衝撃で言葉も発せなくなった。


「幽世の門よ、私の力を返せ」


楓の後ろに門が出現、中から何かが現れ、その何かが楓の体に吸い込まれていく。


「すべてを見通せラプラス。力を廻せマクスウェル」


楓の持つ力のうち二つが解き放たれた。


「まず一人」


楓が目を閉じ、次に開いた瞬間にはショゴスの体は消滅。楓の手にある宝石に吸い込まれていった。


「馬鹿な!」


「あり得ない!」


「速すぎる上に一撃!?」


「力が まだ 上がっている」


「何だこの小娘は!?」


狼狽する神。一人の質問に対し楓は答える


「私は貴方達外なる神を討つ者。現人神天藤楓」


刀を抜き、構え


「押して参る!」


神殺しを成すべく、斬り込む。




おまけ


・楓が空中で突進技を繰り出せたのは、重力魔術で足元に重力場を形成、それを使い踏み込むことで可能としています。初手で一瞬で肉薄した時は、この技術+重力魔術を用いた引力斥力の応用、空間切断魔術で距離を少しだけ切断し距離を縮める、などといった方法を用いています。


・楓以外のメンバーが宙に浮いているのはお察しの通り飛行魔術です。会得させました。イリスが。


・滅びの力は誰でも取得することが可能です。可能ですが、強い復讐心や破壊衝動がないと取得できません。


・ショゴスですが死んでいません。宝石に封印されています。その宝石の正体や使い道はこの章内で判明します。


なんか長くなりました。これが普通とか言われたら頭おかしくなりそうです。えー次回で決着かどうかはわかりません。

多分決着させる。それか半分にして二回に分ける。

まぁそういうことでまた次回!

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