第7話 最終調整・弐
最終調整が始まって数日。みんなの動きもさらに良くなってきた。
ナズチ、フェンリル、イリスではエレノアさん達五人が束になったら単独での撃破が困難になるほどの成長ぶり。バハムートならギリギリ勝てるといったところ。だから、今の修行は私との模擬戦。一対五ではあるけど、今のところ負けなし。舞ノ型使って負けたんじゃ神の名が廃るからね。ナズチとフェンリル?あれは知らないよ。
「精霊刀楓、血呪・眷刀、舞ノ型、始祖ノ舞、参ノ始祖エルジェーペド」
エルジェーペド、エンプサが男性特攻ならこちらは女性特攻。
「血呪・眷刀、本当に鬼畜!」
「まったくですわ!」
「どうやって防げばいいのかわからないな!」
ティアさん、マリア様、エレノアさんが膝をつきながらも戦意を失わず声を出す。
「いや~三人とも強くなりましたね。最近までこの一撃で終わりだったのに」
最終調整を始めて五日ほどは始まってすぐに終了。復活を待って再開を繰り返していた。
因みに、最終調整が始まってからここにいる全員は、学園の授業に参加していない。あとで怒られるのは覚悟しておかないと。
「楓さん!私たちを忘れないでいただきたい!」
「ニディア!ブレイク!」
「神槍展開副武装聖剣!」
「忘れてませんよ!」
背後からシルヴェルト先輩、レオニカさんが飛び掛かる
「舞ノ型、鬼神ノ舞参、玄舞黒甲!」
存在する舞ノ型の中で唯一の防御系。攻撃を流すことも、跳ね返すこともせず完全に受けきる。黒甲で防ぎ隙ができたところを
「舞ノ型、鬼神ノ舞肆、演舞白虎!」
鬼神ノ舞肆で打ち払う。
「楓さんの型は全部が鬼畜ですよ!」
「オーデンの言う通りだな!」
「そのようですわね!」
「訂正する!」
「つまり楓はドS」
「失礼な!」
何て失礼な人たちなんだ。別にいいけど。
「余裕があるみたいなんで!ギア上げますね」
「「「「「鬼畜だ!」」」」」
何を言っても意味がなさそうだし、反論するのも面倒だから
「舞ノ型、龍王ノ舞、陸ノ龍天帝」
「ちょ!楓さん!?」
「ほんとに加減無し!?」
「これ防げるの?」
「今までのが茶番のようですわ」
「神ですら恐れる鬼畜ここに極まれり」
「レオニカさん後で追加メニューです」
「口は災いの元」
「ティアさん?」
「私じゃない。マリア」
「ティアさんそれはあんまりですわ!?」
舞ノ型が発動したにもかかわらず、呑気に会話していられる理由それは、天帝は攻撃の型でなく、強化系の型だから。
陸ノ龍天帝、全身に薄い鱗のようなものを纏い、羽や尻尾も生えてくる。両手に持った刀は、三本の爪のように伸び、手と一体化、龍人へと至る。司る属性はなく、得意属性もない。しかし、この状態なら龍王ノ舞を重ねて発動することが可能になる。一度に重ねられる属性は二つ。
「今日のメニュー最後の一撃いきますよ!」
一日の締めに、龍王ノ舞最強の技を繰り出しましょう!
「砕け龍爪!斬れ龍翼!薙げ龍尾!喰え龍顎!堕とせ龍圧!」
「我ここに龍王の威厳を示さん。龍王顕現・神王の神威!」
爪からの斬撃、翼からの鎌鼬、尻尾による広範囲の薙ぎ払い、龍王の威圧、そして最後に龍族といえばブレス攻撃。今回は属性無しの威力四割減。これなら死なない程度の威力となる。
「バレット装填!抗え!ドラゴディザスター!」
周囲に溢れる龍の力を装填、普段のドラゴディザスターとは別物の威力となり解き放つ。
「レオニカ!合わせるぞ!」
「おう!」
エレノアさんの呼びかけに素早く応じ、合わせる
「「属性開放!グレン・ゼ・カタストロフ!」」
「マリア!」
そして、その終焉のエネルギーを装填解き放つ!
「バレット装填!滅せよ!ディザスター・カタストロフ!」
「神槍展開!副武装聖鎧、聖剣、聖槍展開!護れ聖鎧!斬り裂け聖剣!貫け聖槍!神槍展開!穿ち貫け!グングニル!」
神槍の副武装、その中で最も防御と攻撃に優れているものを選び、最大展開。最大出力で解き放つ。更に神槍自身も最大展開。
龍王とエレノアさん達五人の最大火力がぶつかる。
その衝撃で神域が再び揺れ、他の神のもとにその衝撃と振動は伝わり、神殿を崩壊させかけた。
お互いの技が消滅したそこには、全力を出し切り、倒れる五人と満足そうな笑みを浮かべた楓。
「四割減とはいえ、天帝を対消滅させますか!いい成長ですね!」
「鬼教官が何か言ってますわ」
「マリア、喋らない方がいい」
「そうだぞ。地雷を踏んで追加メニューになる」
「俺は追加確定しているから、何を言ってもいいよな?」
「レオニカさん、それは更に追加されるやつですよ」
「ん?全員余裕あるんですか?それならもう一戦やりますか?」
倒れながら、会話する五人に楓が満面の笑みで、鬼の提案をする。
「「「「「すいません!休ませてください!」」」」」
綺麗に揃う五人。
「はい。わかりました。レオニカさんも追加メニュー無しでいいですよ」
今日はまぁ、あれだけやれたからいいしよう。
こうして一日のメニューを消化し、イリスの神殿に戻る。これが最近の日常。しかし今日は、
「皆さん!」
「あれ、イリスどうしたの?」
神殿の方からイリスが駆けてきた。
「どうしたじゃありません!やりすぎです!」
「「「「「やりすぎ?」」」」」
「あ」
「楓?」
「何かわかったんですの?」
「楓、もしかして」
「ティアさんの考えてることは正解だと思うよ」
レオニカさんとシルヴェルト先輩も何のことかわかったようだ。
「エレノアさん、マリア様、ついさっき私たちの技が衝突したじゃないですか」
「それがどうした?」
「今までにも衝突することはありましたわ」
二人の言葉を聞いて、続きを
「今回のは規格外」
「神域に及んだ余波は過去最大」
「建物にも影響が出ている」
ティアさん、レオニカさん、シルヴェルト先輩が繋ぐ。
「「あ」」
「理解したようで何より。これから修繕作業に入ります。手伝ってくれますね?」
「「「「「「はい」」」」」」
拒否権のない問いかけに、力なくうなずくしかない六人。
三十分ほどで作業を終わらせた六人とイリス達四人(バハムート達は巻き添え)
作業終了後はイリスの手料理と風呂で体力を回復し、睡眠をとり明日のメニューに備えた。