第七話 決着と三姉妹
いやほんとすいません
「装填!メテオバレット!撃て!ドラゴディザスター!」
莫大な魔力が巨大な隕石となり、楓に向けて落ちてくる。
「学園長これ観客大丈夫ですか!?」
「学園の生徒たちに障壁を展開させるのじゃ!急げ!」
「学園長!自分も万が一に備えます」
「頼む!客席の魔術師にも協力を要請するのじゃ!」
「ちょっと!?ティアさん観客のこと考えてます!?これ直撃したらここ一帯更地ですよ!」
「こうでもしないとあなたには勝てない。それと、こっちにばかり集中していいの?」
「私を忘れてもらっては困るな!エレク、リヴィア、プロクス、トゥルム神名開放!
タラニス!リヴァイアサン!プロメテウス!シュトゥルム!合技グレン・ゼ・カタストロフ!」
その技は楓を囲うように広がり、ドーム状の結界となった。
グレン・ゼ・カタストロフ、エレノアの武器に宿る精霊それぞれが司る属性に伴う天災を内包したもの。
国を滅ぼしかねない二つの力が楓に直撃する。
「私の全力をぶつけないと負けちゃうなこれは。客席は先輩たちが何とかしてくれるみたいだし。だったら、抜くしかないよね」
「7本目を抜くおつもりで?」
「7本目と楓、あなたで決める。いくよ」
「分かりました。姉様の望みとあらば」
「ふぅー。おいで魔剣アニマ」
魔剣アニマ、私の所持する刀6本を抜いた後にのみ効果を発揮する魔剣。攻城兵器として打たれた刀。その効果は単純にして強力。指定した概念を断ち切る、ただそれだけ。
今回断ち切るのは、どちらの魔術にも共通する災害という概念。それが消滅すればただの魔術。そうなれば負けはしない!
「概念指定完了。魔剣抜刀。断ち切れ!アニマ!」
魔剣一閃。魔剣という名の大太刀が閃く。その太刀の効果により魔術が崩壊、それによりドラゴディザスターは魔力の塊に、グレン・ゼ・カタストロフは四属性魔術と化す。
「精霊刀楓抜刀一ノ型魔断一閃!」
「嘘…魔術が消えた」
「精霊の力すらも消せるのか!?」
「魔術だろうが精霊だろうが、精霊刀楓に斬れないものはありません。これで終わりです。
精霊刀楓抜刀零ノ型二番終わりの太刀・崩魂弱!」
精霊刀楓、本来ただの刀でしかないそれは、楓が宿ることで一つの能力を手にした。
「精霊刀楓は、実体のないものを断ち斬ることができます。例えば、魔力だったり精霊だったり。その力は魂さえも断ち斬ります。今回は殺し御法度ですから、意識を斬る程度にしましたので心配なく。今日はありがとうございました。そして、おやすみなさい」
そう言って、納刀する楓の姿を最後に二人は意識を失った。
「いろいろ露見しちゃったな~」
「ほとんど姉様のせいですね」
「そういわないでよ。別に後悔はしてないから」
「は!あまりにも試合展開が早く、実況が追い付いていませんでしたが、勝負あり!優勝は天藤楓選手!」
思い出したように告げた実況の声で観客も我を取り戻す。
「楓ちゃーん!最高―!」「楓お姉様ー!」「優勝おめでとうー!」「状況についてけないがおめでとう!」戸惑いながらも声を上げる観客たち。
「エレノア選手とティア選手の意識の回復を待ってから、表彰式に移りたいと思います。それまで観客の皆様、帰らずお待ちください」
数分後
「エレノア選手とティア選手の意識が回復し、問題なしと報告がありましたので、これより表彰式と閉会式に移りたいと思います!本戦出場者が入場しますので大きな拍手でお迎えください」
パチパチパチパチ。司会の声に続き大きな拍手が響き、選手がそれに迎えられる。
「今回の決勝は異例の結果となった。
エレノア=ヴァン=ルーフェルト、ティア、前に」
「「はい」」
「見事な試合だった。即席とは思えぬ連携、卓越した技術、素晴らしいものだ。来年の活躍を期待している。二人には、二位の勲章を」
差し出された勲章と賞状を受け取り礼と共に下がる二人。
「そして一位じゃな。天藤楓、前に」
「はい」
「見事な剣術だった。洗練された太刀筋は力強く、美しかった。君には驚かされてばかりだったが、来年も楽しみにしている。では、一位の勲章を」
先の二人に倣い、勲章と賞状を受け取り礼と共に下がる。
「表彰式はこれにて終了。このまま閉会式に入ります。学園長」
「うむ。今年の武闘祭は例年より盛り上がったこと嬉しく思う。その要因に、多くの予想外が起きたことがあるだろう。編入したばかりの者が、序列上位の者を悉く打ち倒したり、いきなり頭角を現したものもいる。勘違いしないでほしいのは、その者たちも最初からその力があったわけではなく、鍛錬を怠らず努力し続けた結果だということだ。今回の武闘祭で学んだことをしっかり活かし、来年の武闘祭に向け努力してくれることを願う。そして来年は今年以上の盛り上がりを見せてくれ。期待している」
「以上で閉会式を終了します。観客の皆様本日は当学園にお越し下さり、ありがとうございました」
アナウンスと共に選手は退場。それを拍手と歓声で観客が見送り、姿が見えなくなってから帰路についた。
闘技場選手控室
「エレノアさん、ティアさん、改めて今日はありがとうございました。とても楽しい試合でした」
「負けたのは悔しいが、私も楽しかった。だが来年は負けないからな」
「ん。エレノアの言う通り。私も負けない」
「はい。来年も楽しみにしていますね」
「三人で盛り上がってるとこ悪いが、俺たちも忘れるなよ?」
「そうだぞ。来年こそはリベンジしてやる!」「私も来年は勝ってみせます!」「俺も負けないからな!」「楓お姉様に勝つなんて恐れ多いけど、私も負けません!」「楓ちゃん!俺とつきあごふっ!」
なんか最後変なのが混じったような?いい感じの腹パンが決まったみたいで崩れ落ちてるよ。大丈夫あれ?
「あ、そうだ。楓~学園長のとこ行って来てくれる?大事な話があるからって」
「分かりました。では、今から行ってきます」
「ありがと~」
「大事な話?気になるな」
「気になる」
「う~ん。二人になら話してもいいかな?でもな~」
「無理に教えてほしいとは思わないが、教えてくれるなら他言しないと誓おう。この剣に免じて」
「私も誓う」
「…わかりました。あとで私の部屋に来てきてください」
「「わかった」」
「姉様、学園長も後で窺うとのことでした」
「それなら、二人ともこのまま来ます?」
「いいのか?」
「私は問題ないですよ」
「私も問題ない」
「では、行きましょう」
「楓ちゃんが、エレノアさんとティアちゃんを部屋に!?」
「しかも大事な話がどうとか言ってなかった!?」
「まさか…告白!?」
「そんな!?」「いやでも、あり得るな。エレノアさんが長女、楓ちゃんが次女、ティアちゃんが三女の姉妹の契りか!」「なに!?そうだったら最高だな!」
そんな馬鹿な会話が控室で巻き起こっていた。その会話はしっかり三人の耳にも届いていた。
「楓」「楓さん」
「「そうなの?」」
「いや!違うから!信じないでよ!?」
確認不足でした!本当に申し訳ございません。