謎の忠告とフワフワ
「おはようございます。たけしさん。」
朝目覚めると、今日もかおるちゃんがニッコリ笑っていた。
「おはようございます。かおるさん。」
僕は寝ぼけた声で答えたが、かおるちゃんの顔を見ると、すぐに目が覚めた。だって可愛すぎるんだもん。
毎日、目覚めと同時に現れる可愛いかおるちゃん。
僕が寝ている間は、一体どこにいるのだろうか?
朝は、お化粧とかしているのかな?
あれ?お風呂は?いつ入ってるのかな?ん?着替えは?どこでしているのかな?
かおるちゃんが現れてから数日がたった今、数々の疑問が浮かび上がった…。が、たけしは、朝の頭の回転があまりよくない。とにかく眠かったので、後でゆっくり考えるか…と首を横にブンブンと振ってから体を起こした。
いつものように顔を洗って、リビングへ行った。
お母さんがニッコリと笑って、「お母さん、今日は急いでるから、先に家を出るわね。」と言って、朝ごはんのおにぎりを出してくれた。そして、パタパタと走って洗面所の方へ行ってしまった。
僕がおにぎりを食べようとすると、パジャマのポケットから、静かにひょこっと可愛いかおるちゃんが顔を出した。
かおるちゃんにおにぎりを少しずつ奪われながらも、僕はむしゃむしゃと食べ始めた。
それにしても、ほっぺたに米粒を付けているかおるちゃんも可愛いなぁ。僕はすっかりかおるちゃんに見惚れていた。
すると、かおるちゃんが突然僕の顔をジロッと睨みつけてきた。
「な、なんですか?」
僕は、突然睨まれたので、即座に眉毛がハの字になってしまった。
「たけしさん。さっき、お母さんの顔、ちゃんと見ましたか?」
かおるちゃんは少し怒っているようにも感じた。
「えっ、ちゃんと見たよ。笑ってたよね。」と、僕は戸惑いながら答えた。
「じゃぁ、質問です。お母さんのご機嫌はどうでしたか?」
鼻息をフンフンさせて、かおるちゃんは問いかけてきた。
「え…。えっと。笑ってたし、ご機嫌?かな?まぁ、機嫌は良かったんじゃない?」
僕は、おどおどとしていると、
「ぶー!」と、言って、
かおるちゃんが大きくバツマークを手で作った。
「たけしさん!」
「はい…。」
「まだまだ修行が足りません!」
「はい…。」
「毎日、たけしさんのお母さんは、朝早く起きて、たけしさんのために朝ごはんを作ってくれているのですよ。」と、強く拳を握り、どこかの政治家のように力説をする可愛いかおるちゃん。
「はい…。」
僕は肩を落とし、さらに、首がカクッとしてしまった。
かおるちゃんの力説は続いた。
「お母さんの表情や顔色、声のトーン、もっと、よ〜く見てください。」
「はい…。」
僕は、かおるちゃんの迫力に圧倒され、返事をすることしかできなかった。
が、真剣に話しかけてくるかおるちゃんの顔が近くなるたびに、髪の毛とスカートがフワフワと僕の体に当たりそうになるので、気が散って仕方がなかった。フワフワするたびにドキドキしてしまった。
「とにかく、明日からはちゃんとして下さいね。それと、いつも通り、ノートにもちゃんと書いておいて下さいね。」
かおるちゃんは腕を組んで、プンッとした顔をしてパジャマのポケットの中に消えていった。
「わかったよ…。」
僕は、かおるちゃんの謎の忠告を受けつつも、怒ったかおるちゃんの顔が可愛くて仕方がなかった。どうして怒られていたのかはわからないが、もう少し怒られても良かったかな?なんて思ってしまった。僕は、一応しっかりと反省の顔をしながら学校へ行く準備をした。