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いつかの君を、救いたい――  作者: 三日月 和樹
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 夏休みは終わった。

 ボクは再び安心安全、そして気楽を望み高校生活を再開する。

 もちろん、部活勢は部活動がある。教師たちは、夏休みにも学校には来るらしい。

 とはいっても、ボクにとってはすごく久しぶりな高校生活であり、それを邪魔するものは、できるだけ許したくはない。

 だが、ボクにはどうしてもやらなければいけないことがあった。それは、学校には来ているはずの、加納さんの『捜索』と『呼び出し』だ。

 数日前、ボクは加納さん不在の加納宅に、中野さんと二人でお邪魔した。それに合わせて帰ってきてくれた加納さんのお姉さんである夢さんに聞いた話。あの話をより理解するために、ボクはあの話の要の人物である加納さんに会いたかった。

 今は、四時限目の終わり。昼食の途中。

 ボクは早めに昼食を済ませ、一緒に食べていた俊夫にトイレと言って、教室を出た。

 この学校は、それほどクラスの番号が離れてなければ、同じ学年は別の階にはならない。

 ボクの三組と、加納さんの五組は数字が近いので、同じ階にある。……はずだ。

 というのも、ボクに友達が少ないこと。どこにどのクラスがあるのか、正直どうでもいいと思っているので場所を把握していないというのが問題だったが、そんなことは些細なこととしよう。

 ボクは五組の扉をノックしようとして、辞めた。ただ単純に目立ちたくなかったからだ。気弱な部分があると、前々から思ってはいたが、やはり人間の本性と言うかなんというか、どうしようもないものなんだなと思う。

 扉の外から教室内を見るが、加納さんの姿は無かった。

 このとき、ボクは彼女が学校に来ていない可能性も考えていた。だから、今日がダメだったら明日。明日がダメだったら明後日と、長期戦を予定していた。

 だが、

「才川くん?」

 振り向くと、ハンカチを持った加納さんが廊下に立っていた。どうやら、教室にいなかった理由は、別にあったらしい。

「才川君のクラスは五組じゃないでしょ?夏休み明けで忘れちゃったの……ってそんなわけないか」

 やはり、彼女の印象は出会ってすぐと比べて、だいぶ柔らかくなっていた。

「あ、ああ。自分のクラスぐらいは覚えてるよ」

「なら、良かった」

「……加納さん。君に、聞きたいことがある」

 彼女は、首を傾げる。

「何?文化祭の出しものだったら、五組はお化け屋敷をやるつもりだけど?あっ、これって言っちゃダメなんだっけ?」

「いや、そっちじゃなくて……とにかく、今日の放課後って空いてる?」

 顎に手を当て、彼女は考える仕草をした。

「ええ、今日の放課後ね。文化祭の準備も大体片付いたし、才川くんはそっち、大丈夫なの?」

 そっちとは、ボクのクラスの出し物の事だろうか。あまり言いたくないが、それに関してはボクはクラスの人たちから何も任されてはいない。もはや、クラスの出し物も何をやるのか分からない最悪な状態なのだ。

「ま、まあ。ボクの方も大丈夫。それじゃあ、今日の放課後、図書室で」

「図書室?」

「うん」

 あそこは文化祭で使う予定はないはずだし、いつも通り使えるはずだ。いや、むしろみんなが文化祭の準備に勤しんでいるからこそ誰も来ないだろう図書館は絶好の場所だ。

「わかった。それじゃあまたね才川くん」

 手を振って、彼女は教室に入っていく。

「……ありがとう」

 これで、ついに……。

 今までの謎が解ける。解けなくても、彼女に聞くだけで一歩も二歩も進みだせる気がしていた。そう、ボクは思った。


 ――だから、このときのボクはとても喜んでいたのだ。

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