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いつかの君を、救いたい――  作者: 三日月 和樹
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 私には、嘘がある。

 というかもう、この体自体少々どころではないほどの嘘で出来ている。

 失った身体、奪われた未来、掴むことのできなくなった夢。

「なんで、私なんだろう……」

 あの時、私の生は終了した。

 そして、再起した。

 ロボットではない。心はあるし、誰かの命令を受けているわけでもない。

 幽霊でもない。皆には私が見えているし、話したりも問題なくできている。

 これは、奇跡だ。

 神様、いや、あれはどちらかと言えば天使か。

 微笑む天使。その身体には、穢れなど一切ないのだと思う。

 既に生命の危機であった私の目が勝手にアレをそう判断したのか、それともアレは本物だったのか。

 その正体が分かったのは、私の生の終了から二日後の事だった。

 学校からの帰り道、子供の頃に遊んだ公園のベンチに、彼女はいた。

 それは紛れもない少女で確かに可愛いが、一般的な少女であった。

「迷ってる。うん、あなたはそういう人だもん」

「あなた、あの時の……」

「あの時あなたが天使って言っていた、ただの女の子だよ。ただの無力な、ね」

 無力?とんでもない。あんなもの、世界を二、三度ひっくり返してしまうものであるはず。

 それを持っているこの娘が、無力なはずがなかった。

「あなたは、一体何者なの?」

「何者?ううん、何者でもないよ?あっ、もしも名前を付けたいのなら、それこそ天使ならうれしいかな」

「本当はこんなことを言うのはおかしいけど、あなた今からうちに来てくれない?聞きたいことが山ほどあって――」

 少女の顔には、笑みが浮かべられていた。それは、子供本来の無邪気な笑顔ではなく、邪悪な嘲笑に似ている。

「それはこっちのセリフだよ。うん、今から話そう。だけど、話は別の場所でね?」

 街頭の光の届かない公園内。

 少女は、常闇の中に消えていく。

「ま、待って!」

 私は、その後を追うように闇の中へと走り、潜る。

 外を歩いていたわけだから、目が暗闇に慣れていたとは言え、この暗さは尋常じゃなかった。光という概念はなく、ただただ暗闇が広がっていた。

 その時、少女の小さな手が私の手を握った。

「大丈夫大丈夫、怖がらないで。……だけど――」


「――だけど、覚悟はしておいてね」


 そう、彼女は言った。

「うん」

「分かっているとは思うけど、あなたが今生きていることは自然じゃない。ただの奇跡なの」

 それは、自分でもわかっているつもりであったが、やはり、人から言われると、またそれはそれで思い知らされたようで悲しい気持ちになる。

「でも、私はあなたの味方だから……うん。信用して」

『行くな』という心と、『行かないと』と急かす答え。

 私の現状を知るには、この娘に付いて行くことは必須だ。むしろ、義務でさえある。

 だが、このまま簡単に付いて行ってしまって良いのだろうか?

「さあ、ついてきて?」

 もう完全に目が暗闇に慣れた頃、ついに少女の顔が見えた。

 少女の顔は、少し悲しそうで、寂しそうで……なんだか、昔、お姉ちゃんと遊べない時の私を見ているようで……。

「うん、分かった」

 そこで私は”真実”を知った。

 …………

 今思えば、あの顔は罪悪感によってできる表情だったのだろう。

 あそこで私が断れば、あの娘はどんな顔をしたのだろう。

 気にはなったが、今となっては後の祭りだ。

 だから、私は何も考えずに過ごせていればよかったのだろう。……本当に?

 心の内から、声が聞こえる。

 全く、これだから人間というのは……。

 ため息をつき、私は、彼との待ち合わせ場所に行く。

 断ち切らねばならない。幸い、彼はきっと、その信念から、黙っていてはくれるだろう。

 ならば、彼にだけは伝えてもいいと、そう思った。

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