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……つ、つながった!!
あまりの驚きにスピーカーのモードにすればよかったものを、ボクと中野さんはスマートフォンにかじりつくように迫る。
『何よ、二人して幽霊が出たみたいに。ていうか、二人が一緒にいるなんて、あなたたちそんなに仲良くなってたの?』
断じて違う。というか、そもそもこんなことになっているのは加納さん、君のせいだ。と、少しボクは思ってしまった。
気が付けば、中野さんは眼に涙を浮かべていた。
「千穂……今まで、一体どこにいたのよ」
中野さんが力の抜けたように言うと、電話越しに「えっ」と聞こえた。
『え~と、なんで一美が泣いているの?もしかして、才川くんに何かされたの』
「――あなたよ、千穂!あなたに、心配させられたんだから……」
『……ごめんね、でもなんでそんなに慌てているの?』
「そんなの決まってるでしょ!!自殺しちゃったかと思ったら、勝手に生き返ってるし……。それとも、あれは私の妄想なの!?いったい、どうなってるのよ……」
『ッッッ!? うそ、なんでそれを一美が知ってるのよ!!」
?
明らかに彼女が慌てだした。
『なんで、なんでよ。知らないはずよ、だって、そういう契約……』
契約?
一体、彼女は何を言って……。
『ごめん一美。一美に知られちゃった以上、私はそこにはいられない。もしかして、才川くんも知ってるの?そこにいるってことは、そういうことなんでしょ。もう、才川くんも聞いちゃってるんでしょ』
そう言われて、ボクもただ黙り込んでいるだけじゃいけないと思った。
「……ごめん、加納さん。知っているんじゃなくて、ボクも、君に薬を飲ませたんだ」
……カチャ。
返答は返ってこなかった。電話が切れたことにより、もう彼女とは連絡が取れないことを察した。
あの電話の後、加納さんとは連絡が取れず、彼女は学校にも来なくなった。
違う高校である中野さんとは一週間に一回くらいは電話をするものの、その内容は何の音沙汰もあるはずのない加納さんの居場所の話だった。だが、
『千穂とはね、小学生の時に会ったんだ。幼稚園も同じだったらしいんだけど、そのころはお互いを知らなくってね』
一週間に一度の電話は、加納さんと中野さんの出会いについて聞かされる電話でもあった。
『みんなから愛されている千穂とは違って、私はいつもクラスの端っこだった。友達もほとんどいなくて、でも、その友達の中で一番光っていたのが、千穂だった。……昔の千穂は本当に、いわゆるオーラを纏っている人だった』
そんな話を聞かされる。
今の、少し不愛想な加納さんとは全然違った。
『あっ、そう言えば来週。千穂のお姉さんに会うのよ。良かったら、一緒に来ない?』
「それって、ボクも行っていいやつなのか?女性同士の方が……」
『いつも私たちが出歩いている田舎じゃなくて、都会に行くのよ。だから、もしもの時の為ってことで、男のあなたを連れて行くのもいいのかなって……そういう、口実。才川君も、実際気になるでしょ』
気になる。とは、たぶん加納さんのことだろう。
正直、驚いた。ボクが思っていたことを中野さんが分かっていたというのは、全く予想していなかった。
だが、これは絶好の機会なのかもしれない。
加納さんとは仲が良かったように見えた長谷川先生も彼女の居場所は分かってはいなかった。
ここで加納さんの家族と会えるのは、好都合だ。
「じゃあ、ボクも連れて行ってくれないかな?」
『うん、おっけー。時間と場所はあとで連絡するよ。それじゃあ』
「うん、それじゃあ」
ボクは、加納さんのお姉さんに会うことにした。




